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これは……〈中略〉……映画について、いい加減な知識と思い出を元に徒然なるままに書くコーナーである。
▼『映画を語れてと言われても』
第三十六回『“マスター・アンド・コマンダー” 帆船生活は辛いよ』
『マスター・アンド・コマンダー』
タグ:帆船 ナポレオン戦争 イギリス海軍 フランス海軍 私掠船 19世紀
2003年公開
監督:ピーター・ウィアー
原作: パトリック・オブライアン著:『オーブリー&マチュリン』シリーズ『南太平洋、波乱の追撃戦へ』他
出演:ラッセル・ウロウ ポール・ベタニー 他
あらすじ
ナポレオン戦争中の1805年、ラッキー・ジャックの異名を持つジャック・オーブリー艦長(演:ラッセル・クロウ)の指揮のもと、帆船フリゲート艦サプライズ号は、フランス海軍の私掠船アケロンの拿捕を命じられ、大海原を航海していた。
しかしある朝の夜明け前、霧に包まれた海上で先に敵を発見したのはアケロン号の方であった。
サイズ・速度・攻撃力の全てにおいてサプライズ号を上回るアケロンから突然の砲撃を受け、反撃もできぬまま大ダメージを被るサプライズ号。
オーブリー艦長は上陸用手漕ぎボートをおろし、それでサプライズ号を牽引して霧の中に突入させることで辛うじて危機を乗り越える。
しかしサプライズ号は、幼き士官候補生のブレイクニーが片腕を切断するなど、クルー、船体ともに甚大なダメージを受けていた。
だがサプライズ号には任務を放棄する選択肢などなかった。
アケロンを追いかけ、時に嵐や凪ぎの海と戦いながら、大海原を駆け巡るサプライズ号は、はたして任務を達成できるのか!?
今回は帆船映画回です!
その昔……人類は帆で受けた風の力で海を渡る帆船を用いて世界中を移動し、そして戦争をしていたわけですが、この映画はその時代の帆船乗りの生活と、凄まじい戦いの様子をリアルかつ大迫力で描いた数少ない映画なのです。
この映画の良さとはそのまま、その時代のあの場所のあの仕事の様子がリアルに描かれていることと言えるでしょう。
筆者が見た限り、CG技術を用いた特撮は最小限であり、その映像は全てホンモノを使った映像にしか見えません。
それは帆船上での乗組員の生活の描写も同様です。
敵船であるアケロンの状況や、何故にサプライズ号がアケロンを追いかけ、どういう事情で戦争となっているのかは、ほぼ描かれません。
女性キャラもほぼ登場せず、寄港した地の住民くらいしか出てきません。
描かれるキャラはサプライズ号で暮らす男性のみ、しかし彼らの間には、上級士官と水兵達との間に引かれた絶対的上下関係があります。
その上級士官には最年少で12才もの少年士官候補生が存在しており、それ何か強制された結果などではなく、家系の事情でありノブレスオブリージュの一環であり、当時としてはごく当たり前の出来事だったことで……そんな12~3の少年が、戦闘で隻腕になったり、いくつも年上の水兵達の指揮をしたりするのです。
食事は虫のわいたビスケットとラム酒が基本で、上級士官は専門コックの凝った料理が振舞われたりもします。
たまに島へ寄港すれば、生鮮食品と同時に木材も調達し、大砲で穴だらけになった船を船大工担当の乗組員が華麗に補修します。
医学は当然現代とは比較にならないレベルではありますが、本作のサプライズ号に限っては、天才船医にして艦長の親友マチュリン(演:ポール・ベタニー)が、開頭手術までして助かる命を救ったりしますが‥‥‥当然麻酔の登場はまだまだ先の話でして‥‥‥。
……‥まぁとにかく、筆者はあの時代の船乗りには絶対になりたくないなぁ‥‥‥と思う出来事の連続です。
他人事として見る分には大変面白いんですけどね!!
それはまるであの時代のドキュメンタリーを見ているかのよう。
ドラマは、アケロン拿捕に向けて邁進するオーブリー艦長のリーダーシップと、それだけでは解決できない問題の数々、そんな彼にただ一人文句を言える船医マチュリンとの友情と、彼の叶えたい夢とが、任務続行の中に織り交ぜて描かれます。
オーブリー艦長が友情をとるか任務をとるかの選択肢を迫られ、彼が下した決断が、クライマックスへと自然に繋がってゆきアケロン号との死力を尽くした戦いとなります。
舷側にもうけられた大砲の砲撃から、フリントロック式ライフルとピストル、そしてサーベル(カトラス)による白兵戦へとなだれ込む戦いは、それはもう大迫力であると同時に、戦争の無情さを感じる出来となっています。
‥‥‥そんな戦いとは無縁の生活をできる現代に、とりあえず感謝する他ありません。
ここでいつものトリビア。
本作はアカデミー賞に10部門ノミネートされ、2部門受賞し、原作を元に続編の製作も企画されたが、予算の割には興収が得られなかった為、続編企画は立ち消えとなっちゃったそうな。
‥‥‥ってなわけで『マスター・アンド・コマンダー』もし未見でしたらオススメですぜ!!