映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。





▼『映画を語れてと言われても』



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第二四六回『命令が認識できませんでした ロシア語で考え再入力して下さい。“ファイアーフォックス”』


 タグ:クリント・イーストウッド 冷戦 ステルス機 スパイ ドッグファイト ソ連



 
『ファイアーフォックス』
1982年公開
監督:クリント・イーストウッド
原作:クレイグ・トーマス
特撮監督:ジョン・ダイクストラ
出演:クリント・イーストウッド他

 あらすじ

 時に20世紀の……米ソ冷戦のただ中の頃……。


 ソビエト軍が、それまでの戦闘機の常識を超え、マッハ6での飛行を可能とする超高速高性能ステルス戦闘機(コードネーム)ファイアーフォックスの開発に成功した…との情報をスパイから入手したNATO軍は、その性能の高さから、もしもファイアーフォックスが正式に配備された場合、米ソ東西の軍事バランスが崩壊してしまうことを危惧する。
 仮にファイアーフォックスに対抗しうる戦闘機の開発を試みても、ファイアーフォックスの配備までに間に合わせることは絶望的だと判断したNATO軍司令部は、現地工作員の協力の元、パイロットをソ連に潜入させ、試験段階であるファイアーフォックスをソ連軍の空軍基地から強奪する計画を立案する。


 その強奪作戦の要、実際にソ連の奥深くに潜入し、ファイアーフォックスに乗り込み、西側の拠点まで操縦するパイロットとして、かつてベトナム戦争で活躍し、ロシア語をネイティブ並みに話すことが可能な唯一の男、ミッシェル・ガント(演:クリント・イーストウッド)に白羽の矢が立てられた。

 ベトナム戦争時のPTSDにより、日々襲い来るフラッシュバックに苦しめられていたガントは、当初は作戦参加を断ろうとするものの、西側諸国崩壊の危機に断る権利など与えられるはずもなく、アメリカ人ビジネスマンの偽の身分を与えられ、モスクワへと送り込まれ、そこで現地工作員のウぺンスコイとの合流を計る。


 だがガントの行く手には、想定外のアクシデントとの連続が待ち構えていた。
 はたしてガントは無事ファイアーフォックスの元にたどり着き、乗り込んだうえで西側まで操縦して帰ることができるのであろうか!?






 さて今回はクリント・イーストウッド回!
 クリント・イーストウッドが誰か? については……。

第二二七回『奇跡の供給“ハドソン川の奇跡”』

第一七四回『登山はくれぐれも安全にお楽しみください!“アイガー・サンクション”』

第六十六回『大統領警備はつらいよ“ザ・シークレットサービス”』

 ……などを読んで頂くと助かるのですが、ザ~ックリと説明すれば、1970年代から活躍してるアメリカを代表するスター俳優にして、映画監督としても名作を撮りまくってるハリウッド映画界の生けるレジェンドな凄いお方です。


 そんな彼が、数々の主演&監督映画の中で選んだ題材が、クレイグ・トーマスって人が執筆した冷戦中のソ連から最新鋭ステルス戦闘機を盗んでくる『ファイアフォックス』という小説なのです。


 そしてまだCG技術のCの字も無い時代に、模型特撮や実物大プロップや合成技術を駆使し、架空の高性能ステルス戦闘機の映像化に挑んだのが、ジョン・ダイクストラってお人。
 『スター・ウォーズEPⅣ:新たなる希望』や『スタートレックTMP』からサム・ライミ版『スパイダーマン』んのVFX映像までを作り続けてきた業界のレジェンドみたいな人です。
 本作製作時に考えうる最高の特撮映像の人選なのです。
 本作の魅力の4割くらいは、彼主導で生み出された大暴れするファイアーフォックスのアナログ特撮映像にあるといっても過言では無いでしょう。




 ってなわけで出演者は!
 トラウマ持ちの凄腕米軍パイロットのミッシェル・ガント役にクリント・イーストウッド。
 ……残念ながら、本作で筆者が存じあげる俳優は以上となります。
 年代もあって知らん人ばっかだったのです……しかし、知らない人ばかりなことで先入観無く見れることが、本作の面白さに寄与していると言えるかもしれません。
 どのキャラがどのような行ないや運命をたどるか予想がつかないからです。




 そんなスタッフ・キャスト陣でお送りされた本作ですが、公開時の年齢的に筆者が映画館で見ることは叶わず、後年になって地上波で放送されたのを見たのが初でした。
 見る前から作品自体の存在は知っており、とても楽しみにしていたものです。

 で、見た結果は……なんか思ってたんとちゃう……ってな感じでした。
 



 本作は売り上げを後から見るに、大ヒットというよりは中ヒットレベルの興収だったようですが、ともあれ、クリント・イーストウッド監督の代表作の一つとして、また冷戦時代を舞台としサスペンス&航空アクションの名作として、映画史にカウントされた作品と言って良いと思います。



 そうなった理由の一つは、純粋にクオリティが高かったからな気がします。

 クリント・イーストウッド作品はみなクオリティが高いと思うのですが、本作場合は、航空アクションとしての前に、まず冷戦時代を舞台とした潜入サスペンスとしてハイクオリティなのです。
 言い方を変えれば超ヒヤヒヤする。
 この映画の半分は、ロシア語が堪能な以外はあくまでパイロットでしかない主人公ガントが、どこに監視の目があるか分からないソ連国内をスパイのごとく移動し、ファイアーフォックスに乗り込むまでがとんでもない緊張感と共に描かれているのです。

 2026年の今、再び世界はきな臭くなってきておりますが、本作公開時の1982年は、米ソ冷戦と呼ばれ、アメリカと今のロシアを中心としたソビエト連邦が敵対し、スパイ合戦や間に他の国を挟んだ紛争を繰り返し、それがいつ世界を巻き込んだ大戦争……下手をすれば核戦争にまで発展し、世界が終わってしまうんじゃないかとビクビクしながら生きていた時代だったもんです。
 幸い、1989年のソビエト連邦の崩壊と共に米ソ冷戦は終わったわけですが、当時は鉄のカーテンなどとも呼ばれる情報封鎖によって、ソ連の国内がいかな社会なのかが、我々には分からない状態だったのです。

 米ソ冷戦ただ中の両陣営の暗闘といえば、本コーナーで紹介した……。

第九回『“レッドオクトーバーを追え”この海の底の片隅で』

 ……も、その一作と言えます。

 そんな情勢の中での潜入ミッションをハイクオリティで描いたところが本作の魅力であり、ユニークなところでもあるのです。
 だって本作を見ようと思った人は、べつにそこは見たいと思ってたわけでは無いですからね!
 筆者が本作初見時に思ってたんとちゃう! となったのはこの点だったわけです。





 ですが、もちろんちゃ~んとガントがファイアーフォックスに乗ってからの本作後半は、大迫力の航空アクション映画となっており、そこが本作の最大の魅力となっているのです。

 思えば、本作公開時の1980年代は、夢のビークル(乗り物)作品の時代だった気がします。
 『超音速攻撃用ヘリ:エアウルフ』『ブルーサンダー』『ナイトライダー』『バックトゥザフューチャー(デロリアン)』『弾丸特急ジェット・バス』などなど、急激な技術革新と供に、人は未来の乗り物に夢をはせていた時代な気がするのです。

 本作は冷戦潜入サスペンス航空アクションであると同時に、その夢のビークルものの一作でもある気がします。
 マッハ6で飛ぶ架空戦闘機のファイアーフォックスを、当時の映像技術の粋を結集して映像化したのですから。
 もちろん、今のCGを駆使した映像技術ならば、もっと大迫力でリアリティな映像を自由自在に生み出せたかもしれませんが、本作は前述したジョン・ダイクストラの力技とも言える実物大ファイアーフォックスや、模型を使った映像が味わい深く好きなのです。
 そしてクライマックスには、ファイアーフォックスを撃墜可能とする最大の敵とのドッグファイトが繰り広げられるところも実にエンタメしてて素晴らしい。

 また、ソビエト領から脱出せんとするファイアーフォックスを支援するNATO側の奇想天外な燃料補給作戦や、ファイアーフォックスを追いかけるソ連軍司令部のドラマも面白いのです。




 ちなみに筆者のお気に入りは、現場までやってきちゃったソ連の最高書記長と超切れ者のウラジミロフ将軍の駆け引きのドラマ。
 敵側ではありますが、優秀な人はちゃんと優秀に描かれているのです。





 さてここでいつものトリビア。
 本作の原作小説は、1976年に起きた、ソ連軍パイロットのベレンコ中尉が乗った戦闘機が、なんと日本は北海道の函館空港に強行着陸して亡命した事件から着想を得てるんですって。
 ちなみに、そのベレンコ中尉ののったソ連製戦闘機は、ファイアーフォックスのように米軍が恐れるような高性能ではなかったみたい。




 ……ってなわけで『ファイアーフォックス』もし未見でしたらオススメですぜ!!







 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
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※自動車運転は、道路交通法を守り、安全運転を心がけてください

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第二四五回『デジャヴッ!!ふふふんふ♪ ふふ~ふふ~ん♪“頭文字[イニシャル]D THE MOVIE”』




 


『頭文字[イニシャル]D THE MOVIE』
2005年公開
監督:アンドリュー・ラウ アラン・マック
原作:しげの修一
出演:ジェイ・チョウ アンソニー・ウォン エディソン・チャン 鈴木杏 他



 あらすじ

 199×年の日本‥‥‥。
 深夜の峠道での公道ダウンヒル(下り道)レースにおいて、現在最速と目される男、マツダ・RX7乗りの高橋涼介(演:エディソン・チャン)、と、その彼を宿命のライバルとして追う日産・スカイラインGT-R乗りの中里毅(演:ショーン・ユー)は、群馬県制覇を目指して秋名山で行った現地チームとの公道レースの帰路の下り坂で、圧倒的に車体スペックで劣るはずの謎のトヨタ86に追い越されてしまう。
 

 そのハチロクこそが、捜していた『伝説の秋名山最速の男』と確信した中里は、彼に公道レースを挑むべく、涼介と共に地元で彼を捜し始める。

 一方、中里に敗れた地元チームの青年、立花樹も、『伝説の秋名山最速の男』の噂を知り、彼に中里へのリベンジレースを頼もうと彼を捜しはじめる。
 目撃されたトヨタ86に描かれた『藤原とうふ』の文字から、最初はその中年店主である藤原文太(演:アンソニー・ウォン)こそが、かつての『伝説の秋名山最速の男』と目するが、実際は違った。

 中里が遭遇したトヨタ86は、藤原とうふ店店主の一人息子にして、立花樹の親友でありバイト仲間でもある男子高校生の藤原拓海だったのだ。
 拓海の父文太は、彼が幼い頃からトヨタ86を一人で運転させ、深夜の峠道を通らせてはとうふの配達をさせることで、拓海の知らぬ間に峠道最速のドライビングテクニックを叩きこんでいたのだ。
 それまで公道レースのはまったく興味など無かったのだが、親友の樹の懇願と、クラスメイトの気になる女子から誘われたデートで、トヨタ86の使用許可を父から得る為に、ついに拓海は公道レースの世界に足を踏み入れる。

 はたして、拓海を待ち受ける数々のレースの勝負の行方やいかに!?







 さて今回は! 日本は群馬県のとある山中を舞台に、公道レースに全てを掛ける若者たちの青春と熱き戦いを描いた、しげの修一原作の大人気マンガの実写映画版を語りたいと思います!

 なぜ今、このタイミングでこの映画なのか? というと、筆者が今頃になって放送中のTVアニメ『MFゴースト』を見はじめ、とても面白かったからです。
 本作の原作は、その『MFゴースト』の前日譚にあたる作品なのです!

 うむ! それにしても、古今東西、人気マンガやアニメの実写映画化は、映画ビジネスとしては定番の戦術であり、洋画邦画問わず名作が多々存在します‥‥‥。
 人は隙あらばマンガやアニメを実写化せずにはいられないのです!
 ‥‥‥ただ、本作の場合少々ややこしいのは、本作が日本を舞台に日本で撮影された日本のマンガ原作の実写映画であるにも関らず、本作が香港映画‥‥‥ってことです‥‥‥。


 ってなわけで監督はアンドリュー・ラウと、アラン・マックってお二人。
 後にマーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ&マット・デイモン主演映画『ディパーテッド』としてハリウッドリメイクもされた、知る人ぞ知る名作囮潜入刑事映画『インファナル・アフェア』三部作を監督したお方です。
 つまり、その段階で監督の力量については申し分なく保障されているということです!
 むしろ、なんで唐突に『イニD』の実写映画を撮ったのぉ!? って感じです!



 で、その出演者は!?

 主人公の藤原拓海役に、台湾出身のジェイ・チョウ。
 ミシェル・ゴンドリー監督作、セス・ローゲン、キャメロン・ディアス主演のリメイク映画『グリーン・ホーネット』で、元はブルース・リーが演じていたMrカトーを演じた人。つまブルース・リーが演じたようなカンフー大立ち回りを演じて見せたってこと。
 台湾では凄い売れっ子で有名なミュージシャンなんですって。





 そしてその主人公、藤原拓海のライバルにして師匠となる高橋涼介役にエディソン・チャン。
 香港映画界のイケメン俳優で、前述した本作監督が以前とって評価された『インファナル・アフェア』の続編にして前日譚映画で若き日の主人公を演じてたりしてるお方。

 もう一人のライバル中里毅を演じるのはショーン・ユー。
 この人も香港映画界のイケメン俳優で、前述したた『インファナル・アフェア』の前日譚映画で若き日の主人公の一人を演じてたりしてるお方。




 さらに、本作で強烈なインパクトを残す富士通の父親にして藤原とうふ店店主の藤原文太を演じるのがアンソニー・ウォン。
 この人も香港映画界の大々大ベテラン俳優のお方でして、前述した『インファナル・アフェア』全三作にも出演している他、本コナーでも紹介したジョン・ウー監督作『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』で清々しいほどの悪役を演じた性格俳優です。
 彼が演じた結果、原作マンガの藤原文太とは大分違うキャラになっているのですが、なんやかんやで本作の魅力の2割くらいは担ってる気がします。

 そして日本からは、藤原拓海の気になるクラスメイトの女子高生、茂木 なつき役に、山崎貴監督作『ジュブナイル』『リターナー』や、岩井俊二監督作『花とアリス』等の出演で有名7な鈴木杏が出ています。
 


 ‥‥‥というように、本作はスタッフ・キャスト陣も日本・香港・台湾のごちゃまぜ作品なのであります。
 なんで香港のスタッフ・キャストで日本原作マンガの実写化映画を日本で撮影したのか? 気になるところですが、2005年時の香港と日本の映画ビジネスの予算規模やら、日本の制作会社とスポンサーが、実写で公道レースなどというどう考えても道交法的に色々ありそうな作品を撮る決断ができなかったから‥‥‥とか色々想像できますが、あくまで筆者の個人的想像は想像です。
 ちなみに本作日本公開時は日本語吹き替え版でされており、何も知らずに見れば知らない俳優が出てる邦画に見えた……かもしれません。


 そんな本作、筆者はとあるイベントで上映されたのをたまたま偶然見たのが最初であり、前から原作マンガやアニメのファンだったわけではありません。
 つまり全くまっさらな状態で見た結果面白かった~‥‥‥となった派なのです。

 では、世間の評価はいかがなものだったのか? というと、中国や台湾などのアジア件ではランキング一位を獲るなど好評であり、トータルの興収は充分大ヒットと言えるものだったものの、日本での評価はほぼほぼスルーだった‥‥‥ような気がします。
 

 なぜそのような結果となったのでしょうか?
 筆者の勝手な推測で言うならば、原作マンガ・およびアニメを既に見ていたか否か?の数が関係している気がします。
 日本では原作ファンが多かったがゆえに評価されず、海外では原作未読勢が多かったが故にまっさらな気持ちで観賞し,楽しめた‥‥‥のかもしれません。
 推測ですけどね!




 筆者もまた、原作未読勢であったが故に本作を楽しめたクチですが、原作を知ってからこの映画を見ると、本作公開時の原作既読組の不満も理解できる気がするのです。

 何故か香港映画である事は無視したとして‥‥‥二時間弱の映画の尺に納める為とはいえ、物語がキリの良いところまでかなり無理矢理に圧縮されている上に、原作のキャラがかなり統合されており、主人公のライバルの兄弟が一人にされてたり、主人公の友人二人も統合されて一人にされた上に、高校中退のドラ息子にされてたりしているのです。
 また、アンソニー・ウォン演じる藤原拓海の父親、文太のキャラが、演者に合わせて飲んだくれのダメオヤジにアレンジされております。
 本作が初見だった筆者は、このアンソニー・ウォンのダメ親父っぷりがお気に入りなんですが、原作ファンに不評でも致し方ないと思えるところです。


(なお筆者個人の最大の不満は、レース中のBGMにアニメ版のようにユーロビートが流れないことである)


 ‥‥‥などなどと、散々ネガティブなことを書いてまいりましたが‥‥‥。
 しかし、それでも、例によって筆者は本作を面白いと思ったのです。
 

 まず、原作の再現性や相違点に目を瞑れば、本作は『頭文字D』入門編として実に丁度いい作品の一つと思うのです。
 また、それほどまでに原作が根幹部分において面白いから本作も面白かったと言ってもいいかもしれません。

 多くの男子なら一度は憧れるレースの世界へ、一人の青年が我知らずうちに鍛えあげられ、鮮烈にデニューし、大迫力のレースで勝利を重ねてゆく‥‥‥という物語は、純粋に魅力的です。
 本作はその魅力の映像化の成功してると思うのです。
 下手に習練に時間を割かず、主人公が最初から速い状態からスタートしているところが素晴らしい。
 主人公の駆る自動車が、スペックでは高級車に劣る車でありながらテクニックでその弱点を覆して勝利し、さらに作中ではその主人公車のパワーアップイベントもこなしてるところも抜かりありません!


 そして本作最大の魅力は、実写をもちいて日本で撮影され、再現された数々の大迫力のレースシーンです。
 トヨタ86にRX7にGTR等の、誰しも名前くらいは聞いたことがあるであろう名車の数々が、原作でなされていたドリフト走法等の妙技を実際に駆使して、峠の山道を猛スピードで下る映像が再現されているのです。
 初期『ワイルドスピード』にも負けない迫力です!
 この撮影は、日本のカースタントチームである高橋レーシングが担当しているそうで、原作で描かれていたレースの技が、実際に可能であったということに驚くしかありません。
 原作マンガのレース描写が絵空事ではない証明が、本作によってなされているのです。
 それこそが本作の最大の魅力なのではないでしょうか!?




 さてここでいつものトリビア。
 
 本作の監督は、元は本コーナーでも紹介した『ワンスアポンアタイム・イン・チャイナ:天地大乱』のツイ・ハーク監督にオファーがされていたが、創作上の相違で現監督と交代したんだそうな。

 高橋涼介役にエディソン・チャンは、あのクリストファー・ノーラン監督の名作中の名作『ダークナイト』にもチョイ役で出演している。
 香港の高層ビルを尋ねたモーガン・フリーマンを出迎える警備員役で。


 ‥‥‥ってなわけで『頭文字[イニシャル]D THE MOVIE』もし未見でしたらオススメですぜ!



 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。





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第二四四回『今もまだメビウスの環の途中‥‥‥“機動戦士ガンダム:逆襲のシャア”』


 タグ:ガンダム SF 宇宙 アクション アニメ ライバル ロボ 戦争 未来 安室 シャア 殺陣 閃光のハサウェイ



 
『機動戦士ガンダム:逆襲のシャア』
1988年公開
監督:富野由悠季
脚本:富野由悠季
音楽:三枝成章
主題歌:TM NETWORK『BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)』
声の出演:古谷徹 池田秀一 弥生みつき 鈴置洋孝 佐々木望 川村万梨阿



 あらすじ

 いつかの未来、宇宙開発に成功した人類が、各国を統一した地球連邦政府の主導の元、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、およそ1世紀‥‥‥。
 地球の周りのラグランジュポイントには、巨大な人工都市スペースコロニーが多数建造され、そこは人類の大半にとっての第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった‥‥‥。

 しかしその生活は、重税に苦しむスペースコロニー市民(スペースノド)と、地球に住まう富裕層(アースノイド)との格差と軋轢を蓄積させることとなった。

 そして時に宇宙世紀0079年、地球から最も遠いスペースコロニー群サイド3がジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んた。

 宇宙船等の小型核融合炉から副次的に発生し、レーダーと通信を阻害する効果を持つ粒子〈ミノフスキー粒子〉を用いた戦術を実行する為、新たに開発された有視界近接戦闘用ヒト型機動兵器〈モビルスーツ〉を用いたこの【一年戦争】とよばれる戦いにより、地球とスペースコロニーに甚大な被害が発生、人類の総人口の半分を死に至らしめた。
 人々はみずからの行為に恐怖した。

 しかし、戦争はそれだけでは終わらなかった‥‥‥。

 地球連邦軍から派生した二大組織、ティターンズとエゥーゴによる武力内紛【グリプス戦役】‥‥‥。
 火星・木星間の小惑星アクシズに撤退したジオン残党ネオ・ジオンによる地球再侵攻作戦【ネオジオン抗争】‥‥。

 そうして繰り返される大小様々な戦いの中で、ニュータイプと呼ばれる、新たな能力に目覚めた人々を生み出しながら、人類がたどり着いた宇宙世紀0093‥‥‥。
 一年戦争時にはジオン軍のエースパイロット【赤い彗星】と呼ばれ、スペースノイドの独立を訴えたジオン・ズム・ダイクンの遺児、キャスバル・レム・ダイクンことシャア・アズナブル(声:池田秀一)が【新生ネオ・ジオン】を名乗り挙兵。
 地球圏に移送されてきた資源小惑星5thルナを占拠し、地球連邦軍本部のあるチベット・ラサに落下させんとする。

 この事態に際し、一年戦争時にひょんなことから最新鋭モビルスーツ【ガンダム】に乗り、以来シャアと幾度となく戦い【連邦の白い悪魔】と呼ばれたパイロット、アムロ・レイ(声:古谷徹)は、戦友たる地球連邦軍独立部隊ロンド・ベルの旗艦ラー・カイラム艦長ブライト・ノア(声:鈴置洋孝)と共に阻止を試みる。
 が、腐敗しきった地球連邦政府と、シャアを庇うスペースノイドからの協力が得られなかった上に、シャアの駆る最新モビルスーツに対して低性能のモビルスーツでしか戦えなかった為、5thルナの地球落下を許してしまう。


 さらなるネオ・ジオンの攻撃が警戒される中、アムロは戦力増強の為、かねてから製造を急がせていた最新鋭のガンダム=νガンダムを月の工廠に受領しに向かう。


 一方、地球ではブライト・ノアの家族が民間シャトルで宇宙へ避難しようとしていたが、地球連邦政府高官のアデナウアー・パラヤと、その十代の娘クエス・パラヤ(声:川村万梨阿)が高官特権で席を奪った為、ブライトの十代の息子であるハサウェイ・ノア(声:佐々木望)だけが宇宙へと上がることとなる。
 こうして運命の出会いを果たす少年と少女の乗ったシャトルであったが、宇宙に出たところで、ロンド・ベルの追跡を躱さんとするネオ・ジオンとの戦闘に巻き込まれてしまう。

 が、そこへ間一髪νガンダムに乗ったアムロが駆けつける。

 辛くも窮地を脱したハサウェイとクエス達はブライトの指揮するラー・カイラムへと収容され、同艦は地球連邦政府高官アデナウアー・パラヤの命により、スペースコロニー・ロンデニオンへと寄港する。

 しかしそれは、アデナウアー・パラヤが地球連邦政府代表として、ネオ・ジオン総帥のシャア・アズナブルと同コロニーで極秘会談を行い、さる条件と引き換えに、ロンド・ベルの頭越しにネオ・ジオンと地球連邦との停戦合意をとりつけるためであった。
 しかしそれは真の目的の為のシャアの欺瞞行為に過ぎなかった‥‥‥。

 はたしてアムロ達は、シャアの真の目的を阻止することができるのであろうか!?
 戦闘の最中に出会った少年と少女、ハサウェイとクェスに待ち受ける運命とは!?







 さて今回は! 恐れおおくも日本アニメ映画史に残る、日本を代表するロボットアニメ・コンテンツの名作『ガンダム』シリーズ初の完全新作劇場版について語りたいと思います!

 それには一応『ガンダム』とはなんぞや? というところから今一度ザックリとを誤解を恐れず語る必要があると思うのですが‥‥‥。
 それは1979年に富野由悠季監督によって作られ放送開始されたTVアニメであり、再放送時に人気が爆発した結果、三作の半再編集劇場版が作られ、1985年に続編のTVアニメ『機動戦士Zガンダム』、翌1986年に『機動戦士ガンダムZZ』、そして1988年に今回語る劇場用アニメ『機動戦士ガンダム:逆襲のシャア』が公開されるに至る大ヒットロボットアニメシリーズであります。

 そして2026年の現在に至るまで、同じ“宇宙世紀”を舞台にした映画とTVアニメに限定した作品だけでなく、宇宙世紀以外の世界を舞台としたオルタナティブと呼ばれるガンダム作品まで、実に多くの『ガンダム』を冠する作品が作られることとなったのであす。


 ちなみに本コーナーで語った‥‥‥。

第一九三回『観客の見たいものをお見せするのが‥‥‥いいや! 俺らが見たい俺らが思う最高のガンダムを喰らえガンダム・ハンマァアアアアア!!“機動戦士Gundam GQuuuuuuX”』
 は、同じ宇宙世紀でありながら違う歴史をたどった世界のガンダムのお話‥‥‥。



 つまり、ここまで語ったところで何が言いたいかというと、『ガンダム』はと~っても沢山あるということ!
 どれくらい沢山かというと、その作品数たるやスタートレックを凌駕するレベルです!
 それは同時に、どの作品から見れば良いのか? 勧めれば良いのか? という問題が生じるということでもあります。
 そりゃ一番最初に作られた『機動戦士ガンダム(通称・ファースト)』勧めれば言いに決まっているのですが‥‥‥それは当然として、二番目にオススメするのが本作『機動戦士ガンダム:逆襲のシャア』なのであります。


 しかしてそれは何故か? と言いますと‥‥‥。
 それはファースト以来初めて作られた完全新作劇場版アニメだから‥‥‥とかの理由はありますが、最大の理由は別にあります。

 そう!
 2026年2月現在、絶賛公開中のガンダムシリーズ劇場用最新作『機動戦士ガンダム:閃光のハサウェイ・キルケーの魔女』を筆者が見たからです!
 めっちゃ面白かった~!! オススメです!
 けれど、当該作品は三部作のニ作目な上に、宇宙世紀が舞台の既存ガンダムを見ていないとサッパリ分らない内容なのです!
 今回語る『機動戦士ガンダム:逆襲のシャア』は、その公開中映画『機動戦士ガンダム:閃光のハサウェイ・キルケーの魔女』を見て楽しむ為に、最小限のガンダム作品の履修で済ませたいと考えた場合に、『機動戦士ガンダム:閃光のハサウェイ』の第一章と共に見るべき映画と思うのです!
 それが今回『機動戦士ガンダム:逆襲のシャア』を選んだ最大の理由なのであります!
 公開中の『機動戦士ガンダム:閃光のハサウェイ・キルケーの魔女』を楽しみたくば、最低でもまず本作を見る必用があるのです!




 ‥‥‥ってなわけで、本作の監督・脚本は富野由悠季。
 1972年の手塚治原作のTVアニメ『海のトリトン』でアニメ監督デビューし、『機動戦士ガンダム』はもちろん『無敵超人ザンボット3』『聖戦士ダンバイン』『伝説巨神イデオン』『戦闘メカ:ザ・ブングル』『OVERMANキングゲイナー』などなど数々のロボットアニメを世に送り出したレジェンドアニメ監督です。
 その作風は、スピードと迫力の効いたアクション映像、情け容赦ない脚本、癖の強いセリフの数々‥‥‥といったところでしょうか。
 また、半々の割合で登場キャラのほとんどが死んじゃう超鬱ENDを描く監督として恐れられております。
 本作では、それらの作風を駆使し、1979年より続いた『ガンダム』の集大成的な作品となっております。


 音楽は三枝成章。
 ガンダムシリーズでは本作の前作・前々作の『Zガンダム』『ガンダムZZ』の劇伴も担当していた日本を代表する音楽家の一人です。
 本作では一度聞いたら忘れられないメインテーマのメロディを、様々にアレンジしたBGMによって、各シーンを盛り上げまくっております。
 本作の魅力の何割かは、この音楽の功績が大きいかもしれません。


 そして声の出演は!

 主人公アムロ・レイ役に『巨人の星』や『聖闘士星矢』で有名な古谷徹。

 その宿命のライバルたるシャア・アズナブル役に、ジェット・リーの吹き替えや『名探偵コナン』の人気キャラ、赤井秀一や、『るろうに剣心』の比古清十郎役などで有名な池田秀一。

 アムロの盟友ブライト・ノア艦長役に、トム・クルーズの吹き替えや『ドラゴンボール』の天津飯や、『るろうに剣心』の斎藤一役で有名な(故)鈴置 洋孝。

 ‥‥‥などなどレジェンド級の声優の方々がわんさかと出演しております。





 そんな本作、公開時はまだ幼かったため劇場で見ることは叶わず、後年ビデオレンタルで見たのが初でした。
 すでにガンプラにはまってたいた年頃だったので、なかなか悔しかった思い出があります。
 そしてようやく本作を見た結果! ‥‥‥

 なんかよく分んないけど‥‥‥なんか面白かった‥‥‥気がする!

 ‥‥‥ってなもんでした。
 幼い頃の自分が見るのは少々難しすぎたんだ‥‥‥と当時は思ったものです。
 ただ戦闘シーンは迫力があったので、面白いにカテゴライズして今まで何度も視聴してきたわけですが‥‥‥問題は、その評価がそれから数十年経った今でも大して変わらないことなのです!
 今も程度は変われどなんかよく分んないけど‥‥‥なんか面白かった‥‥‥みたいな感想なのです。

 で、なにが分らなかったのか? というと、登場キャラの会話の意味や、様々なシーンの存在意味が分からなかったりするのです。
 作中で登場する数々の固有名詞も、特に説明が無いのもあります。
 しかしながら極めておおざっぱには話の筋は追えるという微妙な塩梅なのです。

 筆者のような感想が多かったのかどうかは分りませんが、本作の興収は、製作費に対して充分な売り上げとはいかなかったようです。

 本作が『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダムZZ』の続きに位置しており、その三作を見ていなければ単独で見ても理解が難しいという事情もありましょう。
 つまり楽しむためのハードルが中々に高いのです。

 しかしながら、本作を見た人達の評価自体はたいへん高く、こうして今でも語られ続ける程なのです!
 2026年の今でも、本作の主役メカ・νガンダムの最新技術を盛り込んだ最高額のプラモデルが発売されるくらいです。



 しかしてそれは何故なのか?
 筆者が思うにその理由の一つは、まず本作レベルになると、分らないことさえも面白いに達していたからな気がします。
 本作は確かに分らない部分も多々あるのですが、富野監督の演出によって、シーン毎の緊張感やテンポが巧みに醸し出され、見ていて飽きないのです。
 また、意味の分からない固有名詞を交えた意味のよくわからないセリフの数々も、あくまでキャラがその世界の住人としてその瞬間の感情を口にした結果‥‥‥と思えば、意味が分らずとも理解はできるのです。
 そしてその分らなさが集中力を喚起するのです。

 ‥‥‥いやもうちょっと親切に描きましょうよぉ監督とも思いますけどね!




 そして何と言っても本作で素晴らしいのは、戦闘シーンなのです。
 当時集めうる最高のアニメーションスタッフと、富野監督のキレッキレの演出によって、宇宙戦艦による砲撃戦から巨大ロボット同士の宇宙戦闘が綿密かつ大迫力で描かれているのです。

 今でこそCG技術を用いれば、本作に近い映像を描くことは比較的容易にできるかもしれませんが、ほぼほぼ手描きアニメーションの時代に作られた本作の戦闘シーンは、軽いオーパーツと言えるかもしれません。

 ちなみに筆者が一番好きなのは、やっぱりアムロの乗るνガンダムと、宿敵シャアが乗るモビルスーツ・サザビーとの最終決戦。
 互いが装備している武器をフルに使いつつ、最後にはロボット同士の○○〇合いになるところが、映画史に残るラストバトルだと思うのです。




 それらの魅力によって、本作は今でも評価され続ける作品であり、本コーナーで語るに至ったわけです。
 たしかに、本作は公開時点での『ガンダム』シリーズの集大成であり、いきなり見るとわけが分らない部分もいくらかありますが‥‥‥別に良いのです。
 だってほら‥‥‥『スターウォーズ』だって、世の人はいきなりepisodeⅣから見たけど問題無かったですもんね!!



 さてここでいつものトリビア。

 本作制作には後の『新世紀エヴァンゲリオン』などを世に送り出すアニメスタジオ・ガイナックスも参加しており、『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』の監督となる庵野秀明は、本作主役メカおνガンダムのデザインコンペにも参加している。

 本作のモビルスーツ同士のアクションシーンは、後に『スターウォーズepisodeⅡ:クローンの攻撃』制作時に、ドゥークー伯爵VSヨーダのライトセイバーでの対決シーンの参考(の一つ)にされた。




 ‥‥‥ってなわけで『機動戦士ガンダム:逆襲のシャア』を見て、『機動戦士ガンダム:閃光のハサウェイ』を見た後に、絶賛公開中の『機動戦士ガンダム:閃光のハサウェイ・キルケーの魔女』を見に行くのがオススメですぜ!!