「愛縛清浄句是菩薩位」
異性を抱いて離れがたいと思うのは自然ですという意味だ。
恋に無落ちた恋人同士は、お互いを「お前だけだ」と
独占しようとする。心はその人に執着(ウパティ)する
わけだ。最初のうちはいい。だが悲しい男女の性(さか)で
、ここから煩悩((キレーサ)が生まれ、ライバルの存在は
怒り(コーダ)、恨み(ヴェーラ)、憎悪(トーサ)、
あるいは殺意が生まれる原因になる。
たいていの場合、男にとってのセックスは、自分を受け入れて
もらう為の儀式であり、征服欲と独占欲と性欲を満足させる、
恋愛や結婚のゴールとなる。しかし性欲と愛が分離している
場合が多いので、何か性的な誘惑があると、ついつい恋人の
事は別れて、他の女ともセックスしてしまいがちな生き物
なのだ。
ところが、女性にとってのセックスは違う。相手の男と末永く
深く関わっていたいからセックスするのだ。１回だけなどと
いう事はあり得ない。セックスはあくまでも心の絆を深める
為の手段なので、心の絆さえ感じられればセックスがなくても
精神的悦びを見出せる。
ただしたいていの女性の性的幻想は「一人集注」なので、
独占欲も嫉妬も深く激しい。
「黒髪の 千すじの髪の みだれ神 かつおもひみだれ
おもひみだるる」
とは、女心を詠う女流歌人・与謝野晶子。恋に落ちると
いうのは、ある時気づいてみたらその人のことだけが自分の
心を占拠して、その人の一挙一動に悲喜こもごもの状態に
陥る状態を言う。意識して努力してその人を好きになろうと
いう意志は通用しない。
だがその対象者が親子兄弟姉妹の場合は近親相姦として、
人類共通のタブーだし、社会的既婚者の場合は不倫。古くは
不義密通とか姦通という禁止行為。今ではあまりないかもしれ
ないが、身分差という場合もある。こういう恋に悩む人は、
罪深い自分を呪いつつ、神に救いを求めるのかもしれない。
あるいは愛欲(カーマ)や情欲(ラーガ)が原因なのだから、
それを除いてしまおうと考えるかもしれない。その気持ちは
よくわかる。