映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。
これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。
▼『映画を語れてと言われても』
第九十二回『ぼくたちが生まれてきたのは‥‥‥“超時空要塞マクロス:愛・おぼえていますか”』
タグ:宇宙 SF アニメ ロボット 宇宙戦艦 恋愛 三角関係 アイドル 歌 ドッグファイト 劇場版
『超時空要塞マクロス:愛・おぼえていますか』
1984年公開
監督:石黒昇 河森正治
脚本:富田祐弘
音楽:羽田健太郎
声の出演:長谷有洋 飯島真理 土井美加 神谷明 羽佐間道夫 小原乃梨子 速水奨 他
あらすじ
▼〈本編開始前の設定〉
時に1999年‥‥‥突如外宇宙より飛来し、太平洋の小島である南アタリア島に墜落した全長1キロを超える異星文明の巨大宇宙船は、分析の結果戦闘を目的とした戦艦であり、しかも乗っていたと思しきそのクルーは調査の結果、見た目は人間と酷似しながらも、身長10mを超える巨人であることが判明した。
その事実は、宇宙のどこかで巨人たちの異星文明が戦争を行っており、いつ何時、その戦争の渦に地球が巻き込まれる日が来ないとも限らないことを示していた‥‥‥。
人類は統合戦争と呼ばれる戦争を経て、全国家を統合政府へと統一したる後に、いつしか地球に降りかかるかもしれない宇宙の戦禍に備え、異星文明に対抗すべく墜落宇宙船のテクノロジーを解析し、宇宙と大気中の両空間で飛行可能な戦闘機から、推測された巨人と同サイズの人型ロボへと自在に変形し戦闘が可能な可変戦闘機バルキリーを開発し量産、さらに墜落した宇宙船を補修、〈マクロス〉と名付け地球防衛の為の宇宙戦闘艦として使用することを決定した。
‥‥‥そして時は経ち、2009年‥‥‥。
ようやく補修を終えたマクロスの進宙式の当日、ついに恐れていた異星文明〈ゼントラーディ〉の艦隊が地球を襲来、マクロスは敵宇宙艦隊の攻撃から逃れるべく、艦内に避難収容していた南アタリア島の市民を乗せたまま、人類初の超空間跳躍航法“フォールド”を敢行。
マクロスは辛くも敵の攻撃から逃れることはできたものの、意図せず太陽系の端に移動してしまった上に、フォールド機関が消滅し、通常航法で半年近く時間をかけながらしか地球に戻れなくなってしまう。
帰還の旅の途中も襲い来るゼントラーディの宇宙戦艦を、なんとか退けながら地球への帰還の旅を続けるマクロス。
その中で、マクロス内部に非難していた南アタリア島の数万人の市民は、広大なマクロス内部の空間を利用し、艦内に街を作り出し、日々の生活を取り戻そうとしていた。
そしてその生活の中で、一人の少女が歌姫=アイドルとしてデビューした。
▼〈本編開始後〉
帰還の途についてから五カ月が経過した頃、土星圏を通過中だったマクロスは、ゼントラーディの宇宙戦艦と数度目の交戦状態に突入、バルキリーの若きパイロット一条輝(声:長谷有洋)は、マクロス艦内の市街地に侵入した敵機を、オペレーターの上官、早見美沙中尉の静止命令を振り切って追跡し、ファーストコンサートに出演中だったところを逃げ遅れたマクロス内のトップアイドル、リン・ミンメイ(声:飯島真理)を偶然にも救出する。
その出来事が切っ掛けとなりミンメイと密かにデートする仲となる一条輝。
しかしミンメイを喜ばせたいがために、バルキリーを持ち出して土星の環のデートと洒落こんだところを、それを捕まえにきた上官のロイフォッカーや、バルキリーのオペレーターである早見美沙らと共に、そこに現れたゼントラーディの艦に捕らえられてしまう。
敵ゼントラーディ艦隊の指揮官であるブリタイらの尋問を受け、奇しくもゼントラーディとのファーストコンタクトを果たすこととなった輝たち。
ゼントラーディはすでに地球人類の言語をマスターしており、意思の疎通はできたものの、彼らには何故か男性しか存在せず、輝達は逆に『なぜお前たちは女たちと共にいるのか?』と問われ、返答に窮してしまう。
どうやらゼントラーディ達にとって、男女が共に生活し、ましてや子を産み育てるなどあり得ない禁忌なようであった。
輝たちがさらなる尋問のため、ボトルザーなるブリタイ艦隊を統べる総司令官の元へ移送されようとしたその時、突如輝たちの乗ったゼントラーディの艦を何者かが急襲。
侵入してきたゼントラーディの交戦相手が、戦闘で死亡した姿を見た輝達は、男だけのゼントラーディが戦っている相手が、女だけの巨人の軍隊であることを知る。
輝たちはこの混乱に乗じて乗ってきたバルキリーを奪い返し、脱出を図るが、フォッカーが輝を守って死亡し、逃げられたのは輝と早見美沙の乗ったバルキリーだけであった。
ミンメイを救出すべく、一旦は脱出したバルキリーで再びゼントラーディ艦に戻ろうとする輝。
しかし、そのタイミングでゼントラーディ艦が行った空間跳躍航法フォールドにバルキリーは巻き込まれ、バルキリーは無残に荒れ果てた惑星に飛ばされてしまう。
一面に広がる荒野に、見知らぬ惑星に飛ばされたと思い込む輝と美沙、しかしバルキリーのすぐそばに、地球の海を守っていたはずの空母の無残な成れの果てを発見してしまったことから、この星が地球であったと知ることになるのであった。
はたして輝たちの運命やいかに!?
マクロスは無事地球に帰還できるのか!? ゼントラーディとの戦争の行方は!!?
さて今回はアニメ映画史の中に燦然と輝く名作宇宙SFロボットアクションアイドルアニメ映画を語りたいと思います。
公開されたのは1984年。
今から約40年前‥‥‥40年前ぇぇっ!??
1974年に『宇宙戦艦ヤマト』が放送され‥‥‥1979年に『機動戦士ガンダム』が放送され……それぞれの劇場版が公開され……1982年にTVアニメシリーズ『超時空要塞マクロス』が放送された約二年後に制作された作品です。
いわば本作は今に続くアニメブーム黎明期の代表作が一つであり、始祖にあたる作品の一つなのだと思います。
筆者は若いので当然劇場で見たわけじゃなく、だいぶ後になってレンタルで初めて見たんですけどね!
とはいえ、TVシリーズの放送から本作公開時は、かなり話題になっていた気がします。
そもそものTVアニメシリーズ『超時空要塞マクロス』は、当時今では考えられなくらい頻繁に制作され続けてたTVロボットアニメの中の一作として、ガンダムの次に最も成功したロボアニメ作品と言えるかもしれません。
なにしろ2020年代の現在に至るまで、TVアニメシリーズが三本の他、劇場版やOVAが制作され続けてきている程です。
そして以前本コーナーであげた幾つかの劇場版アニメ作品のように、本作もまた、TVシリーズの好評により制作された劇場版なわけですが‥‥‥。
そこに集められたスタッフ・キャストもまた、後の日本のアニメ史に大いに影響を与えるメンツなのです。
監督をつとめたのは、『鉄腕アトム』の時代から数々のアニメを世に送り出し、後に『銀河英雄伝説』をアニメ化し世に送り出す(故)石黒昇。
そしてその共同監督として河森正治、本作でバルキリーのメカデザインを担当したお人です。
‥‥‥‥‥‥なぜメカデザインの人が監督をやっているのか?
いや監督がメカデザインもしたのか? ‥‥‥うっすいオタクの筆者にはよく分かりませんが、他にも似たような例が散見されるので、日本のアニメ業界では珍しいことでは無いのかもしれません。
ともあれ、この河森正治監督が、後のマクロスシリーズを牽引していったお方であり、その後のアニメ業界に現在に至るまで影響を与え続けているお方なのです。
その河森正治監督が本作でデザインしたバルキリーは、映画『トップガン』でおなじみの実在した戦闘機F14そっくりの見た目の戦闘機形態から、人型ロボットと、その中間形体に変形するメカです。
しかもただアニメの中で変形し、設定上変形できるということになっているだけでなく、劇中で行われる通りに三段変形が完全再現された超合金トイが当時発売されたことが大いに記憶に残っています。
つまり二次元アニメ用メカデザインでありながら、実際の立体物として破綻の無い変形メカのデザインが成されたわけです。
これは当時はもちろん、今であってもなかなか実現できない画期的な出来事だったと思います。
本作のバルキリーをはじめとしたメカ設定と描写は、ガンダムが押し上げたロボアニメのリアリティレベルを、さらに一段押し進めた作品と言えるのかもしれません。
そのバルキリーが宇宙・空中・地上を三段変形しながら縦横無尽に駆けまわるアニメを描いたスタッフに、後に生まれる数々の名作アニメで活躍するスタッフが、原画マンとして参加しています。
その作画スタッフらが、まだCGどころか家庭用PCどころか家庭用TVゲームすら無い時代に、己の手作業のみで描いたアニメーションは、現在ではオーパーツ呼ばわり去れるほどのクオリティなのです。
それは技術云々を超えて執念を感じさせるほどに、綿密な描き込みがなされたメカが、人が、動きまくるのです。
中でも〈板野サーカス〉と呼ばれる名原画マン板野一郎の描く戦闘シーンでは、噴煙の尾を引きながら目標に迫るミサイルと、それを回避するバルキリーが超絶なクオリティで描かれており、後のメカバトルアニメーションに与えた影響は図り知れません。
本作の作品としての見どころは多々ありますが、そのドッグファイトシーンが、本作を名作足らしめた三つの魅力の一ついわれています。
そしてその残る二つの魅力とは『歌』と『三角関係』と言われています。
その本作の主題歌『愛・おぼえていますか』は、今でもマクロスシリーズを代表する歌として、カバーされ続けており、本作で初めてこの歌を歌うのは飯島真理。
彼女がそのままヒロインの一人リン・ミンメイの声を当てており、本作公開当時はリン・ミンメイが実在するアイドルかのごとくファンたちが熱狂していたような覚えがありますが‥‥‥それは今日とあまり変わりない気もします‥‥‥というか、今のそういったアイドル周りの気風も本作が始祖の一つだったのだと思います。
そしてそのアイドルとそのファンのパイロットの主人公、とその上官が織り成す三角関係のドラマが視聴者に受けたのだと思います。
そのドラマを盛り上げる音楽を担当しているのは(故)羽田健太郎。
数え切れない程のアニメやドラマの劇伴を担当してきた日本を代表する作曲家の一人です。
例えば『渡る世間は鬼ばかり』『西部警察』『戦国自衛隊』『復活の日』などなど、数え上げたら切りがありません。
本作ではTVアニメシリーズに引き続き、一度聞いたらその日ずっと強制脳内再生されつづけるような、インパクトのあるメロディアスなBGMを恋愛ドラマパートやアクションパートで奏でています。
そして『ドッグファイト』と『歌』と『三角関係』が、当時のアイドルブームとの相乗効果によって、本シリーズを当時の他のロボアニメから一線を画す存在にした‥‥‥のだと思います多分!
しかしながら、筆者的に本作の魅力として忘れてはならないのは、その『SF』なところです。
『SF』なところとはなんぞや? と考え出したら例によって切りがありませんが‥‥‥。
本作の場合は、『超テクノロジーで生み出されたロ生み出され、活躍する口実』として、巨人な宇宙人の使う宇宙船が振ってきて、それに対抗すべく宇宙人の技術を解析して生み出しから‥‥‥という設定がまず秀逸です。
なにしろ巨人相手を想定してるのですから、巨大なロボが作られるのも納得です。
ですが本作の『SF』的な巧みさはそれだけではありません‥‥‥‥‥‥。
(※以下、本作のクライマックスや物語の根幹設定に関する文章があります)
ロボの登場理由と対戦相手としての巨人宇宙人を出した(と勝手に筆者がそう思っている‥‥‥)本作ですが、それだけでなく、何故地球人そっくりである巨人が宇宙で戦闘を行っているのか?もしっかり考えられ描かれています。
実は人類も巨人宇宙人ゼントラーディも、それと戦争を繰り広げている女だけの巨人宇宙人メルトランディも、すべてプロトカルチャーと呼ばれる古代宇宙文明が、遺伝子テクノロジーで生み出した存在だったのです。
‥‥‥はるか昔、宇宙に繁栄していたプロトカルチャーなる文明は、己たちの戦争の道具として、巨人のゼントラーディとメルトランディを遺伝子操作で生み出し、自分達の替わりに戦わせていたが、いつしかコントロールを離れた両軍による戦禍でプロトカルチャー文明は滅び、僅かに生き延びたプロトカルチャーが古代地球に避難し、己とそっくりな地球人を生み出すに至ったのです。
今ではあらゆるSF映画やアニメ類で珍しくないパンスペルミア仮説(地球生命の起源が地球外由来とする仮説)の一種ですが、初見時の筆者は大いに感心したものです。
そしてゼントラーディとメルトランディは、創造主の命令のままに、すでに目的を失った終わりなき戦いを続けてきた最中、自分らを生み出したプロトカルチャーとそっくりな地球人と出会いをはたすわけですが‥‥‥。
、問題は、このこじれにこじれた状況をどう解決し、物語の締めとするか? です。
人間同士の戦争でさえ、解決などロクにできやしないのに、このはるか昔から続く宇宙規模の戦争に対し、地球人類が出来ることなど無く、歴史設定だけ聞けば、この『マクロス』という作品の物語はバッドエンドまっしぐらな気がしてしまいます。
しかし、本作は実にうまいことやってのけるのです。
この事態に対し、マクロスは如何に対処し、物語がいかな結末へ向かうのか?
その答えこそ筆者が本作で最も感動した部分であり、実にSF的であると同時に、飛び切りのロマンがあるクライマックスなのだと思うのです。
それはもちろん実際の戦争ではありえないオチなのですが、SFであり、本作ならではの設定で、アニメーションである本作であるからこそ、実現できた実に素晴らしいオチなのです。
そしてその本作のクライマックスで流れる歌こそが、本作のサブタイトルにもある『愛・おぼえていますか』なのです。
この歌が流れたその時、オーパーツとでも言うべき人の手による極限に近い戦闘作画と、ドラマと、SF的なイベントが混然一体となった宇宙規模の奇跡が描かれるのです。
それは劇中での奇跡に留まらず、アニメ史に起きた一種の奇跡とも言える気がする程の、名シーン中の名シーンなのです。
もしも『史上最高の間奏シーン』なるものを選べ! と言われたならば、筆者はこの『愛・おぼえていますか』のボーカルとボーカルの間の間奏シーンを挙げます!
それがいったいどんな奇跡なのか? 本作が未見の方は、どうかその眼でご確認下さい。
ここでいつものトリビア。
本作の原画マンには、後に『エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』の監督をつとめる庵野秀明も参加しています。
本作含めたマクロスシリーズの全ての作品は、作品ごとに微妙に設定や過去の出来事が異なっているが、これは全ての作品が実際の歴史を元にしたフィクションという体裁で作られている為。
だから作品ごとに色々アレンジがされているんだそうで‥‥‥。
マクロスシリーズは、『ロボテック』というタイトルで海外でも放送され高評価を受け、例によってハリウッド実写映画化の企画も上がってるが、実現しないまま幾星霜‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥ってなわけで『超時空要塞マクロス:愛・おぼえていますか』もし未見でしたらオススメですぜ!!