①有効需要は雇用政策で創出される

 

 一般的に需要とは個人が消費しようとする欲求、および、企業が仕入れとして完成品や中間財を購入しようとする欲求を指します。しかし、お金を持っていなくては、欲求は実現しません。

 そこで、ケインズは、お金を支払うことによって実現するであろうと予想された需要を、一般的に呼ばれる「需要」とは区別して、「有効需要」と呼ぶものとしました。念のために言っておきますが、「有効需要」は、貨幣を支払うことによって実現するであろうと予想された需要のことであり、GDP統計表された結果ではありません。

 つまり、有効需要の概念によって予想されるものとはGDPのことですから、当然ながら、方程式として「Y=C+I」と表すことが出来ます。

 GDPを表現するものなら、生産を表現するY=A‐U」であろうと、分配を表現するY=F+R」であろうと、どんな形でも構いません。それらの内容は予想の構図をどのように表現するかの違いがあるだけだからです。

 ケインズは、事業者たちが雇用しようとする労働量Nは、その社会が消費に使うはずの量D1、そして、投資に使うはずの量D2の合計で決まると言っています。

 合計で決まるということはD1とD2は重複していないと言うことです

 そこで、D1、D2は予想された消費と投資、C、Iは一般的な意味における消費と投資という区分けになりますが、ここで、「C、Iも予想を表す」という但し書きを付ければ、それぞれCはD1と、IはD2と、その定義は全く同じものであると言うことが出来ます。

 「Y=C+I」において、Yが増大する過程は、まず企業は新規投資I(D2)を増大させます。

 新規投資というのは、企業が保有する既存の生産設備や中間財などを追加する仕入を言います。

 一つの企業が、新規投資Iを増やし、作った製品を販売すると、消費C(その企業にとっては売上)が増え、新規投資Iが減り、GDP統計に表される投資に近づきます。(説明を簡潔にするため利益は無視します。)

 ただし、一つの企業にとってのCの顧客は個人の消費かも知れませんし、他の企業の新規投資かも知れませんが、ここでは、どちらもCで表すものとします。Iはあくまでその企業にとっての新規投資であり、販売前の、したがって、在庫への投資ですが、商品の販売によってGDP統計の投資に近づいて行きます

 販売が行われれば、在庫の多くは売られ、新規Iは一旦は減ります。しかし、在庫の多くは売られてしまったのですから、企業は、次の販売について大いに期待し、再び在庫を増やそうとして、新規投資Iを増やします。

 そのときの企業の投資は、新規投資Iと表示される前は、つまり生産設備の充実や在庫品の増加となる前は、原価投資I0であり、その内訳を言えば、例えば、雇用の拡大による賃金の増加をF、仕入と企業内からの拠出の合計をUとして、

I0(100)=F(80)+U(20)

 となります。このようにして企業は雇用を拡大します

 そして、一つの企業が、労働力投入を含む原価投資I0を増やし、製品を販売したときに、どれほどの消費Cが増えたかが、その後の企業の新規投資Iを決定します。

 すなわち、消費の伸びはその後の企業の投資の増加を決定的します。

 そして、その後の企業の投資で労働者に対して賃金が支払われ、それが十分であれば、消費が増え、その後の(社会全体の)企業の投資が増加するというように、賃金、消費、投資がスパイラルして増えて行くときに経済は成長します。

 賃金が増えず、消費が増えないようならば、企業は投資をしなくなり、経済は衰退して行きます。

 そのとき、消費が増えるかどうかを判断するためには、そのときの社会体制が、雇用に対して安定的で、国民に対して所得増加する政策を採っているかどうか、そして、そのことによって賃金が上がり、国民が自信を持ち、消費性向を増大させる体制となっているかどうかを点検するしかありません。

 

 

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