映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。











▼『映画を語れてと言われても』


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第一六三回『殺し屋で一杯‥‥‥“ブレット・トレイン”』





 タグ:日本 伊坂幸太郎 ブラッド・ピット 新幹線 東京 京都 アクション コメディ 殺し屋 ヤクザ きかんしゃトーマス 復習 運命 幸運 不運 群像劇 コロナ禍

『ブレット・トレイン』
2022年公開
監督:デヴィッド・リーチ
原作:伊坂幸太郎:著『マリアビートル』
製作会社:コロンビア ピクチャーズ 87ノース・プロダクションズ
出演:ブラッド・ピット アーロン・テイラー=ジョンソン ブライアン・タイリー・ヘンリー 真田広之 ジョーイ・キング アンドリュー・小路 マイケル・シャノン ローガン・ラーマン他




 あらすじ
 日本・東京‥‥‥。
 裏社会で生きる中年男性のキムラ(演:アンドリュー・小路)は、自分が目を離した隙に、何者かによって幼い息子をビルから突き落とされ重症を負わされる。
 父に静かに責められ、自らも息子から目を離したことをひたすら後悔するキムラ。
 そんな彼の元に、その息子をビルから突き落とした犯人が、人気アニメのゆるキャラ〈モモもん〉のキャラ電車仕様となった東京発・京都行のとある新幹線に乗車するという謎のタレコミがあり、キムラはすぐさまその新幹線へと乗り込む。
 そしてタレコミのあった座席にいる復讐対象に銃を突きつけるキムラ。
 だがそこに座っていたのは、十代半ばと思しき白人美少女であった。


 一方その同じ新幹線内では、凄腕の殺し屋の〈双子〉ことミカン(演:アーロン・テイラー・ジョンソン)と『きかんしゃトーマス』をこよなく愛するレモン(演:ブライアン・タイリー・ヘンリー)が、日本を牛耳るヤクザの首領ホワイト・デスの依頼で、中国マフィアによって誘拐されていたホワイト・デスの息子(演:ローガン・ラーマン)と身代金の入ったスーツケースを、大殺戮の上で中国マフィアの根城から回収し、依頼主に指定された京都へと送り届けようとしていた。
 しかし、ほんのわずか目を離した隙に、スーツケースが何者かに奪われた上に、同行していたホワイト・デスの息子が毒殺されてしまう。
 この大失敗をリカバリーすべく、ミカンとレモンは、レモンの『きかんしゃトーマス』理論を用いた推理法を駆使しつつ、車内から息子殺しの犯人を探し出し、スーツケースを取り返そうと動くのであった。


 その少し前、数年前に最愛の女性との結婚式で、妻となる女性と式の列席者全員を毒殺され、復讐に燃えている元メキシコカルテルの殺し屋のオオカミは、その仇がとある東京発・京都行の新幹線に乗車しているとの情報から、品川駅よりその新幹線に乗り込まんとする。


 その同じころ、裏社会で運び屋業をしているテントウムシ(演:ブラッド・ピット)は、病欠した他の人間の代打で、とある東京発・京都行の新幹線に乗り込み、車内からとあるブリーフケースを盗み出す仕事を引き受け、難なく成功する。
 しかし、テントウムシが次の停車駅である品川から下車しようとした瞬間、突然メキシコ人の大男に襲い掛かられるのであった。


 その一方‥‥。
 とある東京の片隅の自動販売機で、異国人の殺し屋に購入されたボトルウォーターは、そのままその殺し屋と共に東京発・京都行の新幹線に持ち込まれ、数奇な運命の果てに、そこに集った殺し屋たちの未来に重大な影響を与えるのであった‥‥‥。


 はたして同じ東京発・京都行の新幹線に集った殺し屋(と運び屋)達の運命やいかに!!??







 さて今回は! 日本を舞台に日本の小説を原作とし、今売れっ子監督のデイビッド・リーチ監督の元、あのブラッド・ピットが主演で2022年にお送りされた痛快殺し屋アクションコメディの傑作について語りたいと思います!


 原作は伊坂幸太郎作の小説『マリアビートル』。
 伊坂幸太郎といえば、日本でも『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』『グラスホッパー』などなど、何本も実写映画化がなされた原作小説を書くベストセラー作家です。
 その物語の特徴は、伏線と回収の見事さ、現代の裏社会を描いた独特の世界観、そして仙台大好き! なところです(筆者調べ)!
 そのおれがまさかハリウッドのスタジオとキャストによ映画化されようとは!



 で、その実写映画化を任された監督はデヴィット・リーチ。
 元スタントマンで、スタントマン仲間のチャド・タエルスキと共に、本コーナーでも紹介したキアヌ・リーヴス主演の復讐アクション映画『ジョン・ウィック』で監督デビュー。
 その後に『アトミック・ブロンド』『デッドプール2』、さらにここでも紹介した『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』等を撮ってきた今最も活躍しているアクション映画監督の一人です。
 元スタントマンゆえの激しい肉弾アクションを撮る一方で、CG技術をふんだんに用いた大破壊アクションも撮れるところが同監督の特色、さらにけっこうなコメディセンスと撮影と編集に合わせて臨機応変に対応するシナリオセンスまでお持ちでして、本作では新幹線の車内が主な舞台でありながら、それを感じさせないバラエティ豊かなアクションとドラマを多々見せてくれます。

 そして本作を作っている映画製作スタジオ自体が、デヴィット・リーチとチャド・スタエルスキが創設したスタントマン・マネジメント事務所〈87〉が、数々の業績を経てとうとう映画作る会社そのものになっちゃった〈87ノース・プロダクション〉なわけです。 つまり本作はアクションの専門家達によって作られたアクション映画なのです。
 ただアクションと言っても色々あるわけなのですが、本作が良いのは、銃撃戦アクション、徒手格闘アクション、カーアクション、刀を用いた殺陣アクション、CG技術を駆使した列車内アクションなど主だったアクション映像が本作一本で網羅されているところが素晴らしいのです。



 そして出演者は、主人公とも言る運び屋のテントウムシ役にご存知ブラッド・ピット!
 本コーナーでは『トロイ』『ワールドウォーZ』等で主演し、他に『セブン』やら『ファイトクラブ』やら『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』やら、数多くの映画で主演し大ヒットをかっ飛ばしてきたTheハリウッドスターが一人です。
 本作では、ちょっと心を病んでいる‥‥‥と思い込んでる、年齢の割に大人げない運の悪い運び屋を飄々と演じてります。


 そしてそのブラピの豪華な共演者達は!
 双子の殺し屋のミカン役にアーロン・テイラー=ジョンソン。
 ビジランテヒーロー映画『キックアス』の主演でブレイクした子役出身俳優で、子役時代は本コーナーでも紹介したジャッキーチェン主演映画『シャンハイ・ナイト』等に出演。
 他に本コーナーでも紹介した『テネット』や『アベンジャーズ:エイジオブウルトロン』や『GODZILLA』などに出演した演技力と共にアクションもこなすフィジカルも有した売れっ子イケメン俳優です。
 本作では、クールにスタイリッシュに殺し屋業を行う一方で、想定外の事態にめっちゃ焦り、ガラ悪くなる男を見事に演じております。

 その相方のレモン役にブライアン・タイリー・ヘンリー。
 近年活躍目覚ましい黒人俳優でリメイク版『チャイルドプレイ』『エターナルズ』『ゴジラVコング』『ゴジラXコング:新たなる帝国』などなど話題作に出続けています。
 その演技の特徴は‥‥おそらく多くがアドリブなんでしょうが、ともかく良くしゃべること。
 いわゆるオモシロ黒人枠と言えるのでしょうが、ただしゃべるだけでなく緩急の切れ味が鋭くて、聞いてて小気味良い芝居をする俳優の方です。
 本作でもどこから脚本でどこからアドリブか分からないトークとコミカルな演技で、物語をグイグイ前進させ、最後においしいところを持って行きやがります。

 さらに、謎の美少女プリンス役に子役出身のジョーイ・キング。
 キムラ役に『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』等のアクション映画に多々出演してきた日英ハーフ俳優のアンドリュー・小路。
 レモンとミカンが救出したと思ったら即毒殺されてしまうヤクザの息子役に、『パーシージャクソン』の主演でブレイクし、ブラピ主演の戦車戦争映画『フューリー』等に出演したローガン・ラーマン。
 さらにさらにマイケル・シャノンにザジー・ビーツに福原かれんの他、〇〇ニング・テイタ〇やライ〇ン・レイノ〇ズやサンド〇・ブロッ〇など、知ってる人には嬉しい豪華カメオ出演者が数々。

 ‥‥‥そしてなんといっても真田広之です。
 本作ではあるキャラとして、映画後半になってから新幹線に乗車するわけですが、乗車以後のブラピに負けぬ活躍が凄いのです。
 今一度、真田広之について語るならば、子役から俳優キャリアを開始し、1970年代から数え切れぬ程の映画ドラマ舞台で活躍し続けてきた日本を代表する俳優です。
 2000年代から海外に活動場所を広げ、トム・クルーズ、渡辺謙と共演した歴史アクション映画『ラスト・サムライ』で海外でも評価を受け、以後『ライフ』『アベンジャーズ:エンドゲーム』『ウルヴァリン・サムライ』『ラッシュアワー3』『モータル・コンバット』などなどハリウッド映画に出演し続けているお方です。
 2024年現在、自らが主演・プロデュースを行った戦国時代末期を描いた海資本制作ドラマ『SHOGUN 将軍』が特大ヒット&評価され、今最もハリウッドの話題の中心近くにいる人かもしれません。
 その俳優としての特色は、端正な顔立ちと気品ある演技、そして殺陣です。
 本作ではそんな真田広之の魅力の全てが一気に開放されています。








 ‥‥‥ってなわけで本作、この強力無比な原作&スタッフ・キャスト陣を上げただけで、ある程度以上の面白さは保証されたといっても過言では無いでしょう。
 本作の面白さの理由はもう語ったようなもんです!
 揃ったメンツの段階でシナリオも演技もアクションも一級品に決まってるのですから。

 そして実際、筆者は本作を公開前から超楽しみにし、公開開始と同時に見に行き、えらく満足したものです。
 エンタメ映画はこうでなくちゃ! と。

 さらに言えば、本作はただ面白かっただけではありません。
 2022年公開ということは、制作・撮影期間はまさにコロナ禍の真っただ中であり、本作のスタッフ・キャスト陣は、コロナと戦いながらこの映画を作ったことになります。
 それは想像を超えて面倒で大変であったであろうことは間違いありません。
 コロナのお蔭で本作の送り手の人達は数々のしなくて良い苦労をしたと思われます。
 本作にはその艱難辛苦を乗り越えた事が、映像に現れている気がして、作った人達に感謝するしかなかったのです。

 そのコロナ禍中での制作のせいか、本作では日本の新幹線が舞台の映画を撮る為に、数々のアイディアが駆使されているそうです。
 例えばスタジオ内に立てたLEDウォールに、用意しておいた日本の風景を映し、それをスタジオ内に作った新幹線の車両のセットの窓の向こうで横方向に再生することで、アメリカのスタジオにいながら、日本を走る新幹線車内の映像を作ることを可能にしたそうです。
 というわけで、本作のキャスト陣はもちろん、スタッフの多くが舞台となる日本訪れることがないまま、本作は完成したのだそうです。
 そのせいだけでは無いのでしょうが、本作における日本の描写はなかなかにトンデモジャパンですが‥‥‥。


 秋葉原の電気街の高架を走る新幹線(すでに変‥‥‥)のショットなどを除き、本作に映る日本の風景は、日本のようでどこじゃそこは? と言いたくなるような架空の風景なのはもちろんですが‥‥‥。
 夕方発車して東京から京都に着くのが早朝になる新幹線。
 なぜか緊急ドア爆破装置がある新幹線。
 最後尾車両のドアと窓が吹っ飛んでも運行を辞めない新幹線などなど‥‥‥。

 挙げだしらキリがないトンデモジャパンの連続ですが、ここまでくれば逆に次が楽しみになってくるから不思議です。
 またそこまでトンデモジャパンでありながら、〈モモもん〉という9割可愛いんだけど残り1割で可愛く成り切れていない謎ゆるキャラの存在や、それによるキャラ電車という文化に、やたらフォーカスされるスマート・トイレなどなど、妙に日本への解像度が高い描写もあって油断なりません。
 なかでも筆者が一番好きなシーンは、すったもんだの揚げ句に京都駅に到着した新幹線が、ある日本人歌手の名曲と共に再発車し、怒涛のラストバトルがはじまるシーンです。
 筆者はその選曲の完璧さにテンションが一気に爆上げとなり、思わず体調に変化を覚えたほど‥‥‥。
 なんでその曲をそこで選んでしまえるの!? そんなのもう最高じゃないっ?! としか言いようがありません。
 そこいらへんの日本の振れ幅有る理解もまた、本作の見どころの一つとなっているのです。




 また、あえて本作の面白さの要因の一つを絞って語るならば、本作が面白くなったのは、監督のデヴィット・リーチの高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変な映画作りが成功したからな気がします。

(※以後の文章には、本作中盤以降のネタバレが含まれております)

 本作のクライマックスの手前では、原作では死亡していたあるキャラが生存し、ラストバトルに参戦し大活躍します。
 というかそれはブライアン・タイリー・ヘンリー演じるレモンなのですが、本作のBDに収録されたオーディオコメンタリーによれば、映画中盤で起きるレモンの(偽りの)死亡シーン撮影段階では、まだレモンを生かすか死なすか監督は決めかねていたのだそうです。
 そしてそれに続くアーロン・テイラー=ジョンソン演じるミカンが、死んだレモンを見つけ涙するシーンでは、アーロン・テイラー=ジョンソンはマジでレモンは死んだと思って撮影していたそうです。
 ‥‥‥そして、監督はそこまで撮影してからレモンの復活を決め、続きを撮影したのだそうです。
 常識的に考えれば、そんな急な方向転換は物語のどこかに不和が生じ、完成作品を見た時にその違和感に気づきそうなもんです。
 が、本作では原作の要素や監督がとりあえずバラまいておいた数々の布石、役者陣のアドリブの数々を何パターンも撮影し、その中から伏線として使えそうなものを活用することで、違和感なくレモンを復活させ、原作既読組みふくむ観客に嬉しいサプライズを送ったのです。
 いやはや‥‥‥スタントマン出身監督がなんでそんな巧みなストーリーテーリングできるのぉ!? ‥‥‥ってなもんです。

 ちなみに本作でスマートトイレが大活躍するのも、ブラピがアドリブで言ったセリフから、大慌てで美術部にスマートトイレの個室セットを用意させて撮ったシーンなのだそうです。
 そのアイディアから実現までの即応性よ!!
 これがハリウッド映画か!






 さてここでいつものトリビア。

 本作に搭乗するゆるキャラの〈モモもん〉は、モモンガのゆるキャラ。

 作中で初登場時のブラピやミカンとレモンが、やたらと重ね着しているのは、物語で彼らが遭遇するイベントの度に脱がして、見た目で時間経過を表現する為の意図的なテクニックなんですって。

 ブラピは本作のプロモーションで来日した際に、ようやく初めて日本の新幹線に乗り、その静音性と振動の無さに、居眠りしてたら発車に気づかなかったそう。
 逆にこの映画撮る前に日本の新幹線に乗らなくて良かったのかもしれませんね!!


 ‥‥‥てなわけで『ブレット・トレイン』もし未見でしたらオススメですぜ!!






 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。












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第一六二回『良い物語が生まれ、語り継ぐ相手がいる限りこの世の中は‥‥“海の上のピアニスト”』





 タグ:豪華客船 ピアニスト ジャズ アメリカ 船旅 音楽 人生 ドラマ 演奏 モリコーネ ジュゼッペ・トルナトーレ


『海の上のピアニスト』

1998年公開

監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ

原作:アレッサンドロ・バリッコ

音楽:エンニオ・モリコーネ

出演:ティム・ロス プルイット・テイラー・ヴィンス メラニー・ティエリー





 あらすじ

 第二次世界大戦が終わった1946年頃‥‥‥。


 ニューヨークの一画にある中古楽器店に、一人のボロボロの姿のトランペット奏者が訪れた。

 その中年男の名はマックス(演:プルイット・テイラー・ヴィンス)。

 時代の荒波にのまれ食う金に困り、とうとう長年苦楽を共にしてきた愛用のトランペットを売りに来たのだ。

 店主に付けられたトランペットの値段ははした金であったが、空腹には代えられず、トランペットを売る決心をするマックス。

 だが店を出る前に店主に頼みこみ、最後に愛用してきたトランペットを吹かせてもらうことにする。

 

 思いのたけを込め、最後のトランペットを奏でるマックス。


 そして最後の演奏を終え、マックスが店を去ろうとしたその時、彼の奏でた曲に聞き覚えがあると店主が声をかけた。

 それはあり得ないと答えるマックスに、店主は偶然入手したという一枚の継ぎ接ぎのレコードを掛けると、ピアノによって奏でられたそのメロディは、間違いなくマックスが奏でたその曲であり、店主はマックスにその曲の正体を尋ねる。


 観念したマックスは、ポツリポツリとその曲を奏でた男‥‥‥ダニー・ブードマン・TDレモン・ナインティハンドレットについての思い出を語り出すのであった。



 時に1900年‥‥‥ニューヨーク港に到着した一隻の豪華貨客船〈ヴァージニアン号〉の船内で、一人の機関員ダニー・ブードマンが放置された男子の赤ん坊を発見した。

 ダニーはその子を見つけた木箱に描かれてい文字と、見つけた年にかけて〈ダニー・ブードマン・TDレモン・ナインティハンドレット〉と名付け、〈ヴァージニアン号〉の船内で育てることにする。

 大西洋を横断し続ける〈ヴァージニアン号〉内ですくすく成長するナインティハンドレット。

 だが彼が8歳の時、義父のダニーが事故で帰らぬ人となってしまう。

 船内で発見された為に国籍も、行く当ても無いまま独りぼっちになってしまったナインティハンドレット。

 が、ふと船内にあったピアノに振れた結果、とても8歳とは思えない美しい音色を奏でて船員と乗客たちを魅了し、彼は天才ピアニストとして〈ヴァージニアン号〉内で生きることになる。




 そして1927年、船内バンドのトランペット奏者として〈ヴァージニアン号〉に乗船したマックスは、船酔いに苦しんでいたところを、青年となったナインティハンドレット(演:ティム・ロス)に助けてもらったことから友人となり、有名ジャズピアニストとの対決や、ナインティハンドレット初めてのレコーディングと恋など‥‥‥彼と様々な体験を共にする。。



 思い出話を中古楽器屋店主に話す中で、マックスは例のレコードが発見されたピアノが、港で爆破解体作業中の元豪華貨客船にして、大戦中は病院船として使われていた〈ヴァージニアン号〉から運び出されたことを知る‥‥‥。



 はたしてマックスの語るナインティハンドレットの物語と、現在のマックスに待ちうけていたものとは‥‥‥?








 さて今回は神音楽映画回です!

 タイトルにもある通り、とあるピアニストの物語であり、音楽の物語であり、見る人をその音楽で魅了した作品なのですから!

 ついでに『タイタニック』や『ポセイドン・アドベンチャー』のような豪華貨客船映画でもあります。

 あと主演こそアメリカ人俳優ですが、イタリアの会社とスタッフが作ったイタリア映画でもあります。



 監督および脚本は巨匠ジュゼッペ・トルナトーレ!

 多くの人が見たことが無くても名前くらいは聞いたことがあるであろう名作映画『ニュー・シネマ・パラダイス』や『マレーナ』を撮ったイタリア映画界の至宝監督です。



 原作はアレッサンドロ・バリッコという人の独白劇『ノヴァチェント』だそうです。

 〈ノヴァチェント〉とはイタリア後で1900年代の事だそうで、この映画を見た後に原作の存在を知ると『独白劇? どういうこと??』となりますが、なんと日本でも市村正親等により上演が行われたことがあるそうです。



 そして本作の根幹部分を成す音楽を担当したのはエンニオ・モリコーネ(クラウス・デゥルディンガー、ルドヴィグ・ゴランソンに並ぶ声に出して呼びたい映画音楽家)!

 前述した『ニュー・シネマ・パラダイス』や『マレーナ』等のジュゼッペ・トルナトーレ監督作の他、クリント・イーストウッド主演『荒野の用心棒』や、チャールズ・ブロンソン主演『ウエスタン』等のいわゆるマカロニウエスタン映画の劇伴で有名となったお方で、その他本コーナーで言えばクリント・イーストウッド主演『ザ・シークレットサービス』などなど、数え切れないほどの映画音楽を奏でてきたお方。

 その音楽としての特徴は、筆者の印象だけで言うならば、昔ながらのオーケストラと共に、コーラスを多用し、むちゃくちゃエモォ~~~~いメロディを奏でるところです。


(なお、もの凄く余談ですが、ここで度々語らせてもらっている筆者が監督した自主映画(※第一〇〇回『自主映画製作を止めるな!“座頭の死五六 -怒りの硝煙街道-”』参照 https://ameblo.jp/rekisin/entry-12797234046.html )の本編最初と最後にかかる曲と、ラストバトル直前に流れるBGMは、筆者が無理言って、エンニ・モリコーネが音楽を担当した『ウエスタン』の曲をオマージュしたBGMを作ってもらったのが流れております!)




 そして出演者は、青年期以後の主人公ナインティハンドレット役にティム・ロス。

 クエンティン・タランティーノ監督デビュー作『レザボア・ドッグス』でのミスターオレンジなど、タランティーノ映画によく出演する他、マーベルヒーロー映画の『インクレディブル・ハルク』のヴィラン・アボミネーションことエミル・ブロンスキー役で覚えている人も多いかもしれません。

 大スターという程華も無く、何方かというと名脇役なお方ですが、ともかくとんでもなく器用なことが本作で判明します。



 そして準主役とも言える本作の語り部にして、ナインティハンドレットの盟友マックス役にプルイット・テイラー・ヴィンス。

 脇役俳優として数多くの映画に出演してきた人で、他に有名な出演作はキアヌ・リーヴス主演の悪魔祓い映画『コンスタンティン』での、コンスタンティンの良き理解者であるアル中神父のヘネシー役。

 本作では大変素晴らしい芝居を見せてくれており、もっと活躍しても良いと思う俳優さんです。





 残念ながら本作で筆者の知っている俳優はこのお二方でして、本作がイタリア映画ということもあり、他にご紹介できる出演者はいませぬ。

 ですが本作は、是非ともここで紹介したくなる一本なのです。







 公開されたのは1998年。

 ちなみにジェームズ・キャメロン監督レオナルド・ディカプリオ主演の大ヒット映画『タイタニック』の公開の翌年です。

 当時の筆者は前述したようなスタッフ・キャストのことなど露知らず、ただ『豪華客船て‥‥‥良いよね』てな感覚で、『タイタニック』を見た時のような期待を胸に、暇に任せて見に行ったものです。

 そして観賞後すぐサントラCDを買い求めたものです。


 本作はそれほどまでに素晴らしい音楽映画だったのです。

 

 しかしてそれは、いかにして成されたのでしょうか?


 本コーナーでは毎度のことですが、それは例によってスタッフ・キャスト陣の尽力によるものだと思われます。

 監督・脚本が、原作の物語を映像化すべく、最高の脚本を用意し、当時最先端のVFX技術や、セットや衣装を駆使し、1900年代の豪華貨客船を映像化し、そこでティム・ロスとプルイット・テイラー・ヴィンスはもちろんのこと、豪華貨客船に乗ることとなった無数の客役のエキストラまでもが、本作品を描くために1900年代の人々になりきって演じているとこが良いのです。



 特に豪華客船内部の映像は素晴らしく、なかでも筆者が好きなシーンの一つは、ナインティハンドレットとマックスが、荒らしの夜の揺れまくる船内で初めて出会い、パーティー会場に使われる大広間で、ストッパーを外したグラドピアノで左右前後に傾く大広間内を自由気ままに移動しながらナインティハンドレットがピアノ演奏しまくるシーンです。

 1998年当時の映画技術でいかにしてこのシーンは作られたのか? 実際に大広間を傾かせたのか、役者陣が大広間が傾いた芝居をしているだけなのか‥‥‥筆者には分かりませぬ‥‥‥。

 




 その他、1900年のピカピカだった〈ヴァージニアン号〉が、1946年の廃船間近のボロボロとなった姿になっているところなど、美術面のクオリティが素晴らしいのです。



 そしてアレッサンドロ・バリッコの原作を映像化した物語に引き込まれます。

 本作で上手いのは、ただナインティハンドレットの人生を時系列準に描くのではなく、1946年の現在パートと、1900年代の過去パートを交互に描くことで、ナインティハンドレットという人物の謎に迫るミステリー要素を生み出し、映画を飽きずに見れるようにしていることです。

 そしてそのように描かれることで、ナインティハンドレットの数奇な人生の記憶が、聞いた者に一つの寓話のような印象を与え、心に残るのです。

 その分、残念ながら本作は、起承転結あるエンタメ作品というより、とても切ない物語となっているのですが‥‥‥。

 でもどうかこれから見る方は、本作冒頭でナインティハンドレットが語ったとされる言葉を思い出して欲しいのです。

 それは‥‥‥。


『良い物語が生まれ、語り継ぐ相手がいる限りこの世の中は‥‥』


 さらにそのナインティハンドレットとマックスを、ティム・ロスとプルイット・テイラー・ヴィンスが演じたことで、本作は一度見たら忘れ得ぬ作品となっているのです。



 そしてそれら映像・物語・演者の要素が、エンニオ・モリコーネの奏でる音楽を最大限に引き立たせるのです。


 ちなみに筆者が一番好きなのは映画のオープニング曲。

 大西洋を渡る長い長い船旅の末に、ニューヨーク港にたどり着いた旅人達の夢と希望が見事に音楽となって奏でられているのです。

 どうか本作未視聴のお方は、その目と耳でご確認下さい!




 

 さてここでいつものトリビア。


 プルイット・テイラー・ヴィンス演じるマックスは、長年の船旅の結果、常に眼球がふるふると揺れ動いており、初対面の者にすぐ元船乗りだと分かる‥‥‥というキャラを演じているのですが。

 実はマックスの震える眼球は、演技やCG技術で表現しているわけではなく、プルイット・テイラー・ヴィンスが眼球の病を患った結果、素でそうなっているのだそうです。


 

 また本作ピアノ演奏の曲は、全て別に録音したものを後から編集で映像に足したものですが、メイキング映像を見ると、ナインティハンドレットがピアノ演奏を行うシーンの撮影の映像では、映画本編時と同じ曲が聞こえてきます。

 ‥‥‥‥‥‥つまり、この映画の音楽は後から編集で足されたものではありますが‥‥‥撮影時はナインティハンドレット演じるティム・ロス自身が映画と同じ曲をピアノで奏でながら撮影したことに‥‥‥。

 ‥‥‥‥‥‥ティム・ロス‥‥‥凄い‥‥‥ちょっと怖いレベルで‥‥凄い‥。



 ‥‥‥ってなわけで『海の上のピアニスト』もし未視聴でしたらオススメですぜ!!




 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。











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第一六一回『“映画大好きポンポさん”と映画大好きな愉快な仲間たち』





『映画大好きポンポさん』
2021年公開
監督・脚本:平尾隆之
原作:杉谷庄吾【人間プラモ】
キャラクターデザイン:足立慎吾
音楽:松隈ケンタ
声の出演:清水尋也 小原好美 大谷凜香 加隈亜衣 大塚明夫


(※本文章には、本作中盤以降のネタバレが含まれております)


 あらすじ
 ここは映画の都〈ニャリウッド〉‥‥‥。
 そこでは明日の映画スターや映画監督を夢見る若者が、日々夢に向かって努力し、あるいはもがいていた。

 そんなニャリウッドにある映画制作スタジオ〈ペーターゼン・フィルム〉では、若くして名映画プロデューサーの祖父の後を継いだ敏腕映画プロデューサーの少女、ポンポさん(声:小原好美)ことジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットのプロデュースの元、次々と新たな映画が世に送り出されていた。
 
 そんなポンポさんのアシスタントとして、彼女のおやつの用意からスケジュール管理、撮られる映画に関するあらゆる雑用をこなしてきた映画監督志望の青年ジーン(声:清水尋也)は、ある日突然、彼女がプロデュースしたB級モンスターパニック映画の予告編の編集を任される。
 そしてこれまでの知見の全てを駆使して編集した予告編は見事採用となり、ジーンは次なる仕事として、なんとポンポさんが脚本を執筆し、ニャリウッド屈指の名優マーティン・ブラドック(声:大塚明夫)主演の新作映画『MEISTER』の監督に抜擢されるのであった。
 
 その一方で、女優の卵としてバイトの日々を送っていたナタリー(声:大谷凜香)は、ポンポさんが審査を行っていたオーディションに出たところで彼女の目に留まり、件のポンポさんプロデュース映画『MEISTER』のヒロイン役に抜擢される。

 かくして超新人監督と新人ヒロインで撮られることとなった新作映画『MEISTER』。

 極めて優秀だがその高慢さ故に業界を追放され、逃避の末にスイスへとたどり着いた壮年のオーケストラの指揮者〈マイスター〉は、そこで出会った少女との日々を切っ掛けに、やがて再起を目指すようになる。

 その物語を撮影し映画とするため東奔西走するジーンとナタリーとポンポさん達スタッフ・キャスト陣。
 しかし、理想の映画‥‥‥面白い映画‥‥‥成功する映画を世に送り出すのは、想像を超えた困難が待ち構えていた。

 はたして無事映画『MEISTER』は無事完成し、苦労に見合った評価を得ることは出来るのであろうか!?






 さて今回はアニメ映画回!
 それもコロナ禍の真っただ中2021年に公開され、あまり有名では無いかもしれませんが、見た人には高評価を得た隠れた名作アニメ映画です。


 原作は杉谷庄吾【人間プラモ】の同名マンガ。
 元は一話5分ほどのショートTVアニメとして企画された作品ですが、そのアニメ企画が頓挫したためマンガとして世に送り出したところ好評を得て、こうして劇場用長編アニメ作品となったそうで、人の人生が数奇であるように、作品の運命もまた不思議なものです。


 監督および脚本は平尾隆之と言う人。
 アニメの制作進行からキャリアをスタートさせ、何故か演出、画コンテ、原画、脚本も担当するようになり、結果監督になってしまったお人だそうです。
 本作以前には『空の境界』『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』の監督を務めています。


 さらにキャラクターデザインは足立慎吾という人。
 『WORKING!!』や『ソードアート・オンライン』のキャラクターデザインと原画で有名な人です。


 声の出演は、事実上の主役たるジーン役に若手俳優の清水尋也。

 『MEISTER』のヒロインとしていきなり銀幕デビューする女優ナタリー役にモデルとしても活躍する若手女優の大谷 凜香。

 さらにポンポさんに小原好美、名優マーティン・ブラドック役に大塚明夫などなど、実力派声優が揃えられております。


 総じて本作のスタッフ・キャストは、今のアニメ業界の中でも、明日の業界を背負って立つ今後の活躍が期待できるメンツがバランスよく集められている気がします。





 そんなメンツによって世に送り出された本作を、前述したように筆者はまだコロナ禍ただ中であった2021年に、その口コミでの評判から見に行き、実に心を満たされたのです。

 確かに本作は誰もが名を知るメジャーな名作とは言えないかもしれませんが、ここで語るに値する良作ではあると思うのです。

 それはまず劇場用アニメ映画ならではの潤沢な予算による美麗な作画アニメーションが素晴らしく、また声の出演陣の名演に、その理由があります。

 あらすじでも書いたように、本作はいわゆる映画制作映画であり、アクションでもSFでもファンタジー映画でもありません。
 ゆえに映像で描かれるのは、文章で言えばあまり“映え”の無い映画を作るスタッフ・キャストが撮影したり編集したりする姿がメインで映る作品と言えます。
 しかしながら、本作は監督以下のスタッフの演出センスと作画力による映像美により、まったく飽きることなく物語に引き込まれてゆくのです。

 例えばそれはシーンとシーンの間の場面転換の演出であったり、終盤でジーン監督が作中映画『MEISTER』の編集に思い悩む際の脳内イメージの映像化であったり、本作はそれらをアニメ作品だからできる表現で極めてキャラが良く動き、テンポ良く描かれることで、あらすじの内容からは想像できない程ハラハラドキドキと‥‥‥時にジ~ンとさせてくれるのです。


 そして本作の最大の魅力は、その物語にあると思います。
 本作は本コーナーで言えば『劇場版SHIROBAKO』や『カメラを止めるな!』に属する〈映画制作映画〉に属する作品です。

 ただ本作の場合、扱っているのがハリウッド大作級の映画ではありますが、舞台をハリウッドそのものにすると、芋づる式に実際の地名から人名やらがわんさか出てきてしまい、色々めんどくさい問題になってしまう為、〈ニャリウッド〉という架空の街を舞台にすることで、以下全てのキャラ名諸々を架空にしてしまえることにしたのが、本作の原作のポイントなのではないでしょうか?
 ポンポさんみたいな女子が大作映画のプロデューサーであっても、架空の街の架空の映画業界の話なら、なんか納得できてしまえそうですしね!

 そして〈映画制作映画〉とは、筆者が勝手にそう呼んでいる映画のジャンルですが‥‥‥ようするに『映画そのものよりも映画作ってる人達のドラマの方が面白く、そっちを映画にした方が良いんでね?』といコンセプトで作られた作品のことです。
 そういうことが思いつける程、映画制作の現場はしっちゃかめっちゃかで色々なことが起きるのです。

 映画作りの現場では起こり得ることは望む望まないに関わらず起こる時は起こるし、たとえつつがなく予定通りの完成にこぎつけたとしても、それは出来上がった作品の好評価を保証するものでは無いのです。
 ‥‥‥では映画作りの現場で、スタッフ・キャストは如何に行動し映画を良くしようとするのか? 

 それは‥‥‥思いついたことでできることは何でもやってみるのです!

 人間、最初から最適解を導き出せたら苦労しやしません。
 完璧な脚本など存在せず、時間経過と共に新たな閃きが、実際に撮影してみたり、ロケ地に着いた瞬間に降って湧いたりするのです。
 本作で筆者が気に入っているシーンは、名優マーティン・ブラドックが、初監督に緊張しているジーンに対し『監督は君だ。思った通りにやると良い。だが映画は皆で作るものだから、アイディアがあったら言わせてもらうよ?』と自ら声をかけ、スタッフにもそう呼びかける件です。
 
 至極当たり前の話ですが、いかに名監督が名脚本家の書いたシナリオ通りに映画を撮ろうとしても、監督は頭脳ふくめて一人分のマンパワーしかもっていません。
 多少のセンスや経験値により、他より優れた判断力やら技術を持っていたとしても、それは一人分の人間が成しうる範囲を大きく超えることはりません。
 ですから、映画は一人で作ることはできず、多くの人間の知見を寄せ集めて作られるべきなのです。
 しかし最終決定権は監督にあることも忘れてはなりません。
 決定権ある人がいなければ話がまとまりませんし、それを行うポジションこそが“監督”なのです。

 筆者は本文章の執筆にあたって本作を見返した際に、本コーナーで紹介した某映画のドキュメンタリー番組を思い出したものです。
 その映画製作ドキュメンタリーの中で、その監督はスタッフ・キャストからあらゆるアイディアを募り、実際にやってみせて、撮影もしますが、編集段階でその多くは不採用となり、それがドキュメンタリー番組の視聴者によって叩かれる事象がありました。
 案を出さない監督の代わりにスタッフ・キャストが苦労したのに可哀そう‥‥‥と。

 確かに、監督なのに自分のイメージで映画を撮らず、スタッフ・キャストにまでアイディアを募るのは一見不可思議に思えます。
 しかし同時に思うのです。
 なにもかも監督がイメージしていて、全てが監督の思った通りに作られる映画にスタッフ・キャストとして参加して楽しいのか? 良いものが作れるのか? と。
 自分が映画にスタッフ・キャストとして関わる立場だったならば、自分の担当するセクションについて自分なりの意見を持つだろうし、それが映画を良くするのなら採用して欲しいと願うはずです。
 ドキュメンタリー番組での某監督に、スタッフ・キャストは自分の思いつきをトライする機会を与えてもらえただけでもありがたいことではなかったのではないでしょうか?

 しかしながら、そのスタッフ・キャストから募った意見やアイディアが、完成本編では使われないことがよくあることも分かります。
 映画はスタッフ・キャストの満足の為に作られるわけではなく、映画は完成して見た人を満足(そして儲け)させる為に作られるのです。
 その優先順位が覆ったらロクなことになりません。
 この『映画大好きポンポさん』の終盤では、まさにその本編では採用されるされなかった問題にフォーカスされるのが見どころだと思うのです。
 本作の終盤は、監督初挑戦のジーンが、映画『MEISTER』を完成させる為に、いかな苦渋の決断を下すのかがクライマックスとなるのです。
 はたして、ジーン監督はいかな答えにたどりつくのか? 本作未見の方はどうかその目でご確認下さい。







 さてここでいつものトリビア。
 本作の原作マンガでは、主要キャラ全員に好きな映画三本が設定されています。
 ポンポさんの場合は『セッション』『デス・プルーフ』『フランケン・ウィニー』!!!
 お‥‥‥おう!!


 ‥‥‥ってなわけで『映画大好きポンポさん』もし未見でしたらオススメですぜ!!