皆さま、こんにちは。

 

小学生の部門、いよいよ最終周、

本日は高学年の部です✨

そして全18冊の最後を飾る1冊です。

 

 

今日は日曜日… じゃないよ。

それでも何の躊躇いもなく、児童書・絵本

 

2022年度に指定されていた

第68回青少年読書感想文全国コンクール、

課題図書をテーマとして順番にご紹介さしあげます。

 

小学生5・6年生の部の1冊です。

 

 

著者は、食品ロスを中心とした

食糧問題に警鐘を鳴らすジャーナリストです。

著書では、日本で活躍する1人のパン職人を紹介しています。

 

環境問題=食糧問題

読み終えた時にこの意味がよくわかってきます。

 

タイトルのとおりです。

製作したパンを一切廃棄しない

そんなしくみを造り上げたパン屋さんの実態に触れていきます。

 

これは社会保険労務士として、働き方そのものにも気付きが得られる1冊です。

 

田村さんというパン職人がどのようにして

この境地に辿り着いて実現させているのか、

幼少期のルーツから探っていくことになります。

 

 

まずは実家がおじいさんの代から続くパン屋さんでした。

ただ、田村さんご自身はパンが嫌いだったそうです。

興味をもったのは環境問題で、大学でも専攻しました。

 

胸を張って環境問題と向き合う仕事をしたかった。

でも、そういう求人自体が少なくて、

生活していくためにパン職人として就職をするのですが…

そこで多くのパンが廃棄され、

また保存が利くよう導入されている材料が

人体に悪いことを目の当たりにします。

そして、職人ならではの長時間労働に嫌気を差して、

就職先を飛び出してしまいます。

伝手であった親御さんの顔にも泥を塗ることになります。

 

北海道、沖縄、そしてモンゴルに渡って、自然と共存する生き方に触れます。

特にモンゴルの遊牧民の生き方に触発されたみたいです。

飼っている羊を生きるのに必要なだけ捌いて食べます。

美味しいとされる子羊のラム肉ではなく、

寿命がそれほど長くない老羊を選ぶそうです。

そのようにして命そのものを最大限に大切にしています。

 

 

そして、実家のパン屋に戻っての経営の立て直しに際して、

天然酵母だけで作る釜土で焼くパンを作りたいと決意を申し出ます。

そこで田村さんは理想と現実の間で、ギャップに悩まされます。

どうしても廃棄分は出てしまいますし、

遅い時間に買いに来る客の分も品として確保したい気持ちもあります。

天然酵母のパン1本に絞る過程で、

それまで一緒に働いていた職人さんが辞めていき、

お父さんにまで辞表を突きつけられました。

 

 

壁にぶつかってしまった田村さんは、

奥さんになってくれた女性従業員と2人で、

もう1度、かつてお世話になったフランスのパン屋さんへ修行へ出かけます。

夫婦2人だけで営むパン屋さんです。

どうしたらそのような商売であり生き方が出来るのか、知りたかったのでしょう。

 

日本が抱えるあらゆる問題が1つずつ見えてきます。

それらを自分達で解決したことで、

今、田村さんご夫婦は表紙にある大きなパンを看板商品にして営業されています。

 

 

1つ1つ、全部を書くことは控えますが、

主なものを順番に触れてみます。

 

いわゆる生産性の向上には、やはりしくみが必要です。

田村さんは、釜土のしくみそのものが違っていたことに気付きました。

作業時間が大幅に短縮されました。

 

そしてパンに対するイメージを払拭されました。

新鮮で焼きたてでなければならないのではなく、

時間が経つことで味に深みが出る製造方法を身につけられました。

 

あとは、形状や見栄えを気にしません。

味に問題が無ければ良し、味で勝負する決意を固められました。

そのことで他の点で手を抜くことが可能になりました。

一時たりとも気を抜かないという職人気質、

苦情をゼロにするというお客様至上主義を見直す機会になっています。

 

これらによって、廃棄はなくなります。

そして、人件費を抑える効果もうまれ、

価格が高い国産小麦を利用することが出来るようになりました。

 

 

また、これも大きな決断といえますが、

自分たちのパンが多くの人に受け入れられなくても気にせず、

常連の顧客が喜ぶことだけに専念されました。

もっと喜んでもらえるようにと改善を図ることで品質は上がっていきます。

 

百年愛され続けるパンだから

そのパン職人はしあわせになれる。

そのパン職人たちが幸せだから

またそのパンを作りたいと思う人達が増える。

百年続くパンだから人は食べたくなる。

食べた人が幸せに感じるから、

そのパンは百年続いていく。

 

良い社会にしていこうと自信を持ち続ける為には、

自信を持って安心して長く続けられることに

特化する必要がありそうですね。

 

 

食品ロス、食糧廃棄、

これらは環境問題でもあり経済問題でもあります。

日本は食料自給率が極めて低い国です。

この問題に向き合うことで、

ちょっとしたら生き方そのものが変わって、

将来に対して希望が持ち直せるかもしれません。

 

 

 

 

昨年度の作品より 1つご紹介

 

 

いかがでしたでしょうか。

5・6年生の皆さんの参考になれば幸いです。

 

 

2023年度の課題図書を本屋さんで手に入れることはできます。

ただ、金銭的なこともありますから、

図書館で借りるなら前年度以前の作品でも

心を打つ1冊に出会うことができるはずです。

 

充実した2023年の夏を過ごされることを

心から願っておきますね!

🎐🍉🎆🌊🍨🍧