映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 TODAY'S
 
第八十六回『未来都市の刑事とロボの事件帳“アイ,ロボット”』



 タグ:ロボ アンドロイド SF 未来 アクション AI ウィル・スミス CG VFX

 




『アイ,ロボット』

2004年公開

監督:アレックス・プロヤス

脚本:アキヴァ・ゴールズマン ジェフ・ヴィンタ

原作:アイザック・アシモフ

出演:ウィル・スミス ブリジット・モイナハン ブルース・グリーンウッド シャイ・マクブライド アラン・テュディック ジェームズ・クロムウェル シャイア・ラブーフ他

 

 

 

 

あらすじ

 時に西暦2035年‥‥‥。

 

第一条

 ロボットは人間を傷つけてはならない。また、人への危険を見過ごしてはならない。

第二条

 第一条に反することがない限り、ロボットは人間の命令に従わなければならない。

第三条

 ロボットは、第一条および第二条に反しないかぎり、自己の保存に務めなければならない。

 

 

 プログラムの根幹部分にこの〈ロボット三原則〉が刻まれた、家庭用人型ロボをはじめとする様々なロボが、社会のあらゆる場面に普及し、ごく当たり前の存在となった未来のアメリカ、シカゴ‥‥‥。

 

 ある事件が原因で、このご時世にロボット嫌いとなった偏屈な刑事スプーナー(演:ウィル・スミス)は、ロボット製造の最大手の巨大企業USR社の本社ビルにて、恩人でありロボット開発の第一人者のラニング博士が転落死し、その遺品の中にスプーナー宛のホログラム・メッセージがあったことから、事件現場に呼び出される。

 死亡状況から見て、先に到着した警察の初動捜査では博士の死は自殺と判断された。

 が、ただ一人ロボット嫌いのスプーナーは“正しい質問をしなければ何も答えない”という博士の残した謎のホロ・メッセージの存在から、この死がロボットによる殺人の可能性を疑いだす。

 周囲からは〈ロボット三原則〉が刻まれたロボが人に危害を加えるわけが無いと一笑に付されるものの、疑いを捨てきれないスプーナーは、ラニング博士の愛弟子でありUSR社のロボット開発者の一人であるカルヴィン博士(演:ブリジット・モイナハン)の協力の元、ラニング博士が飛び降りた場所と思しき研究室を捜索したところ、室内に隠れていた家庭用人型ロボが突然現れ逃走する。

 スプーナーはカルヴィン博士と共に、その逃走したロボを追跡し、なんとか捕縛に成功する。

 が、驚くべきことに、ラニング博士が研究室内で作ったと思しきそのロボは自らを“サニー”と名乗り、ラニング博士殺人を疑われると、まるで怒っているかのごとき感情を見せて否定するのであった。

 

 ロボット製造最大手の巨大企業USR社は、そのサニーと名乗ったロボが、USR本社内の超大型AI〈ヴィキ〉によって一括管理制御されることで、随時アップデートがされる発売を目前控えていた次世代型家庭用ロボ〈NS‐5〉と同型であったことから、サニーを即座に引き取り、事件の幕引きを図ろうとする。

 

 この状況にますます疑念を募らせたスプーナーは、個人での捜査を続行するが、彼の行く先々でロボが暴走し、スプーナーの命を狙い始めるのであった。

 

 

 はたしてスプーナーの操作の行方は!? ラニング博士は何故死亡し、なぜ博士はサニーを生み出したのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて今回はウィル・スミス映画回‥‥‥ではなかった未来都市を舞台にしたSFアクションミステリー映画の秀作回です!

 

 似たようなジャンルの映画といえば、『ブレードランナー』や『ロボコップ』『攻殻機動隊』『マイノリティ・リポート』などの名作があります。

 これらの未来の警察モノの醍醐味とは、未来の新たなテクノロジや、変化した社会によって、現実の現代社会では起き得ない事件の数々が発生し、それに対し、その時代の情勢に合わせて変容した警察組織が、知恵と勇気とオモシロSFアイテムを駆使して解決を試みるところなんじゃないかと思います。

 本作はそんな未来の警察が絡んだ映画の中でも、アンドロイドとも呼ばれたりする、人と同サイズの家庭用人型ロボットが普及した社会での、アクションとミステリーが絶妙に合わさったなかなかの名作なのでります!

 だってみんな刑事モノ大好き! 未来SF大好き! ですからね!

 

 

 

 監督をつとめたのはアレックス・プロヤスというお方。

 ブルース・リーの息子ブランドン・リーの主演作『クロウ/飛翔伝説』でブレイクし、他に『ダークシティ』『ノウィング』『キング・オブ・エジプト』等を世に送り出す監督です。

 筆者が好きな多くの監督と同じ様に、アクションパートとドラマパートの両方のクオリティが優れているだけでなく、彼の場合、ふんだんにVFXを用いた映像を交えるのが得意なところが特徴かもしれません。

 本作でもブルースクリーン撮影とCGを用いたロボットの映像がわんさかと登場します。

 それらの映像は、公開から20年近く経過した2020年代のCGに比べたら、確かに見劣りはすことは否めないかもしれませんが、その迫力は今見ても充分楽しめるものとなっていると思います。

 

 

 

 主演はご存知ウィル・スミス!

 本作ではこれぞウィル・スミスとでもいうべき、正義感とユーモアと皮肉と腕っぷしの揃った性格とノリのキャラを、安定感抜群に演じております(ちなみにソフト版の吹き替えは山寺宏一)。

 色んなジャンルで主演する彼ですが、意外とこういう『アイアムレジェンド』や『アフターアース』『インディペンデンス・デイ』といったSF映画にも出てくれるところが、彼の好きなところです。

 

 

 共演はブリジット・モイナハン。

 最近では、あのジョン・ウィックの亡くなった奥さん役で有名な女優さんです(そんなことはない?)!

 他には『世界侵略ロサンゼルス決戦』や『トータル・・フィアーズ』『ロード・オブ・ウォー』といった映画でヒロインを演じております。

 本作では堅物過ぎてウィル・スミスの皮肉やユーモアを理解できず、むしろウィル・スミスの方を狼狽えさせるトンチンカンな会話のやりとりで、本作にユーモアを与えより見やすいものとしています。

 

 

 その他、USR社の社長役に、数々の映画に登場する艦長や機長や院長や大統領などの偉い人を演じるならお任せのブルース・グリーンウッド。

 

 

 事の発端となったラニング博士役にジェームズ・クロムウェル。

『ベイブ』でブタのベイブを飼う牧場主のお爺ちゃん役で有名な他、本コーナーでも紹介した『LAコンフィデンシャル』でも超重要な役で出演しているハリウッドを代表するお爺ちゃん俳優です。

 

 

 また本作の第二の主役とでもいうべきロボットのサニー役にはアラン・テュディックという俳優さん。

 本コーナーでも紹介した『ロック・ユー』や、ホラーっぽいコメディの秀作『タッカーとデイル』に出演している他、『スターウォーズ:ローグワン』ではドロイドのK-2SOを演じたりもしている芸達者さんです。

 この場合のロボを演じている‥‥‥は、声を当てているというだけでなく、撮影現場でモーションキャプチャーのモデルとして演技しているという意味であり、まさしくサニーを演じているのは彼なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなスタッフキャストで挑んだ本作は、知っている人は誰もが知っているアイザック・アシモフ作のSF小説の名作中の名作『我はロボット』の実写映画化です。

 原作を知らずとも、アイザック・アシモフの名か〈ロボット三原則〉という言葉ならば、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?

 

 その原作小説は、ロボットが実用化された未来社会で、〈ロボット三原則〉が刻まれているはずのロボが引き起こす、様々な事件を描いた短編集です。

 筆者が原作小説を読んだのははるか昔なので記憶は曖昧なのですが‥‥‥、ともあれ本作の内容は、原作が短編集だったこともあってか、原作とは設定部分はさて置き、物語的には似ても似つかない内容となっております。

 原作はロボット嫌いの刑事が殺人事件の謎を追って、大立ち回りをする内容ではありません。

 それは二時間前後の映画にする関係上、致し方無いことだったとは思うのですが、本作はその原作とは似てないという事実により、公開時にあまり評価されなかった覚えがあります。

 

 本作の不評の原因はそれだけではありません。

 

 本作の準主役とでもいうべき、サニーのロボットとしてのデザインが、何と言いますかその~少々気持ち悪いのです。

 一般家庭用の人型ロボとしてデザインされたサイーは、他は普通のメカメカしいデザインなのですが、顔部分のみ人間の顔そっくりなパーツがついているのです。

 サニーはその顔で表情を作り、しゃべることで、一人のキャラクターとして存在感を出すわけですが、人間から顔の皮を引っ剥がしてロボの頭に被せたかのようで、まぁ結構ちょっとなんかキモいことは否めません。

 

 

 またCGを多用した映像も、少なからず本作の不評の要因となっているかもしれません。

 いわゆるCG技術の過渡期の作品であり、大したセットも無く、キャストがひたすらグリーンスクリーンの前で演技したのを撮影したと思しきカットが多々あり、それが不評の一因となったかもしれません。

 残念ながら2004年当時のCG技術の限界から、それがCGと分かる映像になってしまった感があります。

 あたしゃCG技術でなければ実現できない映像とアクションがあって好きなんですけどね!

 

 

 

 

 

 ‥‥‥等々と、少々ネガティブなことを書いてしまいましたが、それでも本作は、筆者が好きな一本であることには変わりません。

 

 その理由とは?

 まずジャンル的に筆者が好きであるから! という理由が大いにあることは否定できません。

 ウィル・スミス主演の大予算映画で、今よりも科学の進んだ未来社会のSFアクション映画が見れたのですから、それだけで大分満足です!

 世界観設定が、デストピアでもポストアポカリプでもない、あまり荒んでいない(一応は)平和な未来世界であるところも、本作を見やすくしていると思います。

 そこで描かれるロボを始めとした様々な未来ガジェットにもワクワクします。

 

 

 もちろんアクション映像も見どころの一つです。

 CGに頼り過ぎている感もありますが、逆に言えばCG技術でなければ実現不可能な未来世界での無茶なアクションを、本作では見ることができたのです。

 というか、大量生産されたまったく同じ姿のロボがわんさかと登場する本作の内容を、CG以外で実現なんてそもそもできませんからね!

 

 

 そして本作で筆者が最も気に入っているのは、その脚本です。

 

 いわば本作は、家庭用にまでロボが普及したSF未来社会を舞台にした火曜サスペンス劇場みたいなモンです。

 可能ならばシリーズ化して欲しいくらいです。

 逆に言えば、SF未来社会を除けば、日本の二時間サスペンスと変わらないはず‥‥‥とも言えるのですが、そう単純にも行きません。

 本作で起きたラニング博士の死亡事件に端を発した一連の騒動は、本作のSF未来社会であるからこそ起き得た事件だからです。

 SF設定が見事に脚本内に馴染んでいるのです。

 そして、その事件の真相と解決までのドラマ、解決方法が実に秀逸だと思うのです。

 これぞSFアクションといえる設定と物語の融合具合!

 その事件の真相は、原作小説『我はロボット』がそうであるように〈ロボット三原則〉が根幹に絡んでおり、筆者は事件の真相が明かされた時に凄く納得したものです。

 かといって、見事な推理モンというほど凝った真相でもないんですけどね! 勘の鋭い観客であれば、真相を推測することは充分に可能な範囲に思えます。

 ですがそれだけではありません。

 本作の脚本のさらに素晴らしいところは、その騒動の問題解決の為に繰り広げられる最後の大立ち回りの決着方法が、アクション映画としても物語としても、うまくまとまっているところなのです。

 同じアクションでも本作のSF的物語設定でなかれば成立しないとも言えます。

 それまでに明かされたウィル・スミス演じるスプーナーがロボット嫌いになった理由や、謎の感情を有したロボット・サニーとの関係性が、一瞬にして収束し、騒動の決着へとなだれ込むのです。

 お陰で観賞後感スッキリです。

 

 いったい事件の真相は何で、いったいどうやって問題解決に向かったのかは、未見の方はどうかその目でご確認下さい。

 

 

 

 

 

 ここでいつものトリビア。

 ウィル・スミス演じるスプーナーを慕う、チョイ役の街のお調子者の少年役に、後に実写版『トランスフォーマー』でブレイクするシャイア・ラブーフが出演しております。

 

 

 

 

 

 ‥‥‥ってなわけで『アイ,ロボット』もし未見でしたらオススメですぜ!!