映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 

 TODAY'S
 
第九十九回『映画製作を止めるな!“ カメラを止めるな! ”』





 タグ:ゾンビ アクション コメディ 映画製作 自主映画 役者 演技 カメラマン 生放送 ワンカット 親子 カメラマン 廃屋 監督 

 

『カメラを止めるな!』

2017年公開

監督:上田慎一郎

脚本:上田慎一郎

編集:上田慎一郎

出演:濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ 秋山ゆずき 長屋和彰 細井学 市原洋 山﨑俊太郎 大沢真一郎 竹原芳子(どんぐり) 吉田美紀 合田純奈 浅森咲希奈 他

 

 

 

 

 

あらすじ(前半)

 とある廃屋にて、あるゾンビ映画の撮影が佳境を迎えていた。

 が、監督(演:濱津隆之)の主演女優(演:秋山ゆずき)に対する常軌を逸したダメ出しが続き、撮影は一時中断、休憩となった。

 主演男優(演:長屋和彰)と、主演女優はメイク係(演:しゅまはるみ)と共に監督についてグチるなか、このロケ地となった廃屋が、旧日本軍の実験施設であり、実際に死者を蘇らせる研究が行われていたという噂話を聞く。

 その直後、外に出ていたはずの撮影スタッフの一人が、なんとホンモノのゾンビとなって三人に襲い掛かってくる。

 大パニックとなる主演の男女とメイク係、そこへ狂気にとり憑かれた監督が現れ、この映画をリアルにする為に、ゾンビを蘇らせる為の禁忌のサインを描いたことを吐露し、撮影の続行を宣言する。

 

 はたして、ゾンビ映画の出演者のはずが、ホンモノのゾンビに襲われることなってしまった俳優達の運命やいかに!!?

 

 

 

(※ここから先の文章には、本作の根幹にかかわる内容がふくまれております)

 

 

 

あらすじ(後半)

 その一カ月前、主にバラエティ番組などの再現ドラマの監督を務めている“監督”の元に、ある仕事が舞い込んでくる。

 一か月後にはじまるゾンビ専門チャンネルで生放送される、全編ワンカットのゾンビ映画『ONE CUT OF THE DEAD』の監督をしないか? というものであった。

 最初は『ンな無茶な……』と難色を示す監督であったが、自分と同じ映像監督の道を志している娘の麻央(演:真魚)が、そのゾンビ映画で主演予定の男優の大ファンであったことから、娘に良い所を見せるために監督を引き受ける。

 

 かくして監督の元に集結する、すぐ楽したがる主演女優に、我の強い主演男優、アル中のカメラマン役に、お腹の弱い録音マン役、腰痛持ちのカメラマンなどなど、一癖も二癖もあるスタッフキャスト達。

 しかし、娘に良い所を見せる為に奮闘する監督。

 だが、迎えた放送当日‥‥‥なんと監督役とメイク係役の俳優が揃って交通事故に遭遇し、放送時間までにロケ地に来ることが不可能となってしまう。

 絶対絶命の状況となる中、放送を決行させる方法は一つしかなかった。

 監督役を“監督”自身が演じ、メイク係役には、たまたま娘の真央と共にロケ地に見学に来ていた、元女優の監督の妻に演じてもらうのだ。

 

 

 はたして、前代未聞の生放送全編ワンカットで送るこのゾンビ映画『ONE CUT OF THE DEAD』は、無事放送を終えることができるのか!!??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて今回は、傑作ゾンビアクションコメディ映画制作映画について語りたいと思います!

 監督・脚本・編集は上田慎一郎というお人。

 恥かしながら本作を見るまで存じ上げないお方です。

 また主演の濱津隆之をはじめとした出演者の方々も、本作を見るまではまったく見覚えのない方々‥‥‥‥‥‥。

 

 つまり本作は、スタッフキャストに関して言えばネームバリューというものがほぼほぼ皆無な作品ということになります。

 にも関わらず、本作は限定公開でヒットし評価され、全国公開となり、そしてさらにヒットしたわけです。

 出演者の方々も、今や映画ドラマに引っ張りだこになっている人が少なからずおります。

 それは何故でしょうか?

 そりゃネームバリューの無さを帳消しにして、余りある程に文句なく面白かったからでしょう!

 

 

 その謎の答えの一つは、あらすじでも書いたように、本作が低予算映画にありがちなゾンビモノであると同時に、映画制作映画なところにあると思います。

 

 

 

 

 ‥‥‥にしても、以前ここで語った『VERSUS』等がそうであるように、低予算映画は何故にゾンビモノを撮りたがるのでしょう?

 それはみんなゾンビが大好きだから! 大切なことはみんなゾンビが教えてくれた! ‥‥‥とかいう理由もあるでしょうが、割とお手軽に非日常を演出できるからという理由もあるのではないでしょうか?

 SFにしろホラーにしろファンタジーにしろアクションにしろ、非日常を描いた映像作品を作ろうと思った場合、モンスターだのロボだの銃撃戦だのVFXだのを使って描こうと思って、少ない予算枠で用意するの大変です!

 しかし、凝りだしたら無制限に凝ることはできるけれど、最低限顔色悪いメイクさえ施せば、あとは演者の演技次第で成立するゾンビという存在は、予算と戦わねばならない低予算映画にはもってこいの題材と言えるでしょう。

 

 世に多くの低予算ゾンビ映画が生まれるのは、自然なことと言えるかもしれません。

 

 しかしながら、それは同時に租税乱造が可能ということでもあり、世に知られていない駄作ゾンビ映画も多々生みだされているということかもしれません。

 

 

 筆者が思うに、本作前半を構成する『ONE CUT OF THE DEAD』は、そんな世の低予算ゾンビ映画を意図的に再現した作品なのかも‥‥‥などと思ったりもします。

 本作の大きなの魅力の一つは、この前半の『ONE CUT OF THE DEAD』の面白く無さ‥‥‥いえ拙さ‥‥‥にあると思うのです。

 

 

 

 

 正直なところ、もしも本作前半の『ONE CUT OF THE DEAD』だけがそのまま公開されたとしたならば、どのくらい評価されるでしょうか?

 『ONE CUT OF THE DEAD』は、短編ゾンビ映画約30分をワンカットで撮るという、実に面倒なことに挑戦しております。

 普通の映像作品であれば、短いカットを繋げて一本の作品を作るので、1カットの撮影に失敗しても、割とすぐ再撮影できますが、『ONE CUT OF THE DEAD』は全編がまるっと一塊のカットな上に生放送という作中設定ですので、スタッフキャストの撮影にかかわる全員が、30分間休みなく、しかも失敗の許されない撮影に挑まねばなりません。

 それはまるで一本の舞台演劇の公演のようと言えるかもしれません。

 が、それは筆者の私見ですが、おそろしく大変な割に、観客への面白さの提供にあまり繋がらない手法な気がします。

 全編ワンカット手持ちカメラの映像に、酔ってしまう場合も散見されますしね。

 そして案の定、本作作中での『ONE CUT OF THE DEAD』は、変な間、アドリブなんだかよくわからないセリフと芝居、ご都合なストーリー、などなど……本来であれば、よろしくない部分が多々ある作品となります。

 

(※ちなみに筆者が一番好きなシーンは、画面についた血のりがキュッキュと極めてテンポよく拭われるところ)

 

 そりゃ低予算映画にしてはお金と手間暇かかった映画とは思うでしょうが、『ONE CUT OF THE DEAD』は人気俳優も出ておりませんし、話もよく分からんとしか思わないかもしれません。

 しかしながら、本作を観賞済みの方はご存知でしょうが、本作は『ONE CUT OF THE DEAD』の後にはじまる後編を見ることで、それまでの本作の印象がガラリと変わるのです。

 高く飛びたくばまずしゃがめ! というわけではありませんが、その評価の大転換こそが本作の醍醐味なのです。

 

 悪い印象だったキャラに愛着が湧き、推していたキャラに幻滅し、

前半の『ONE CUT OF THE DEAD』内で起きたさまざまな出来事に、裏の事情と真相があったことに驚愕し、そして感動するのです。

 その伏線回収の見事さは三谷幸喜脚本のよう……。

 

 本作は劇中作『ONE CUT OF THE DEAD』それ自体をまるっと伏線にし、残る後半のメイキングドラマパートで一気に回収するというと~っても大胆な物語構成となっており、それが面白さとヒットの秘密なのだと思われます!

 

 

 ここから先は筆者の完全なる憶測なのですが、本作の送り手の人達は、これまで様々な低予算映画を作る中で、ふと思ったのではないでしょうか?

 

『アレ…………俺達が映画作ってる裏側って、出来た映画よりもうけるんじゃね?』

 

 ……と。

 筆者は一応対外的には舞台俳優ということになっており、出演すると同時に、裏方としても数々の舞台に関わってきたことがあります。

 その経験を踏まえた上で、本作後半で描かれている生放送中のトラブルの数々を見ると、映像と演劇の違いはあれど、あるある~と言いたくなるイベントばかりで、冷や汗をかいた思い出が蘇ります。

 そうした数々のトラブルを、キャストスタッフ陣が一丸となって、勇気と機転と結束力でカバーしいった経験は、確かに本編と同等のカタルシスがあったと言えるかもしれません(ま、現実は全てのトラブルが解決できるわけじゃありませんが……)。

 

 本作は大胆にも、その下手すると本編よりもカタルシスがあるかもしれない本編撮影中の裏側のてんやわんやを、メインの見どころにしてしまった映画なのです。

 その中で描かれる、普段はフォーカスされない裏方スタッフの活躍もまた、筆者のお気に入りポイントです。

(ちなみに筆者の一番の推しは、ホースを巧みに操って血しぶきをキャストにぶっかける女性血しぶき職人さん)

 本作は、そういった専門職の人々の群像劇要素もあり、本作を始める段階では、確かゾンビ映画を見ようと思っていたはずなのに、いつの間にか多人数スポ根群像劇映画見たかのような感動を味わっているのです。

 

 確かに本作は公開当時でネームバリューのあるスタッフキャストはほぼいませんが、この大胆な二部構成と、それによって詰め込まれた伏線回収の数々、価値観や印象の大転換、そしてスタッフキャストが一丸となっ撮影成功を目指すいわば人情話にしたところが、本作のヒットの要因だったのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 ここでいつものトリビア。

 ほぼ存じ上げないキャストの皆さんですが、元女優という設定の監督の奥さん役のしゅはまはるみ氏だけは、見覚えがある人も多いかもしれません。

 といっても1997年ごろに『ナオミよ』のセリフで一時話題になった、エステティックTBCのCMで、そのエステに行った結果、スーパーモデルのナオミ・キャンベルになってしまう娘約で出ていたお方だったのです。

 う~ん……これが伝わるということは! 世代がバレますな!

 

 

 

 

 ……ってなわけで『カメラを止めるな!』もし未見でしたら(散々ネタバレ書きましたが……)オススメですぜ!!