映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。







▼『映画を語れてと言われても』



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第一六七回『夏だ! 嵐だ! パトレイバー!!“機動警察パトレイバー the Movie””』




 タグ:アニメ ロボット 警察 コンピュータウィルス OS 押井守 パトレイバー 公共事業 
『機動警察パトレイバー the Movie』
1989年公開
原案:ゆうきまさみ
原作:ヘッドギア
監督:押井守
脚本:伊藤和典
音楽:川井憲次
メカニックデザイン:出渕裕
キャラクターデザイン:高田明美
声の出演:大林隆介 古川登志夫 冨永みーな 榊原良子 西村知道 千葉茂 坂修 二又一成 郷里大輔 池水通洋 井上遥 



 あらすじ

 
 1995年に首都圏に発生した巨大震災により、異なる歴史をたどった日本‥‥‥。
 日本政府は震災によって生じた大量のた瓦礫と再開発地域を利用し、東京湾横断橋の建設と、その内側の一大干拓公共事業『バビロン・プロジェクト』の推進を決定した。
 
 そしてその実行には、当時ハイパーテクノロジーの急速な発展に伴って実用化された、有人式汎用人型土木作業用機械〈レイバー〉が大量投入された。

 しかしそれは、同時に『レイバー犯罪』と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出した。

 この脅威に対し、警視庁は対レイバー犯罪を目的としたレイバー中隊‥‥‥特殊車両二課を創設し、これに対処した。
 通称〈パトレイバー〉の誕生である。



 そして1999年‥‥‥夏。
 二つある特車二課パトレイバー小隊の内、第一小隊が近々配備予定の最新鋭パトレイバーへの機種転換訓練に海外へと向かってしまったため、残る第二小隊のレイバー・イングラムの操縦担当の泉野明(声:冨永みーな)以下の第二小隊のメンバーは、完全なオーバーワークとなり疲労困憊していた。
 レイバー指揮担当の篠原遊馬(声:古川登志夫)は、そんな中で最近頻発するレイバー暴走事件が、時を同じくして日本中のレイバーに普及した超高性能レイバー操作用オペレーティングソフト〈HOS〉に原因があるのでは? と第二小隊の隊長、後藤喜一(声:大林隆介)に直訴する。
 しかし、開発した篠原の実家の篠原重工や、〈HOS〉発売許可を出した総務省の検査の目を潜り抜け、〈HOS〉に不具合があるとは考えられないと一蹴する。
 だが、レイバーの暴走がソフト開発中に不随意に発生したソフトのバグでは無く、悪意ある何者かが意図して仕組んだコンピュータウィルスによる暴走事件である可能性を示唆する後藤隊長。
 しかも後藤はすでに、〈HOS〉をほぼ個人で開発したという天才プロブラマー帆場暎一が怪しいと睨んでおり、知古の刑事松井(声:西村知道)に、帆場暎一の独自の捜査を要請していた。
『怪しいと分かっているなら、しょっぴいて吐かせれば良いじゃないですか!?』
 と、すでにホシの目星を付けていた後藤に憤る篠原。
 だが、それは不可能であった。
 なぜなら帆場暎一は先日東京湾のど真ん中に建設された、〈バビロンプロジェクト〉用巨大レイバー整備用プラットフォーム〈方舟〉から投身自殺していたからであった。

 後藤は引き続き帆場暎一に関する捜査を松井刑事に依頼しつつ、なにがレイバーを暴走させるトリガーなのかの調査を篠原に命ずる。

 はたして、すでに世を去った帆場暎一の恐るべき企みとは?
 パトレイバー第二小隊は、せまるカタストロフにいかに対処するのか?

 日本と東京の運命やいかに!?









 さて今回は、このクソ熱い夏の真っただ中に見るのに打ってつけ
な、ロボットアニメ史に残る大傑作について語りたいと思います。

 まずこの『機動警察パトレイバー』なる作品について少々説明しておくならば、本コーナーで言えば『トップをねらえ!』や『マクロスプラス:MOVE DITION』などのように、もとは1990年代前後に流行っていOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)という一話30分・全6話程で作られた形式のアニメ作品群の中の1作品であり、そのヒットを受けて作られた劇場版が本作というわけです。



 思えば本作が作られた1989年は、ロボットアニメ華やかりし時期だった気がします。
 今でもそうだ! というご意見もあるでしょうが、1980~90年代はガンダムだけでなく、実にあらゆるロボットアニメが次々と生まれた時代だったと思うのです。
 そんな中で生まれたロボットアニメの一作である『機動警察パトレイバー』は、ロボットアニメ最盛期時代なこともあり大人気を博し、全7話のOVA、劇場版第一作、TVシリーズ、劇場版第二作、第三作、実写版ドラマシリーズ、実写版長編劇場版、そして新作アニメが現在製作中‥‥‥となる程の長寿人気作となったのです。
 原案の漫画家ゆうきまさみによって描かれたマンガ版もまた名作として語り継がれております。
 日本が誇るロボアニメのなかでも屈指の作品数です。
 それは『ガンダム』『エヴァンゲリオン』『マクロス』に続く成功したロボアニメシリーズと言って良いでしょう。


 筆者は幼い頃にこのアニメに出会い、ドハマりし、新作が出る度に追いかけて来たものです。


 その『機動警察パトレイバー』が何故そこまでヒットシリーズになったのか? といえば、それは他のありそうでなかったアイディアと設定の数々にある気がします。

 まず警察が使う正義のロボットが主役‥‥‥というところが、ありそうでなかった秀逸なアイディアです。
 現実社会の〈正義の味方〉たる警察が、ロボットを使って〈正義の味方〉を実行するのですから説得力がありまくりです。
(因みに警察ロボとしての一般市民からの心象を良くしたいという意向が、主役ロボのパトレイバー〈イングラム〉のデザインには考慮されている‥‥‥という作中設定)
 ですがその状況を面白く成立させる為に、『機動警察パトレイバー』では設定に幾つかの工夫が成されています。

 一つは時代設定を、制作時から10年後の1998~1999年にしたことです。
 本文章執筆時の2024年から四半世紀前と考えると恐ろしい話ですが、ここで重要なのは、遠未来の大きく変化した社会が舞台ではなく、我々が生きる時代とそう変らぬ時代と社会のなかで活躍するロボットの話ということです。
 これにより本シリーズを見た人は、日常で見る風景の中にパトレイバーがいる光景を想像せずにはいられなくなるのです。

 もう一つは、パトレイバーという主役ロボが活躍する為に、レイバーという汎用ロボットが社会に浸透している世界設定にしたことです。
 どうすればこの世界で主役ロボを活躍させられるのか? ではなく、主役ロボを活躍させられる世界の方を設定したのです。
 そういう世界の状況なんだから、そういう警察ロボがいても仕方が無いのです!

 最後は、ロボのサイズを全高7m前後という、他にあまり例を見ないサイズにしたことです。
 ちなみにガンダムだと18m。
 この絶妙なサイズにより、都内の道路を専用トランスポーターに乗せて移送させることができ、またそれなりの迫力がある絵面を作れるのです。




 しかし、この『機動警察パトレイバー』が受けた最大の理由は、実は巨大な警察ロボの活躍そのものではなく、それを運用する組織としての警察を描いたことにあると思います。
 ・‥‥というか、『機動警察パトレイバー』というシリーズは、主役ロボたるパトレイバー〈イングラム〉が活躍する割合が、作品全体の2~3割くらいしか無く、OVAやTVシリーズではまったく動かない回も珍しくありません。
 では何を描いてこのシリーズは受けたのか? というと、巧みかつヘソ曲がりで自由奔放なシナリオで、個性豊かな特車二課第二小隊の面々が、時に格好よく、時に無様に情けなく、警察組織の悲喜こもごもやブラック職場っぷりや理不尽っぷりを体験する姿がウケた‥‥‥部分が多々あるような気がします。
 もちろんレイバー犯罪を行う犯罪者との大捕り物話もありますが、それは一部でしか無いのです。
 しかしそここそが本シリーズがウケた理由の一つな気がします。

 なにしろ本作の大ファンだった本広克行監督によって、映画化もされた大ヒットドラマ『踊る大走査線』の、元ネタの一つとなった程。







 そんな『機動警察パトレイバー』を生み出した面々は、前述したように、マンガ版『機動警察パトレイバー』や『鉄腕バーディー』『究極超人あーる』等の作品で知られる漫画家のゆうきまさみが、まずOVA化前提で大本となる原案を考えたのだそうです。

 そこにパトレイバーのデザインを考えるメカニックデザイナーとして、本コーナーで言えば『宇宙戦艦ヤマト2199:星巡る方舟』の監督を務めた出渕裕が加わり‥‥‥。

 キャラデザイナーとしてアニメ版『うる星やつら』『きまぐれオレンジ☆ロード』『めぞん一刻』等で活躍する高田明美が‥‥‥。

 脚本として、本コーナーで言えば平成『ガメラ』三部作や『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で活躍する伊藤和典が‥‥‥参加し、企画を固めてゆき‥‥‥。

 最後に本コーナーで言えば『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を監督した押井守が監督として加わり‥‥‥。


 この五人が原作となって〈ヘッドギア〉を名乗り‥‥‥。

 さらに音楽として本コーナーで言えば『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』他、最近で言えば『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の他数え切れないほどのアニメ・映画音楽を担当した川井憲次が担当し‥‥‥。

 これらの根幹スタッフにより『機動警察パトレイバー』というアニメは世に出ることとなり、ヒットすることとなったわけです。

 う~ん分かる人には分かるドリームチームっぷりです。
 当時のアニメ業界のアベンジャーズかジャスティスリーグのようです。

 また声の出演の方々も超豪華!

 『機動警察パトレイバー』というアニメがヒットしたのは、集結したスタッフ・キャストの段階で必然だったのかもしれません。






 ‥‥‥と、ここまでが『機動警察パトレイバー』というシリーズそのものの魅力、あるいは最初に作られたOVAシリーズの魅力です。
 本作『機動警察パトレイバー the Movie』は、最初に作られた6話のOVAの好評を受け制作され、結果大ヒットし、後世にまで伝えられる程の評価を国内外から得ることになるわけですが‥‥‥それは何故だったのでしょうか?


 それは例によって、映像・脚本・キャスト陣の熱演・メカデザ・キャラデザ・川井憲次の奏でる音楽などなどの、全てのパラメータが極めてハイレベルであったから‥‥‥と言ってしまえばそれまでなのですが‥‥‥。


 今回はあくまで筆者の個人的好みにより、『機動警察パトレイバー the Movie』の素晴らしくよくできた脚本にフォーカスして語りたいと思います。


 本作は上映時間100分の物語の中で、見事に『機動警察パトレイバー』らしさとアクション、エンタメ性、テーマ性、オリジナリティや先見性がギュっと詰まっている映画の教科書に乗せたくなるような見事な脚本なのです。

 そもそもレイバー犯罪と戦うロボ警察という『機動警察パトレイバー』という作品の根幹設定が、エンタメとしての物語として描くには、なかなかに面倒くさい部分があります。
 主人公達である特車二課第二小隊は、あくまで“発生した”レイバー犯罪にパトレイバーで対処するチームであり、そのレイバー犯罪が如何にして発生したのか? 犯人のバックボーンなどの捜査は行いません。
 酔っ払い運転手がレイバーに乗って暴れるレベルのレイバー犯罪ならばともかく、巨大な陰謀が絡むようなレイバー犯罪の場合、本来の設定でいけば、暴れるレイバーをパトレイバーで制圧する以外の出番はないことになってしまうのです。

 これがただのヒーローモノならば捜査も解決も主人公勢が行えば良いのですが、なにしろ『機動警察パトレイバー』は警察のお話なので好き勝手にはできないのです。


 しかしながら『機動警察パトレイバー』では、元切れ者の刑事だった後藤喜一が隊長を務めていることで、いち早くレイバー絡みの陰謀や犯罪の嗅ぎつけ、捜査課の刑事が動き来だすよりも前に、知古の刑事の松井をアゴで使って情報を掴んで対処する‥‥‥というなかなか掟破りな手段で、物語前半での捜査パートを埋めているのです。
 ちなみに筆者がイチオシなキャラも、この後藤隊長です。
 正に昼行燈なキャラをしていながら、いざ大事件が起きると大活躍するカッコイイおじさんなのです。
 そんな彼が、すでに投身自殺済みという前代未聞の犯人・帆場暎一の人となりを残された情報の数々からプロファイリングし、その目的を推測してゆく件は、本作の魅力の一つと言えるでしょう。
 絶対上司にも部下にもいて欲しくはないおじさんですけどね!




 さらに本作の凄い所は、まだスマホどころかインターネットもロクに整備されていない時代‥‥‥、ようやくでっかい携帯電話が販売されたくらいの時代に制作されたアニメにも関わらず、コンピュータウィルスを用いた凶悪犯罪について描いたことです。
 その先見性は予知能力の域に達してると言っても過言では無いかもしれません。
 さらにそのコンピュータウィルスが、架空の存在であるレイバーを暴走させることで、パトレイバーでなければ対処できない実に劇場版らしい巨大な騒動へと繋がってゆくところが上手いと思うのです。
 本作作中の事件の犯人たる帆場暎一が、このコンピュータウィルスを都内のレイバーに感染させることで目指す最終目的が判明するシーンは、実に名シーンなのです!
 筆者が本作をなぜ2024年7月と言う夏の時期に語ろうかとしたのか? の理由がそこにあるのです。


 そして本作の脚本で一番筆者が気に入っている部分は、この都内に配備された無数のレイバーに、暴走を促す凶悪なコンピュータウィルスが仕掛けられるという事件に対し、本作は実にパトレイバーらしく、なおかつパトレイバーで無ければ実行できない豪快な手段で対抗するところです。
 ゆえに本作は紛れも無く『機動警察パトレイバー』なのです!

 はたして、本作における犯人の陰謀に対し、主人公達は如何な方法で対抗したのか? 本作未見の方はどうかその目でご確認下さい!!






 さてここでいつものトリビア。
 1980年代の末に制作されたこの『機動警察パトレイバー』では、もうとっくの昔に去った過去ですが、制作時から見て10年後の未来を描いているわけですが、その結果、本作の1999年ではまだバブル期が続いていた‥‥‥という設定で日本社会のビジュアルは描かれてるそうですよ!
 首都圏で大震災があったのにタフな日本人だ!



 ‥‥‥ってなわけで『機動警察パトレイバー the Movie』もし未見でしたらオススメですぜ!


 

 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第一六六回『大変だ! 極寒の海で巨大タンカー真っ二つ!“ザ・ブリザード”』




 

 タグ:海難事故 タンカー 救助船 実話 極寒 クリス・パイン 船乗り 1950年代 アメリカ 沿岸警備隊

『ザ・ブリザード』

2016年公開

監督:クレイグ・ギレスピー

音楽:カーター・バーウェル

出演:クリス・パイン ケイシー・アフレック ベン・フォスター

ジョン・オーティス エリック・バナ他

 

 

 

 あらすじ

 時に1952年の冬‥‥‥2月‥‥‥。

 アメリカの東沿岸部で、荒天に見舞われた巨大タンカー〈ペンドルトン号〉が、荒波の中の老朽化した船体での無理な航行がたたり、ついに船体中央で真っ二つに破断し、船首部分は乗っていた船長以下のクルーごと沈没してしまう。

 だが残った船尾側半分の船体は浮力を保っており、のっていたクルーと共に辛うじて浮き続けていたが、沈没は時間の問題であった。

 

 その船尾側半分にいた30数名の生存者の中で、最も階級の高かかった機関長のシーバート(演:ケイシー・アフレック)は、他の生存者達が脱出ボートで船から避難を試みるのを引き止め、残った〈ペンドルトン〉号の船尾船体に留まり救助を待つべきだと主張する。

 荒れ狂う海に脱出ボートを下ろしても、瞬く間に転覆するか〈ペンドルトン〉号の船体に叩きつけられ粉々になるからだ。

 荒天で無線通信が通じない中、シーバートはひたすら船の汽笛を鳴らし続け、大陸沿岸に救援を求めようとする。

 



 

 しかして、その汽笛は目論見通り沿岸部に住まう住民によって聞き届けられ、その通報により直ちに沿岸警備隊チャタム支局からの緊急出動が決定される。

 しかし、同日は荒天により他のタンカーも遭難しており、最寄りの沿岸警備隊から出せる救助船は一隻だけであった。

 しかも〈ペンドルトン〉号へ向かう為の最短ルートには、海底の砂州により荒天時は凄まじい大波の発生する難所が待ち受けていた。

 かつてその難所の通過に失敗したことで救助に迎えなかった沿岸警備隊隊員のバーニー・ウェバー(演・クリス・パイン)は、今回の〈ペンドルトン〉号救出出動に志願、同行員としてリチャード、アンディ、アーヴィンの計四人で定員12人の小型木製救助艇に乗り出動する。

 

 一方、〈ペンドルトン〉号船尾船体では、残る生存者達を説得し、シーバートが奇想天外な方法で沈没までの時間稼ぎを試みようとしていた。

 

 はたしてシーバート達の目論見は成功し、バーニー達の乗る小型救助艇は〈ペンドルトン〉号までたどり着き、生存者達を無事救出することができるのであろうか!?

 彼らの運命やいかに!!?

 

 

 

 

 時に本文章執筆時の2024年7月上旬‥‥‥、例年言っていることかもしれませんが今年もクソ暑うございます。

 7月なのだから当たり前っちゃ当たり前なのですが、この暑さは梅雨をすっ飛ばしてフルスロットル過ぎです。

 本コーナーをご覧の皆さまは、どうか体調にお気をつけ下さい。

 今回は、そんあクソ暑い中で少しでも涼をとるのに打ってつけの映画を紹介したいと思います。

 その名も『ザ・ブリザード』!!

 見るタイミング次第では、涼むを通りこして凍り付いてしまいそうなさぶ~いお話なのです!!

 

 

 

 監督はクレイグ・ギレスピーという人。

 ライアン・ゴズリングが突然人形の彼女を家族友人知人に紹介しだしてリアクションに困る映画『ラースと、その彼女』や、『101』の前日譚にしてスピンオフ『クルエラ』の監督したお人。

 次回作品はスーパーマンの従妹の『スーパーガール』の新作だそうです。

 うむ! 決して悪くないフィルモグラフィですが、リアクションに困る‥‥‥。

 とりあえず人間ドラマもスペクタクルなVFX映像も、両方撮れる監督なようです。

 

 

 

 主演は、アメリカ沿岸警備隊隊員のバーニー役にクリス・パイン。

 我らがリブート版『スタートレック』でのエンタープライズ艦長・ウィリアム・T・カークを演じて有名な他、本コーナーでも紹介した『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』やDCヒーロー映画『ワンダーウーマン』の出演で有名な、イケメン・ハンサムなハリウッド・スターが一人です。

 本作では寡黙で真面目な沿岸警備隊隊員を静々と演じております。

 

 

 

 そしてもう一人の主役、〈ペンドルトン号〉機関長のシーバートを演じるのはケイシー・アフレック。

 本コーナーでいえばクリストファー・ノーラン監督作『インターステラー』で、主人公の大人になった息子を演じています。

 恐ろしく圧の無いナヨっとした風体の俳優さんですが『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー賞主演男優賞を撮ったりするほどの演技派俳優です。

 ちなみに俳優で映画監督のベン・アフレックの弟さんでもあります。

 本作では人間味が無いレベルで沈着冷静な機関長役を淡々と演じているのですが、それがまたカッコイイのです。

 

 

 

 その他、バーニーと共に小型救助艇に乗る沿岸警備隊員のリチャード役にベン・フォスター。

 本コーナーでいえば激コワSFホラー映画『パンドラム』で主演してた人。

 

 

 バーニーが所属しているアメリカ沿岸警備隊チャタム支局の基地司令にエリック・バナ。

 本コーナーでいえばブラッド・ピット主演の神話史劇『トロイ』のヘクトル役や、MCU映画が始まる前に作られたアン・リー版の『ハルク』のブルース・バナーや、『ブラックホークダウン』のフート軍曹役で有名なお方。

 

 

 さらに〈ペンドルトン号〉の生存者の船乗り中には、目撃者は全部殺す殺し屋役や、ERの受け付けやら、『アウトロー』のチンピラやら、どこかの映画やドラマで見かけた個性派俳優がけっこういます。

 


 

 総じて本作のキャストは、筆者的には通好みなれど今一つ華に欠けるような印象を受けますが、それは実は仕方のない事情があるのです。

 

 

 だって本作は、海難救助の中でも伝説と言われる〈ペンドルトン号の救出劇〉を描いた、いわゆるベースド・オン・トゥルーストーリー(実話に基づいた物語)なタイプの映画なのですから!

 なんと! あらすじに書いた物語は(多分ほとんど)実際にあった出来事なのです!

 ゆえに出演者や演じるキャラクターは、実際にあの場で活躍していた人々のビジュアルや人柄準拠でキャスティングされ、演じられているのです!!

 

 

 

 

 




 

 

 

 ベースド・オン・トゥルーストーリー(実話に基づいた物語)なタイプの映画といえば、本コーナーで言えば‥‥‥どのレベルで実話通りなのか不明な『ダンボドロップ大作戦』なんかがそうなのですが‥‥‥。

 他に『ハドソン川の奇跡』や『オンリー・ザ・ブレイブ』『ブラックホークダウン』『レヴェナント:蘇りしもの』『127時間』『グレイテスト・ショーマン』『ディア・ファミリー』やら数々の大河ドラマに時代劇と、あげたらキリが無い程多々あり、また名作も多くあります。

 

 なぜそのような作品が多々作られ続けたのか? といえば、それは説得力の有無や、後世への歴史的出来事の伝達の意義……などがあるでしょう。

 でもなんやかんやあって一番の理由は、色々ひっくるめて手堅く需要があるからだと思います。

 フィクションだと言われてら見向きもしないドラマでも、実話と言われたら俄然興味が出てきたりしますもんね!

 

 ましてや、本作は映像作品の実話題材として打ってつけです。

 だってメチャクチャ映像栄えする事件ですらね!

 映画化しようという人達がいるのも頷ける話であり、結果として本作は生まれることとなったのです。

 

 

 

 そして割と豪華なキャストが結集されたのと同様に、中々の大予算を投じ、2016年の当時最先端のVFX技術をもちいて映像化された〈ペンドルトン号の救出劇〉は、実に大迫力となったのです。

 本作の魅力はまさに、克明に映像化された〈ペンドルトン号の救出劇〉と言えるでしょう。

 

 実際、本作の真二つになった巨大タンカーの映像と、大波荒れ狂う海の難所を乗り越える沿岸警備隊の小型救助艇のシーンは圧巻です。

 大波を潜る小型救助艇はもうちょっとした潜水艇状態になったりもしております。

 もちろんVFX技術も駆使したのでしょうが、タンカーの巨大セットやまるまる作った小型救助艇セットに、大量に水をぶっかけて表現された荒波の中の映像は、見てるだけで凍えながら溺れそうです。

 ってか役者さん達ちょ~大変そうです。

 まさに2010年代の映像技術だから実現できた映像!

 それだけで本作は見る価値があると言えるでしょう。

 

 



 

 さらに本作のもう一つの魅力は、マジでやったのか!? と言いたくなるような生存者救出までの小型救助艇と〈ペンドルトン号〉船尾側船体の生存者達の行動です!

 どこまで実際にあった出来事で、どこまでが映画の際にアレンジされた出来事なのかは分かりませんが‥‥‥それでも小型救助艇が難所の大波を超えたことと、真っ二つになったタンカーの後ろ半分だけが浮き続け、そこにいた生存者が救助されたことは事実でしょう。

 

 なかでも、船尾側半分となった〈ペンドルトン号〉での機関長シーバートの活躍が筆者は気に入っているのです。

 前述したように、演じるケイシー・アフレックは、海の男にしては物静かで圧のない人物です。

 そんな彼が、この未曽有の窮地に際し、残り半分となった船体に残された選択肢のみで、少しでも生存者の生還の可能性をあげるべく考え出した奇想天外な手段が熱いのです。

 その手段とずばり、船尾船体に残ったエンジンで〈ペンドルトン号〉後ろ半分を航行させ、浅瀬に意図的に座礁させることで、沈没までの時間を稼ぎ、その間に救助を待つというものです。

 はたして後ろ半分の船だけでそんなことが可能なのか? いかにしてそれを実行したのかは、本作未見の方はどうかその目でご確認下さい。

 

 



 

 

 さて、ここでいつものトリビア。

 当時のアメリカ沿岸警備隊のモットーは『出動はしなければならない、だけど帰ってこなければならないというわけではない』だったんですって! ‥‥‥う~ん時代ですね!!

 

 

 

 ってなわけで酷暑の中、『ザ・ブリザード』もし未見でしたらオススメですぜ!!

 



 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。







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第一六五回『俺は“コンスタンティン”‥‥‥ジョン・コンスタンティンだクソったれ!』




『コンスタンティン』

2005年公開
監督:フランシス・ローレンス監督
原作:ジェイミー・デラノ ガース・エニス
出演:キアヌ・リーブス レイチェル・ワイズ ティルダ・スィントン シャイア・ラブーフ ジャイモン・フンスゥ プルイット・テイラー・ヴィンス ピーター・ストーメア他



 あらすじ

 ‥‥‥この世には‥‥‥天国より来たる天使と、地獄より来たる悪魔が、ハーフブリードと呼ばれる人間の姿で活動し、人間を影ながら支援し、あるいは操ることで、いわゆる代理戦争がおこなわれていた‥‥‥。


 アメリカ・ロサンゼルス‥‥‥。
 悪魔祓い志望の助手のタクシー運転手チャズ(演:シャイア・ラブーフ)を足代わりにして、悪魔祓いを生業としているジョン・コンスタンティン(演・キアヌ・リーヴス)は、同業者のヘネシー神父(演:プルイット・テイラー・ヴィンス)の頼みで、ある移民一家の少女に憑りついた悪魔を払った案件から、地獄で何かしらの異変を生じていることを察知する。
 その一方で、体調不良から医師の診断を受けたところ、末期の肺がんであり、余命幾ばくもないことを宣告されてしまう。

 この事態にコンスタンティンは、天国から人の姿で地上に来ていた知古の天使ガブリエル(演:ティルダ・スィントン)の元を尋ねて助けを請うが、コンスタンティンの過去の数々の所業による因果応報だと、ガブリエルにすげなく断られてしまう。
 自殺未遂経験があるため天国には行けず、死ねば散々自分が払ってきた悪魔達が待つ地獄行き待っていることに憤るコンスタンティン。


 その少し前、ロス市警の刑事アンジェラ(演:レイチェル・ワイズ)は、精神病院に入院していた双子の妹イザベルが、飛び降り自殺したとの報に衝撃を受ける。
 なぜなら妹は敬虔なクリスチャンであり、自殺すれば地獄行きとなるのに自死を選ぶとは思えなかったからだ。
 アンジェラは自殺直前の妹をとらえた病院の監視カメラ映像から、彼女が最後に『コンスタンティン』と呟いていることを発見し、悪魔祓いのジョン・コンスタンティンに行きつき、彼とイザベルの自殺に関係があると睨み彼を尋ねる。



 かくして、迫る死の運命に憤るコンスタンティンの元に現れたアンジェラ。
 そんな彼女に、今それどころではないコンスタンティンは知ったこっちゃないと一時は突き放すが、アンジェラが〈タロン〉と呼ばれる悪魔に狙われていることに気づいたコンスタンティンは、悪魔祓いの技術これを撃退しアンジェラの話を信じる。
 そしてイザベルの死の真相をしるべく、悪魔祓いの術を使い、自殺の罪で地獄に落ちた彼女に会いに行ったコンスタンティンは、確かに彼女が自ら命を絶ったことを確認すると同時に、イザベルが手首に巻いていた入院患者用タグを持ち帰ることで、アンジェラの信用を得る‥‥‥と同時に、イザベルの死が先刻の移民一家の悪魔祓いで感じた異常と関係があると睨む。
 

 それに並行し、コンスタンティンの頼みでイザベルの遺体を調べていたヘネシー神父が不可解な死をとげる。
 コンスタンティンとアンジェラは、ヘネシーの死が悪魔の仕業であり、彼の残したダイイングメッセージから、「コリント書17章1節」というワードに行きつく。
 本来の聖書にはコリント書に17章は存在しないが、地獄の聖書のコリント書には17章以降が存在し、それによれば、悪魔の王ルシファーの息子マモンが、地獄よりこの世界に現れようとしているらしかった。
 もちろんそれが実現すれば人類の世界は地獄と化してしまう。


 はたしてコンスタンティンとアンジェラは、この悪魔の企みを阻止することが出来るのであろうか?
 







 さて今回は、みんな大好きキアヌ・リーヴス主演でお送りする、天使と悪魔のロクでもない争いに、ロクでもない手段で対抗するロクでもない男を描いた、DCコミックス原作のオカルト・ハードボイルド映画について語りたいと思います。

 


 監督はフランシス・ローレンスというお人。
 吸血鬼モドキに変異するウィルスが蔓延した世界で、ただ一人生き残ったウィル・スミスが奮闘する映画『アイアムレジェンド』や、各地区より選出された十代の若者が、殺し合いゲームい強制参加させられる『ハンガーゲーム』シリーズの監督で有名なお方です。
 その監督としての特色は、VFXを駆使して描かれたダークな世界を映像で表現し、そこで東奔西走するキャラのドラマをドッシリと描くところ(筆者調べ)。
 本作でも、天使と悪魔、天国と地獄、そして人間界の様子をVFX技術などの映像テクニックで見事に映像化しつつ、超クセつよなコンスタンティンをはじめとするキャラ達のドラマを見事に描いております。


 で、原作は前述したように『バットマン』や『スーパーマン』などを出版したDCコミックスから刊行されていた『ヘルブレイザー』というタイトルのアメコミです。
 つまり本作は、バットマンやスーパーマンなど肩を並べるオカルト界でのアメコミヒーローなのです。
 なお原作ではブロンドで刑事コロンボ的なトレンチコートがトレードマークなコンスタンティンですが、本作ではキアヌ・リーヴスのビジュアルに合わせてアレンジされております。
 後年になってこの原作準拠版の『コンスタンティン』が、実写アメコミヒーローブームの波にのって実写ドラマ化され、一部のDCユニバースのアメコミヒーローとクロスオーバーして共闘したりしてます。




 で、主演はご存知キアヌ・リーヴス。
 本コーナーでいえば『マトリックス』や『ジョン・ウィック』の主演をした他、『スピード』や『ビルとテッド』シリーズで有名なTheハリウッド・スターの一人です。
 本作では性格の捻くれたずる賢い悪魔祓いを、太々しく演じております。




 共演は、死んだ双子の妹の真相を究明すべく、コンスタンティンと手を組む刑事アンジェラ役にレイチェル・ワイズ。
 20世紀初頭を舞台に、エジプトで蘇ったミイラ〈イムホテップ〉の大騒動を描いた『ハムナプトラ』シリーズや、第二次大戦中の独ソ戦で行われた狙撃兵の戦いを描いた『スターリングラード』のヒロイン等で有名な女優さんです。



 地上に降りてきているハーフブリードの天使ガブリエル役にはティルダ・スィントン。
 イギリスの名家出身の年齢不詳の美魔女女優です。
 色んな映画に出まくっていますが、『ドクター・ストレンジ』でのエンシェント・ワン役なんかが筆者的には印象深いお方。
 ともかく浮世離れした雰囲気の女優さんで、人ならざる天使役にピッタリです。



 さらにコンスタンティンが便利にこき使う助手のチャズ役にシャイア・ラブーフ。
 本コーナーで言えば『トランスフォーマー』で主演した他、『アイ・ロボット』でも主人公に絡むチャラい若者を演じた子役出身俳優です。
 本作での意外な活躍で、彼のキャラが好きになった人も多いと思います。


 またコンスタンティンと同業者のヘネシー神父役に、先日本コーナーで紹介した『海の上のピアニスト』で好演したプルイット・テイラー・ヴィンス。
 本作でもコンスタンティンを絶妙にアシストする良いキャラを好演しております。


 そんなコンスタンティンが通う、天使と悪魔との中立地帯になっているクラブのオーナー、パパ・ミッドナイト役にジャイモン・フンスー。
 本コーナーで言えば、MCU映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で出演した他、『アミスタッド』『ザ・グリード』『グラディエーター』『ブラッド・ダイヤモンド』『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』『キングスマン:ファースト・エージェント』
などなど、ここ30年のあらゆる大作・話題作に出演している名脇役俳優です。


 そして忘れちゃならない本作の黒ラスボス(?)的ポジションの元天使な悪魔の親分ルシファー役にピーター・ストーメア。
 ブルース・ウィリス主演マイケル・ベイ監督の隕石落下デザスター映画『アルマゲドン』でのロシア人宇宙飛行士や、『ジョン・ウィック2』の冒頭で、バカな甥っ子のせいで組織を半壊させられるロシアンマフィアのボス役の他、人気刑務所脱獄ドラマ『プリズン・ブレイク』での人気キャラ、ジョン・アブルッチ役などが有名な性格俳優です。
 本作では最後に一番オイシイとこを持って行きます。


 あと隠しキャラとして、トム・クルーズ主演『ミッションインポッシブル』シリーズで、一時期主人公の妻役だったブリジット・モナハンが出てます。

 ‥‥‥ってなわけで本作のキャスト、分かる人にはと~っても曲者揃い。
 まぁ天使役と悪魔役が混ざってるんで、当然っちゃ当然なんですけどね!



 そんなスタッフ・キャストでお送りする本作は、世間では特大ヒットというよりは、そこそこヒットはヒットしましたが、大いに儲かったとは言えない売り上げの様子。
 しかし、本作はいわゆるカルト的な人気作として、キアヌ・リーヴス主演作品の代表作の一つとして、『マトリックス』や『ジョン・ウィック』と並んで数え上げられる作品なのです。


 ‥‥‥例によってその『コンスタンティン』の魅力を、筆者なりにあげるならば、それは三つ。


 まず一つめは独特の世界観です。
 あらすじ冒頭に説明したように、本作の世界では、天使と悪魔が人間を使って代理戦争をしているという設定です。
 この時点ですでにロクでもない世界観ですが、他人事として見る分には興味深い世界です。 

 この映画では、天国と地獄の両陣営からやってきた天使と悪魔が、人間に囁いたり誘惑したりして、善行あるいは悪行をはたらかせ、世界の善と悪のバラスを傾けようとしているそうです。
 その人間界に降りて活動しているハーフブリードと呼ばれる天使と悪魔は、霊感ある人にしか人間と見分けがつかないので、普通の人々は天使と悪魔の戦争に気づかないまま生きてるわけです。
 そして悪魔側は、悪魔なだけに時々ルールを破って人間界で悪さをするため、そいつらを退治すべく、霊感をもった人間が悪魔祓いをして追っ払っている‥‥‥という世界観なのです。
 それを上手いこと映像化しているところが、この映画の魅力の一つではないでしょうか。

 ついでい言えば、キリスト教的な世界観なので、悪魔の親分がルシファーで天使がガブリエルだったり、自殺した人間は地獄行きといったルールがあります。
 そして聖書にある黙示録的終末を阻止するのが本作のタスクとなるわけです。
 う~ん筆者がこれまでやってきたアレもコレも‥‥‥全部悪魔の仕業だったんだな!




 二つ目は、魅力的な悪魔祓いアイテムの数々です。
 悪魔祓いの人間は、霊感があったり多少の魔法めいたことが出来るものの、基本的なフィジカルは人間なので、人ならざる悪魔には腕っぷしでは対抗できません。
 そこで数々の悪魔祓いアイテムを駆使する分けですが、本作はそれらがユニークで良いのです。
 いかにも悪魔に効果ありそうな十字架や聖水なんかは序の口で、〈ドラゴンの息〉なる謎の火炎放射器や、〈悪魔の棲む家のキ~キ~虫〉という悪魔が嫌いな鳴き声を出す虫の入った小箱、死刑執行に使われた電気椅子を利用した悪魔探知装置。
 そしてなんといっても聖なる十字架を鋳溶かして作った聖なるメリケンサック! 様々な聖遺物を組み上げると完成する聖なるショットガン!
 もう『聖なる‥‥‥』と付けとけば何でも許されるだろうと思ってそうです!
 バットマンの〈バット○○〇〉みたいなノリを感じないこともありません。
 しかしこの〈聖なる○○〉で悪い悪魔どもをぶっ飛ばす武闘派悪魔払いっぷりが清々しいのです。




 そして三つ目の理由は‥‥‥。
 ズバリ、キアヌ演じるコンスタンティンというキャラそのものの魅力ではないでしょうか?
 
 今回キアヌ・リーヴスが演じるジョン・コンスタンティンは、たまたま霊感を持って生まれたが為に見えなくて良いものが見え、それが原因で自殺未遂した結果、ますます高まった霊感で天使と悪魔の人間を使った代理戦争を知ってしまった上に、自殺未遂したがために、将来死んだ後で地獄行きが決定してしまったという大変運の無い人。
 なんとか地獄行きを避け、天国に行く為の点数稼ぎとして悪魔祓いという善行を行っているという‥‥‥なんというか凄く利己的な人です。
 ですがそこが筆者は気に入っているのです。
 世の中、正義の為と言いながら人に迷惑をかける人と、自分の為と言いながら人の助けとなる行いをする人がいたならば、後者の方が百倍マシですからね。
 コンスタンティンの場合、単にツンデレ的に自分の為に悪魔祓いしてると言いそうですが‥‥‥。

 そしてそんなコンスタンティンの悪魔との立ち向かい方が良いのです。
 基本霊感があるだけのコンスタンティンは、前述した数々の悪魔祓いアイテムを駆使するわけですが、武器はそれだけではありません。

 コンスタンティンには、人間ながらにして悪魔と渡り合えるだけの武器がまだあります。
 それは〈経験値〉と〈ずる賢さ〉です。

 本作が良い映画と言えるのは、その〈経験値〉と〈ずる賢さ〉で巨悪と立ち向かう別ジャンルの映画を踏襲しているからな気がします。
 そのジャンルとは、いわゆる『ハードボイルド』系作品です。

(※ここで本コーナーで紹介してきた映画から『ハードボイルド』に該当する作品をあげたいところですが‥‥‥嗚呼『ビッグ・リボウスキ』しか無い!)

 ここで言う『ハードボイルド』系作品とは、筆者なりに言うならば、それは時代において行かれ気味の私立探偵が、運の悪さと過去のしがらみから巨大な陰謀に巻き込まれてしまう系の作品です。
 そういった作品で主人公の武器となるのもまた〈経験値〉と〈ずる賢さ〉であり、本作はその『ハードボイルド』系作品を天使と悪魔の代理戦争のただ中のオカルト作品として描いたところが魅力と思うのです。

 そしてキアヌ・リーヴス演じるコンスタンティンの〈経験値〉と〈ずる賢さ〉は、時に人ならざる天使や悪魔を出し抜くレベルであり、それが痛快なのです。

 はたしてコンスタンティンはいかにして、人間界を悪魔の企みから守るのでしょうか?
 本作未見の方はどうかその目でご確認下さい!!




 さてここでいつものトリビア。
 本作では撮影こそされたものの、編集段階で登場シーンをまるっと削除されてしまったキャラがいます。
 そのキャラこそが、前述したブリジット・モナハン演じるコンスタンティンのハーフブリードの(夜の)友人です。
 編集段階でガン宣告されたコンスタンティンが、彼女と逢瀬を楽しんでいるのは緊張感を削ぐということでカットされてしまったそうです。
 ‥‥‥ですが映画内で彼女が映ったカットが一か所だけ残っています。
 クライマックスで、ある事情でふりそそぐスプリンクラーを最初に浴びるキャラとして、その姿をアップで見ることができますよ。
 

 ‥‥‥ってなわけで『コンスタンティン』もし未見でしたらオススメですぜ!