映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 TODAY'S
 
第九十六回『甦れ警察官! 街を守り正義を執行せよ! もしくは1ドルで楽しむべ!“ロボコップ”』



 タグ:SF 近未来 バイオレンス 銃撃戦 ポール・バーホーベン アクション グロ 警察 刑事 犯罪 大企業 復讐 スプラッター デトロイト ヒーロー 風刺 ブラックユーモア

 




『ロボコップ』

1988年公開

監督:ポール・バーホーベン

脚本:エドワード・ニューマイヤー他

特殊効果:フィルティペット

音楽:バジル・ポールドリス

出演:ピーター・ウェラー ナンシー・アレン ロニー・コックス カートウッド・スミス ミゲル・フェラー

 

 

 

 

 

あらすじ

 警察までもが巨大企業オムニ社によって民営化された近未来のデトロイト‥‥‥。

 

 オムニ社では、デトロイトの再開発計画であるデルタシティ計画着工の為、まず蔓延する街の凶悪犯罪を撲滅すべく、副社長のジョーンズ(演:ロニー・コックス)の主導で開発された全自動治安維持ロボ〈ED209〉の投入計画のプレゼンが行われた。

 しかし、社長以下の幹部社員が集った席でのED209の試運転は大失敗に終わり、新たな犯罪撲滅策が急ぎ必要となる。

 そこに名乗りをあげたのは、幹部社員であるモートン(演:ミゲル・フェラー)が進めていたロボコップ計画であった。

 

 さっそく完全自動のロボではなく、優秀な警官を〈材料〉にして、人間の判断力を有した最強のロボの警察官を生み出そうというその計画の為に、デトロイトの重犯罪多発地域の警察署に、優秀な警官が移動されることとなり、アレックス・マーフィー巡査(演:ピーター・ウェラー)もまたその一人として転属となる。

 しかし転属初日、ベテラン婦警のルイス(演:ナンシー・アレン)とバディを組まされたマーフィーは、警官殺しで悪名高いクラレンス・ボデイッガー(演:カートウッド・スミス)率いる一味の追跡の任につくが、彼らのアジトを発見・潜入したところを、クラレンス一味に発見され射殺されてしまう

 

 

 しかしてそれは、モートンが進めているロボコップ計画が待ち望んでいたことであった。

 さっそくマーフィーの肉体は〈材料〉として使われ、オムニ社で鋼鉄のボディを持ったロボコップとして生まれ変わり、犯罪撲滅の為デトロイトの街へと派遣される。

 

 

 機械のボディによる強靭さ、パワー、正確無比な射撃能力によって、たちまち目覚ましい活躍で次々と犯罪者を取り締まるロボコップ。

 だが、偶然クラレンス一味の一人と出会ったことから、ロボコップの中のマーフィの記憶が目覚め始める。

 

 その一方、ロボコップ計画の成功を良く思わない者がいた。

 ロボコップ計画によってED209計画を完全に潰されたジョーンズ副社長である。

 彼は密かにロボコップ計画を潰す為に行動を開始するのであった。

 

 

 はたしてロボコップとデトロイトの運命やいかに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて今回は血しぶきと肉片が無残に飛び散るバイオレンススプラッタSF警察アクション映画の傑作について語りたいと思います!

 というわけで本作は、以前ここで語った『プレデター』や『マリグナント』をはるかに超えるバイオレンスでスプラッタな描写が多々あります。

 『北斗の拳』の主題歌をそのまま実写化しかのような無残さです!

 そういう描写が苦手な方は、今回は飛ばして次回の本コーナーをお待ち下さい!

 筆者は幼い頃に、わ~! ギャバンみたいなヤツのアメリカ映画版だぁ~! と無邪気に見たがって、うっかり友達の親がレンタルしてたのを友人宅で見てしまい、ガッツリとトラウマになったほどです‥‥‥。

 でも、今の眼で見るとめっちゃ面白い名作なんですけどね!

 

 

 

 監督はオランダが生んだ鬼才ポール・バーホーベン!」

 シュワちゃん火星で大暴れな『トータル・リコール』や、シャロン・ストーンが脚を組みかえる『氷の微笑』や、人類軍VS宇宙の虫の大群『スターシップトゥルーパーズ』を世に送り出した人です。

 これらのどれかを一本でも見た方は、いかにこの監督がヤバい監督かがお分かりいただけるでしょう。

 グロもバイオレンスもやり過ぎるとブラックユーモアになるのかもしれない‥‥‥ということ教えてくれます。

 撮影時の逸話に事欠かない、この滅茶苦茶やりおる監督自身を撮影した方が面白いんじゃないか? と筆者は時々思わなくもありません。

 このオランダからやってきた怪人物が、当時のアメリカ社会の現実と闇を映画の中に描き切って大ヒットさせたのは、皮肉というかかんというか‥‥……




 

 ロボコップと戦うED209などのメカ映像の特撮を担当したのは、パペットアニメーション映像の大家フィル・ティペット率いるティペット・スタジオ。

 パペットアニメーションとは、本コーナーで言えば『ひつじのショーン』や『ロボ・ジョックス』で使われた技術で、自在に稼動する人形をちょっとずつ動かしながら一コマ一コマ撮影し、あらゆるクリーチャーやメカが動く映像する技術のことで、CG技術が花開くまでは、この技術によって多くの名作が生まれたものです。

 フィル・ティペットは『スターウォーズ:新たなる希望』の時代からこのパペットアニメーションでクリーチャーやらロボを動かし続けてきたお方であり、その映像が本作の見どころの一つであります。

 

 

 

 音楽は(故)バジル・ポールドリス。

 本作以外では本コーナーでも紹介した『レッドオクトーバーを追え!』や、ポール・バーホーベン監督作『スターシップトゥルーパーズ』等で、インパクトある恐ろしく叙情的な劇半を奏でてきたお方です。

 本作を見た方は、しばし街中をただ歩いてるだけで本作のメインテーマが流れまくることでしょう。

 

 

 

 

 主演はピーター・ウェラー。

 本作以前では『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』等で主演していた長身細身の俳優さんなのですが、その体系故にロボコップ役に抜擢されることとなり、えらい苦労を強いられることとなるのです。

 

 

 

 その他、マーフィーを殺し、ロボコップ誕生の切っ掛けをつく凶悪犯クラレンスにカートウッド・スミス。

 海外ドラマでよく見かけるお人で、90年代のドラマ版『スタートレック』シリーズのゲスト宇宙人や『24』などなどでちょいちょ見かけたりもします。

 生身の人間でありながらロボコップとタメをはる凶悪極まりない役を見事に演じております。

(※この方はマイケル・アイアンサイドではありません)

 

 

 

 ロボコップ計画を主導する、野心家のオムニ社幹部社員のモートンに(故)ミゲル・フェラー。

 様々な映画やドラマで名脇役として活躍していた俳優であり、本コーナーで紹介した『スタートレックⅢ:ミスター・スポックを探せ!』で、宇宙船エクセルシオの操舵士として映画デビューして以降、『ザ・デプス』や『アイアンマン3』、ドラマ『ツインピークス』等でその姿を見ることができます。

 本作では神経質さと野心をみなぎらせた企業戦士っぷりで強い印象を残します。

 

 

 

 

 

 その他、スティーブン・スピルバーグ監督作『1941』でヒロインを演じたナンシー・アレンが、マーフィの相棒アン・ルイスを演じております。

 さらに、映画史上屈指のグロ死をするクラレンス一味が一人のエミール役に、後に海外ドラマ『ER:緊急救命室』での人気キャラ、ドクター・ロマノを演じるポール・マクレーンなどなど、実に癖のあるキャストが集められております。

 

 

 

 

 

 

 そんなスタッフキャストで生み出された本作は、1988年の映画業界にかなりの衝撃を与えることとなります。

 『ロボコップ』という題名とその題材自体は、第一印象で子供向け番組か? と疑われても仕方がなく、筆者もその犠牲者の一人だったわけですが‥‥‥実際に完成し公開された本作は、その印象を覆し、観客と映画業界人の脳に鈍器で殴ったかのようなインパクトを与え、本作はただ大ヒットしただけでなく、三作目までの続編とTVドラマシリーズ、TVアニメシリーズと一本のリメイク映画が製作されるに至るのです。

 

 

 

 何故にそこまで本作はウケたのでしょうか?

 それは一見子供番組のようなアイディアを、大人の鑑賞に耐えうるレベルで本気になって作ったから‥‥‥というのがまずあるでしょう。

 本作のロボコップは、いわば仮面ライダーやサイボーグ009の改造人間というかサイボーグに近い存在の、近未来警察版なわけですが、それまでマンガやアニメや特撮ヒーローでしか使われなかったそのアイディアは、実は普通に映画化してもおもしろいことを、世間は『ロボコップ』で初めて知ったのかもしれません。

 そして、そのアイディアはリアルにシミュレートしてみると、かなりグロいこともまた分かってしまったのです。

 改造でもサイボーグでも、肉体の大部分を何かに置き換えることには変わりなく、それは健康な肉体を失うことでもあるわけですからね‥‥‥。

 筆者は今でも本作序盤のマーフィーの殉職シーンは直視できません。

 

 

 ちなみに本作の脚本は、そのタイトルとあらすじから、やはり幼稚と見なされアメリカ国内の監督からは軒並み断られ、ダメ元でオランダ人監督のポール・バーホーベンに送ってみたところ、やはり彼もタイトルだけ見て放り出したそうですが、何故か彼の奥さんが興味を持って本作の脚本を読み、同監督に撮ってみなさいよと勧め、本作は無事誕生と相成ったそうです。

 

 

 

 そして監督することになったポール・バーホーベンをはじめとする送り手達のセンスが、本作を無二の作品へと昇華したと言えるでしょう。

 本作はいわゆる近未来SF映画の側面もある作品であり、『アイロボット』や『ブレードランナー』のような警察モノでもあるのですが、本作は似たジャンルの映画とは一線を画す秀逸な未来描写がまず素荒らしいのです。

 いったいどんな未来を描いたのか? と言えば、それはロボテクノロジーが発達している以外は、公開当時の1980年代末からせいぜい10年程度の未来にしか見えない、当時と刺して変わらないように見える未来社会です。

 実在するビルの上に超高層ビルの画を合成したりして、よく見かけるSF的未来感が演出されたりもしている一方、同時に打ち捨てられた巨大工場も存在し、巨大企業が警察を民営化し、凶悪犯罪は深刻化し、環境破壊や麻薬問題が深刻化していることや、その社会の科学技術の浸透度や流行が、作中で時折はさまれる『ヤマハのスポーツ心臓』『家庭用核戦争ゲーム』『レーザー砲搭載人工衛星が誤射』『1ドルで楽しむべ』といった文字化しても『ふぁ???』となるCMやニュース番組映像によって、実に巧みに描写されてるのです。

 そこが本作の評価されたポイントの一つでしょう

 

 

 またロボコップと犯罪者達の戦いが、実在する銃火器によって行われてるところも、本作は同ジャンルのSF映画の中でも先駆けとなった作品の一つと思います。

 そりゃ未来SFだからって光線銃で撃ち合いせねばならない理由はなく、人が携帯するようなサイズの光線銃の実現性を考えれば、今となってはむしろスタンダードなの設定なのですが、当時初めて本作を干渉した筆者は、その部分にえらく感心した覚えがあります。

 そして本作では、そういった今と変わらぬ銃火器で戦うことで、弾着による破壊と痛々しさがより克明に描かれているのです。

 

 

 

 

 そしてなんとっても本作の魅力は、送り手たちが総力を結集して映像化したロボコップという存在のキャラ造形と、彼のドラマでしょう。

 

 それはまず一目でカッチョエエェェ! と男子心をくすぐるロボコップのデザインであり、彼の操る巨大ピストルオート9であり、太ももの装甲が展開することで現れるホルスターのギミックであり、拳の先端から飛び出る鋭いPC端子であったり、彼が動く度に聞こえるドチュ…ドチュ‥‥‥(ガシャンガシャンではない)という足音であり、演じるピーター・ウェラーが半年間パントマイムを特訓することで成し得た特徴的かつ説得力のあるロボのモーションでもあります。

 

 

 また本作序盤で殉職したマーフィが、今わの際に見た家族との思い出の走馬灯から、シームレスに開発・改造されロボコップとなってゆく彼から見た視点となる(その間、まだロボコップのビジュアルはまだ見せない)映像と脚本と演出のセンスでもあり‥‥‥。

 警察署デビューしたロボコップが、射撃テスト中にある癖を見せたことから、元相棒のルイスに、ロボコップの正体を感づかれる脚本や‥‥‥

 

 その後、実任務デビューしたロボコップが、次から次へと起きる犯罪を取り締まる活躍シーンや(どんだけ治安悪いんだ)‥‥‥。

 

 徐々にマーフィとしての記憶を取り戻す過程や‥‥‥そこから次々と明らかになら巨大な陰謀と、それに翻弄される大企業の“商品”としてのロボコップの悲哀と、それでもなお悪に立ち向かわんとするマーフィの警察官魂の気高さだったりするわけです。

 

 ここで本作の設定で秀逸なのは、ロボコップが警察ロボであるだけではなく、大企業オムニ社の所有物である点です。

 その事実が彼に悲劇をもたらすわけですが、同時に最後の最後に意外な結果を生むところが、本作の名作たる理由の一つであり、実に粋で美しいオチを本作はむかえるのです。

 

 ま、それまでに下手なホラー映画が裸足で逃げだすレベルの血の惨劇が繰り広げられるんですけどね!!!

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここでいつものトリビア。

 バーホーベン監督は、死から復活するマーフィーを現代のキリストに見立てて描いたそうで、それが証拠にロボコップは銃を撃つ時のシルエットが十字架っぽくなっていて、クライマックスでは水の上を歩いたりもしてます。


 

 ロボコップと戦うED209などのメカ映像の特撮を担当したのは、パペットアニメーション映像の大家フィル・ティペット率いるティペット・スタジオ。

 パペットアニメーションとは、本コーナーで言えば『ひつじのショーン』や『ロボ・ジョックス』で使われた技術で、自在に稼動する人形をちょっとずつ動かしながら一コマ一コマ撮影し、あらゆるクリーチャーやメカが動く映像する技術のことで、CG技術が花開くまでは、この技術によって多くの名作が生まれたものです。

 フィル・ティペットは『スターウォーズ:新たなる希望』の時代からこのパペットアニメーションでクリーチャーやらロボを動かし続けてきたお方であり、その映像が本作の見どころの一つであります。

 

 

 

 音楽は(故)バジル・ポールドリス。

 本作以外では本コーナーでも紹介した『レッドオクトーバーを追え!』や、ポール・バーホーベン監督作『スターシップトゥルーパーズ』等で、インパクトある恐ろしく叙情的な劇半を奏でてきたお方です。

 本作を見た方は、しばし街中をただ歩いてるだけで本作のメインテーマが流れまくることでしょう。

 

 

 

 

 主演はピーター・ウェラー。

 本作以前では『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』等で主演していた長身細身の俳優さんなのですが、その体系故にロボコップ役に抜擢されることとなり、えらい苦労を強いられることとなるのです。

 

 

 

 その他、マーフィーを殺し、ロボコップ誕生の切っ掛けをつく凶悪犯クラレンスにカートウッド・スミス。

 海外ドラマでよく見かけるお人で、90年代のドラマ版『スタートレック』シリーズのゲスト宇宙人や『24』などなどでちょいちょ見かけたりもします。

 生身の人間でありながらロボコップとタメをはる凶悪極まりない役を見事に演じております。

(※この方はマイケル・アイアンサイドではありません)

 

 

 

 ロボコップ計画を主導する、野心家のオムニ社幹部社員のモートンに(故)ミゲル・フェラー。

 様々な映画やドラマで名脇役として活躍していた俳優であり、本コーナーで紹介した『スタートレックⅢ:ミスター・スポックを探せ!』で、宇宙船エクセルシオの操舵士として映画デビューして以降、『ザ・デプス』や『アイアンマン3』、ドラマ『ツインピークス』等でその姿を見ることができます。

 本作では神経質さと野心をみなぎらせた企業戦士っぷりで強い印象を残します。

 

 

 

 

 

 その他、スティーブン・スピルバーグ監督作『1941』でヒロインを演じたナンシー・アレンが、マーフィの相棒アン・ルイスを演じております。

 さらに、映画史上屈指のグロ死をするクラレンス一味が一人のエミール役に、後に海外ドラマ『ER:緊急救命室』での人気キャラ、ドクター・ロマノを演じるポール・マクレーンなどなど、実に癖のあるキャストが集められております。

 

 

 

 

 

 

 そんなスタッフキャストで生み出された本作は、1988年の映画業界にかなりの衝撃を与えることとなります。

 『ロボコップ』という題名とその題材自体は、第一印象で子供向け番組か? と疑われても仕方がなく、筆者もその犠牲者の一人だったわけですが‥‥‥実際に完成し公開された本作は、その印象を覆し、観客と映画業界人の脳に鈍器で殴ったかのようなインパクトを与え、本作はただ大ヒットしただけでなく、三作目までの続編とTVドラマシリーズ、TVアニメシリーズと一本のリメイク映画が製作されるに至るのです。

 

 

 

 何故にそこまで本作はウケたのでしょうか?

 それは一見子供番組のようなアイディアを、大人の鑑賞に耐えうるレベルで本気になって作ったから‥‥‥というのがまずあるでしょう。

 本作のロボコップは、いわば仮面ライダーやサイボーグ009の改造人間というかサイボーグに近い存在の、近未来警察版なわけですが、それまでマンガやアニメや特撮ヒーローでしか使われなかったそのアイディアは、実は普通に映画化してもおもしろいことを、世間は『ロボコップ』で初めて知ったのかもしれません。

 そして、そのアイディアはリアルにシミュレートしてみると、かなりグロいこともまた分かってしまったのです。

 改造でもサイボーグでも、肉体の大部分を何かに置き換えることには変わりなく、それは健康な肉体を失うことでもあるわけですからね‥‥‥。

 筆者は今でも本作序盤のマーフィーの殉職シーンは直視できません。

 

 

 ちなみに本作の脚本は、そのタイトルとあらすじから、やはり幼稚と見なされアメリカ国内の監督からは軒並み断られ、ダメ元でオランダ人監督のポール・バーホーベンに送ってみたところ、やはり彼もタイトルだけ見て放り出したそうですが、何故か彼の奥さんが興味を持って本作の脚本を読み、同監督に撮ってみなさいよと勧め、本作は無事誕生と相成ったそうです。

 

 

 

 そして監督することになったポール・バーホーベンをはじめとする送り手達のセンスが、本作を無二の作品へと昇華したと言えるでしょう。

 本作はいわゆる近未来SF映画の側面もある作品であり、『アイロボット』や『ブレードランナー』のような警察モノでもあるのですが、本作は似たジャンルの映画とは一線を画す秀逸な未来描写がまず素荒らしいのです。

 いったいどんな未来を描いたのか? と言えば、それはロボテクノロジーが発達している以外は、公開当時の1980年代末からせいぜい10年程度の未来にしか見えない、当時と刺して変わらないように見える未来社会です。

 実在するビルの上に超高層ビルの画を合成したりして、よく見かけるSF的未来感が演出されたりもしている一方、同時に打ち捨てられた巨大工場も存在し、巨大企業が警察を民営化し、凶悪犯罪は深刻化し、環境破壊や麻薬問題が深刻化していることや、その社会の科学技術の浸透度や流行が、作中で時折はさまれる『ヤマハのスポーツ心臓』『家庭用核戦争ゲーム』『レーザー砲搭載人工衛星が誤射』『1ドルで楽しむべ』といった文字化しても『ふぁ???』となるCMやニュース番組映像によって、実に巧みに描写されてるのです。

 そこが本作の評価されたポイントの一つでしょう

 

 

 またロボコップと犯罪者達の戦いが、実在する銃火器によって行われてるところも、本作は同ジャンルのSF映画の中でも先駆けとなった作品の一つと思います。

 そりゃ未来SFだからって光線銃で撃ち合いせねばならない理由はなく、人が携帯するようなサイズの光線銃の実現性を考えれば、今となってはむしろスタンダードなの設定なのですが、当時初めて本作を干渉した筆者は、その部分にえらく感心した覚えがあります。

 そして本作では、そういった今と変わらぬ銃火器で戦うことで、弾着による破壊と痛々しさがより克明に描かれているのです。

 

 

 

 

 そしてなんとっても本作の魅力は、送り手たちが総力を結集して映像化したロボコップという存在のキャラ造形と、彼のドラマでしょう。

 

 それはまず一目でカッチョエエェェ! と男子心をくすぐるロボコップのデザインであり、彼の操る巨大ピストルオート9であり、太ももの装甲が展開することで現れるホルスターのギミックであり、拳の先端から飛び出る鋭いPC端子であったり、彼が動く度に聞こえるドチュ…ドチュ‥‥‥(ガシャンガシャンではない)という足音であり、演じるピーター・ウェラーが半年間パントマイムを特訓することで成し得た特徴的かつ説得力のあるロボのモーションでもあります。

 

 

 また本作序盤で殉職したマーフィが、今わの際に見た家族との思い出の走馬灯から、シームレスに開発・改造されロボコップとなってゆく彼から見た視点となる(その間、まだロボコップのビジュアルはまだ見せない)映像と脚本と演出のセンスでもあり‥‥‥。

 警察署デビューしたロボコップが、射撃テスト中にある癖を見せたことから、元相棒のルイスに、ロボコップの正体を感づかれる脚本や‥‥‥

 

 その後、実任務デビューしたロボコップが、次から次へと起きる犯罪を取り締まる活躍シーンや(どんだけ治安悪いんだ)‥‥‥。

 

 徐々にマーフィとしての記憶を取り戻す過程や‥‥‥そこから次々と明らかになら巨大な陰謀と、それに翻弄される大企業の“商品”としてのロボコップの悲哀と、それでもなお悪に立ち向かわんとするマーフィの警察官魂の気高さだったりするわけです。

 

 ここで本作の設定で秀逸なのは、ロボコップが警察ロボであるだけではなく、大企業オムニ社の所有物である点です。

 その事実が彼に悲劇をもたらすわけですが、同時に最後の最後に意外な結果を生むところが、本作の名作たる理由の一つであり、実に粋で美しいオチを本作はむかえるのです。

 

 ま、それまでに下手なホラー映画が裸足で逃げだすレベルの血の惨劇が繰り広げられるんですけどね!!!

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここでいつものトリビア。

 バーホーベン監督は、死から復活するマーフィーを現代のキリストに見立てて描いたそうで、それが証拠にロボコップは銃を撃つ時のシルエットが十字架っぽくなっていて、クライマックスでは水の上を歩いたりもしてます。




 


 またロボコップは、ここまで書いて来た説明通りならロボではなく、マーフィーの肉体を改造したサイボーグなのでは? と思えてしまいますが、非公式な監督のコメントによれば、ロボコップはあくまでマーフィの脳の一部を部品にして作った結果、自分をマーフィと思い込んでるロボに過ぎないんですって!


 まぁ、そう言えばマーフィは頭撃たれて死んでるし‥‥‥ってか人の心とか!!!!!


 


 


 


 ‥‥‥ってなわけで『ロボコップ』もし未見でしたら、グロを覚悟の上でならオススメですぜ!