理趣経/触りたい | 歴史エッセイ集「今昔玉手箱」

歴史エッセイ集「今昔玉手箱」

本格的歴史エンターテイメント・エッセイ集。深くて渋い歴史的エピソード満載!! 意外性のショットガン!!

「欲箭清浄句是菩薩位」

欲箭(よくせん)とは性欲が異性に向かうこと。異性に性愛を
求めるのは自然ですという意味だ。まっ、中には同性に向かう
場合もかなりあるけれどね。どちらの場合も、相手の肉体に
触りたい+抱きしめたいという欲望が起こる。女性は特に
皮膚感覚が優れているので、身体接触を好み、触れ合う事で
男から多くの愛情を受け取る。

だから「触清浄句是菩薩の位」となる。触るのは肉体的欲望
であり、自然なことだ。女性の肌はきめ細かく体は
柔らかだ、男は誰でも触りたいという本能の働きかけを持って
いる。ほとんどの男に、痴漢願望があると言っていい。だが
社会的な生き物でもあるので、超自我が触ってはいけないと
自我をセーブしている。自我の強弱には個人差があり、本能的
欲求が強すぎると、常習的な痴漢になる。

痴漢が捕まると「魔がさした」と弁解する。職場などで強い
ストレスがうっ積したとか、イライラして酒を飲んだら泥酔
して頭の中が真っ白になったなどの場合に、よく痴漢を行う
傾向がある。摩擦症(フロッティズム)という一種の欲望異常
もある。触りたいという欲求が高まってくると、いてもたっても
いられない気持ちになり、触るとホッとする症状である。
むろん女性は感じるどころか、気色が悪い・悪寒が走るという
ことになるのだが。

「うら若き 越後生まれの おいらんの 冷たき肌を 
 愛づる朝かな」

とは、若山牧水の歌である。ある程度身の上話をしているので
初会ではないのかもしれない。昨夜は熱い肌を愛でて一夜の夢
を見たけれど、朝になって、隣で眠る彼女の、醒めた夢の
名残の肌を愛でる。この情緒と愛情。男ならわかる人も多い
だろう。女性にとっては単なる浮気だろうけどね。