映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 TODAY'S
 
 第八十三回『世紀の迷作? 珍品?? ともかく砕ける散るまで戦え!“ロボ・ジョックス”』






 タグ:SF 未来 ロボ 模型特撮 核戦争 代理戦争 対決 

 

『ロボ・ジョックス』

1990年公開

監督:スチュアート・ゴードン

脚本:ジョー・ホールドマン

音楽:フレデリック・タルゴーン

出演:ゲイリー・グレアム アン=マリー・ジョンソン

 

 

 

 

あらすじ

 破滅的核戦争から50年が経過した未来‥‥‥‥‥‥総人口の半分を失った人類は『共和国〈コモン・マーケット〉』と『連邦〈コンフェデレーション〉』の二つの国家に分かれ対立していた。

 だが再び核戦争を起こし、今度こそ人類が絶滅するような事態を回避すべく、両国は領土問題を、両国が総力を上げて建造した有人巨大ロボ同士の対決によって決定する制度〈ロボ・ジョックス〉により解決していた‥‥‥。

 

 両国に生きる市井の人々は、その対決に熱狂し、大金を賭け、自国の代表ロボとそのパイロットを英雄として称え、応援していた。

 

 幾度もの〈ロボ・ジョックス〉で勝利した共和国代表の伝説的パイロット・アキリスは、アラスカの領有権をかけた〈ロボ・ジョックス〉に、愛機マツモト14号で挑む。

 だが、『連邦』側の対戦相手アレキサンダーの駆るボバレフスキー43号に何故かマツモト14号の秘密兵器の情報が漏れていた為にアキレスは苦戦を強いられる。

 さらにボパレフスキー4号は卑怯にも〈ロボ・ジョックス〉のルールで禁止された肉弾戦限定下でのロケットパンチを使用、しかもそのパンチが観客席に命中しそうになったため、アキレスはマツモト14号で盾となるが、結果としてマツモト14号で観客席を押しつぶし、300名もの死者を出すという大惨事を引き起こしてしまう。

 

 この惨事の責任を感じたアキレスは、これを機にパイロットの引退を決心する。

 アキレスの代わりの新たなマツモト14号のパイロット候補として集められたのは、過去の優秀なパイロットの遺伝子を組み合わせ、人工的に生みだされた試験管ベビーのパイロット候補達であった。 その中の一人、優秀ではあるが自信過剰な女性パイロットのアテナにつきまとわれ、辟易しつつも惹かれるアキレス。

 

 その一方で、アラスカを賭けた先日の〈ロボ・ジョックス〉は無効試合となり、再試合が決定され、その際のマツモト14号のパイロットはアテナとなることが決定される。

 

 しかし、彼女ではボバレフスキー42号に勝てないと確信していたアキレスは引退を撤回、ボパレフスキー42号との再戦を決心するのであった。

 

 

 はたして、アキレスの再戦の行方はいかに!!??

 

 

 




 

 

 さて今回は、前回に引き続き、巨大ロボットがぶつかり合う世紀の珍品もしくは名作激レア映画『ロボ・ジョックス』を語りたいと思います。

 

 公開されたのは1990年、もちろんまだCG技術が皆無に近い時代の映画です。

 にもかかわらず、本作はいかにして巨大ロボット同士の対決などという映像を実現したのでしょうか!!?

 

 

 監督はスチュアート・ゴードンというお方。

 主にホラー映画を撮ってきた監督で、ホラーにおける特撮映像技術の経験が本作で活かされたのかもしれません。

 

 脚本はジョー・ホールドマンというSF小説家のお人。

 実は彼の書いた本作の数々の要素が、後のSF映画業界に小さくない影響を与えるのです‥‥‥。

 

 音楽はフレデリック・タルゴーン。

 TVドラマ『ヤングインディ・ジョーンズ:若き日の大冒険』の音楽等を担当したお方です。

 ぶっちゃけB級と言われても仕方がない本作を、一応鑑賞に耐えうる作品にしたてているのは、彼の奏でたやたらとノリの良い一級の劇伴によるところが大きいと思います。

 このBGMがなければ、本作の評価はどうなっていたことやら‥‥‥。

 

 

 

 主演はゲイリー・グレアム。

 TV映画版『エイリアンネイション』という作品で主演したことで有名です。

 が本作で一番有名なキャストが彼であり、それ以外の出演者の名を書いても、誰? となってしまうでしょう。

 つまり本作はそういうランクの映画ということでもあります。

 

 

 

 そう! もう薄々お気づきかと思いますが、本作は本コーナーはじまって以来最もマイナー‥‥‥といかB級な映画かもしれません。

 だって監督をはじめ、有名とはいえないスタッフキャストで撮られた作品なのですから‥‥‥。

 しかしながら筆者の好きな一本であり、一部の映画ファンにとっては映画史に残る偉大な作品だと思うのです(多分)。

 

 

 

 

 思えば1980年代は、少なくとも2020年代の今と比べれば、日本では『ガンダム』シリーズをはじめとしたロボットアニメの黄金期でした。

 『ガンダム』『マクロス』『ダンバイン』『ボトムズ』等々、毎週毎週何かしらのロボアニメが放送されていた気がします。

 そしてそれらは、海外でも放送され、少なくない数のファンを生み出し『ロボテック』という、日本製ロボアニメを再編集し、独自の物語にした作品などが生まれたりもしました。

 そしてそのファンの中に、映画作りに携わっていた人達がいました。

 そして彼は考えました‥‥‥こういうの俺達で作ったら良くね!‥‥‥と。

 本作の作者たちです(いつものことですが、本コーナーには筆者の憶測が多分に含まれております)。

 本作の価値は、まず送り手の人達が実写で巨大ロボ映画を撮ろうと思い、それを実行に映したことだと思います。

 CG技術が毛ほどしか無いその時代にです!!

 

 

 

 

 そしてその送り手の人達が考えた、映画の中で有人巨大人型ロボットが登場し、大暴れする為の物語の設定(口実ともいふ)が、素晴らしかったのです!

 

 日本のロボアニメでは、戦争の道具としての兵器、あるいは侵略者への数少ない対抗手段というのが王道パターンでした(筆者の主観)。

 しかし、そのどちらの場合も、実写映画で描くにはちと規模的に映像化ハードルが高こうございます。

 戦争時という設定にしたら、ロボにしろロボと戦う相手(ロボか怪獣?)にしろ、何台も登場させねばならず、実現する為の予算と労力はとんでもないことになってしまいます。

 そこで考えられたのが、いわゆる〈代理戦争〉設定です。

 例えば冷戦時のオリンピックや、宇宙開発競争などで使われた言葉ですが、本作の場合は競争どころではない言葉の通りの意味の代理戦争です。

 なにしろ国を代表するロボット同士のド突き合いで、国同士のイザコザの決着をつけようというのですから‥‥‥。

 

 

 このアイディアは、様々な面で秀逸だったように思います。

 まずこの設定なら、基本的に二体のロボの戦いなので、映像化のハードルが最小にできます。

 最低二体のロボさえ描ければいいのですから。

 もちろん、その状況に現代の社会で至るというのは、少々説得力に欠けるため、本作では一度核戦争で人類が滅びかけた未来の時代設定にすることで、人類は戦争はウンザリだけど、国同士の諍いは耐えず、その解決策が求められた結果ということにしています。

 その設定にした結果、本作は核戦争後を描いた作品としての側面を持ち、未来SFとしてドラマや設定をより深いものにしている‥‥‥ような気がします。

 具体的に言えば、そういう時代の社会というか文化的な面での市民の生活や国を代表したロボパイロットを描くことで、見た人間を飽きさせず、また主役を応援する気分にさせる効果があるということです。

 

 ‥‥‥‥‥‥そのドラマパートが、当時の技術で映像化可能なロボアクションパートでは、到底埋められない映画の尺を埋めるのに、丁度良かったという可能性もありますけどね!

 

 

 ちなみに‥‥‥本作の主役ロボたるマツモト14号(なんて名前だ!)の操縦システムは、コックピット内で特殊なスーツを着たパイロットの動きに合わせ、人型のロボの四肢が動くというものです。

 その映像は、設定そのままに実物大のコックピットのセット内で、主演俳優がエイヤッ!とロボを動かしてるような重厚な動きで手足を動かすことによって実現しています。

 う~んつい最近聞いたことがあるような操縦システム。

 似たような操縦システムは、日本のキグルミ特撮ロボ番組ですでに登場してたみたいですけどね!

 

 

 ちなみに‥‥‥この代理戦争として、世界各国が総力を結集して建造したロボが国の代表として戦う‥‥‥という設定は、その秀逸さから後に日本の某ロボアニメに逆輸入されるわけですが‥‥‥それはまた別のお話‥‥‥。

 

 

 

 

 そして本作が素晴らしい最大の理由は、やはり当時の技術の全てを注いで映像化したロボ同志のド突き合い特撮です。

 当然ながらそれらは主に模型特撮、それもストップモーションアニメ等と呼ばれるコマ撮りアニメで映像化しています。

 『羊のショーン』や『コララインとボタンの魔女』『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』等々で行われた映像手法です。

 もちろん、実物大のセットやコックピット内でのパイロット役の熱演もあっての素晴らしさなのですが‥‥‥本作のロボが戦う引きの映像の大半は、およそ1m程で作られたロボの模型を、一秒につき24コマ分、僅かに動かしながら撮影するという実に手間暇かかった手段で実現しています。

 そうして出来上がった映像が、汎百のCG映像などには勝るとも劣らない程に、迫力と味わいのある出来なのです。

 

 

 いわゆるCG技術を用いた特撮映像は、確かにそれまでの模型特撮では不可能な映像の実現を成し得ます。

 が、人間の目を誤魔化すレベルでの映像を生み出すには、恐ろしい程の手間暇と予算を必要とします。

 そしてCG技術は2020年代の大予算映画でならばいざ知らず、2000年代の映画の場合は、同じCG技術を用いた作品でも、技術の進歩した後年の作品に比して見劣りすることが多々あります。

 そんなCG技術に対し、本気で作られた模型特撮は、時間経過に関係無く一定以上のクオリティを有しているといえます。

 逆の言い方をすれば、精密に作られた模型特撮は、CG技術でも再現するのが大変難しいと言えます。

 本作はその、CG技術でも再現が困難なレベルの模型特撮が(一部は)見れる映画なのです。

 

 そこまで筆者に本作の模型特撮が凄いと思えた秘密は何か? というと‥‥‥。

 それはおそらく、太陽光を用いた照明だと思われます。

 模型特撮は基本的に、屋内に設けられたセット内で撮影するものですが、本作では屋外、それも砂漠のど真ん中に巨大なテーブルを置き、その上にロボバトルが行われる荒野のセットを作り、そこでロボをコマ撮り撮影したのです。

 それによって、実際に巨大ロボが荒野にそびえ立っているかのような映像が実現されたのです。

 逆に言えば、屋内での電球などを用いた人工的な照明では、いまだ太陽の光は完全再現できていないのです。

 ですから太陽の下で戦っている設定のロボを、太陽の下で撮影することで、本作の特撮スタッフはリアリティを実現したのです。




 この太陽光下での特撮撮影は、日本では平成版『ガメラ』シリーズなどでも行われ、その効果を発揮しております。

 

 ‥‥‥ですが、この太陽光下での特撮撮影も良い事ばかりではありません。

 普通の映画の屋外ロケのように、天候の影響を如実に受けるからです。

 砂漠での撮影は、雨や曇りなどの影響はもちろん、風や砂埃による撮影の中断も多々あり、本作の撮影は困難を極めたようです。

 その結果‥‥‥あくまで噂ですが、本作では当初予定されていた脚本通りの特撮パートが撮影できず、短くなった特撮シーンに無理矢理脚本と俳優のドラマパートを変更して撮影し、帳尻を合わせたと聞きます。

 見れば分かることですが‥‥‥本作の物語の最後の最後は‥‥‥ぶっちゃけなんでそうなるの!!? といういささかズッコケそうな展開となっております。

 しかし、音楽担当のフレデリック・タルゴーンが奏でためちゃくちゃノリノリなメインテーマと共にエンドロールがはじまると、まぁいっか! となるんですけどね!!

 

 

 

 

 

 と、ここでいつものトリビア。

 本作の主役たるロボをデザインしたのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのデロリアン等をデザインしたロン・コッブというお方。

 彼がマツモト14号をデザインしたわけですが、彼は日本のアニメ『マクロス』の主役メカ・バルキリーを参考にしたそうです。

 そのバルキリーを参考にした結果、マツモト14号はなんと三段階への変形機構を有する(おそらく)初の実写ロボとなったのです!

 人型以外の何に変形するのかは、未見の方はどうかその目でご確認下さい!!

 



 

 

 

 ‥‥‥ってなわけで『ロボ・ジョックス』もし未見でしたらオススメですぜ!!