①安定財源のための税金に反対しよう

 

 最近、テレビでも新聞でも、市町村などの基礎自治体は安定した財源を持つことが望ましく、その為に消費税や固定資産税は最適な税金だと宣伝しています。

 しかし、これはおかしな話ではないでしょうか。安定財源とは税収が安定しているという意味で、どんな経済状態でも、国民に一定の負担をさせるということです。

 つまり、この話には、景気動向に左右される不安定な収入しかない国民が一方的に安定した税を納めるという数学的な矛盾が存在します。

 最近、市町村の住民税課では、ファイナンス相談窓口というものがあります。納税のための不動産売却や借入を勧める窓口です。いまや、不動産を売却したり、お金を借りたりしなければ払えない税金というものが定着し、市町村が資産の売却や借入をあっせんしている始末です。

 ファイナンス相談窓口は、まるで、住民を破滅へ導く地獄からの使者のようです。

 安定財源のための税金とは、このような、資産の売却や金銭の借入をしなければならないような税金なのです。

 奇怪なのは、そういう税金が、日本の政治家や経済学者たちに褒め称えられていることです。

 安定財源という考え方は、政治家が楽をする一方で、不況にあえぐ国民の苦痛には知らぬ顔をするという、ムシの良いものです。

 元来、税収はむしろ景気動向に合わせて変動するのが当然なのであり、不況時にも関わらず、国民に税収の安定を要求するのは一種の狂気です。

 マクロ経済的には、不況期にこそ中央政府の出番があり、すなわち、通貨発行権を行使して、むしろ国民生活を安定させなければならないのです。

 現在の政府の会計方法では、通貨発行権を行使すれば、財政が悪化するような解釈になっていますが、財政が悪化しても悪いことは何も起こりません。

 特に、日本における不況は、度重なる政府の失政によるものであり、生産物が不足しているわけではなく、緊縮財政政策によって、低所得層や貧困層への所得再分配が適切に行われなくなっていることが理由ですから、国民の側がどう足掻いても、どうにもなりません。不況から脱出する手段は通貨発行権を握る中央政府しか持っていないのです。

 その当の中央政府が財政政策をサボり、財政の安定のために、生活の不安定な国民に対して経済状況に関わらず一定の税負担を押し付けるのですから、開いた口が塞がりません。

 そもそも、地方自治体といえども、その税収が安定している必要はありません。なぜなら、地方自治体は国家の通貨発行権の端末システムにすぎないからです。

 地方自治体の主要な役割は二つあり、一つは、中央政府の側に立って行う、国民のための普遍的な社会保障、インフラ、教育などの「中央政府の行政サービスの代行」であり、もう一つは、住民の側に立って行う、中央政府の行政サービスのあり方に対する「異議申し立て」です。

 自治体の自主性として良く取り上げられている自治体の創意工夫は、自治体の仕事のオマケに過ぎず、主要な役割ではありません。

 なぜなら、自分の地域に観光地などのように特別な個性を見つけられなくても、普遍的な社会保障、インフラ、教育などの行政サービスをしっかりやっていれば、住民は幸福になれるからです。

 そもそも、中央政府は通貨発行権を国民から委任され、地方自治体が国家の一部として地方行政を行っているからには、地方財政もまた国家財政の端末であり、国家の通貨発行権をもって地方財政の財源とするのが正当です。

 つまり、自治体の税収というものは本来は国税の税収と一体のものであり、国税であろうと地方税であろうと、その不足は中央政府の通貨発行で調整すべきものです。

 ましてや、地方自治体および地方住民は、絶対に、中央政府の巻き起こした不況による税収不足の責任を負うべきではありません。

 自己責任とは、他人を批判するときに使う言葉ですが、地方は中央政府の端末機関にすぎず、中央政府の失政が地方の命運を決定するのであって、地方の自己責任について、中央政府に言われる筋合いはどこにもありません。

 ところが、今日、自民党政府は地方のことは地方でやれとか、自己責任論(すなわち国家は責任を負わないという意味)とかを叫びながら、地方住民に対する税金、保険料などの高額負担を推し進めています。

 当然ながら、その影響は、地方の住民の生活を悪化させ、地方においてやって行けなくなった中小企業が続出し、労働者も貧困化しています。

 この地方の住民の苦しみは、地方の貧困化政策を推進している中央政府の責任であり、中央政府の失政そのものです。

 しかし、地方自治体の首長や議員の誰も、中央政府に対して、失政を咎めるどころか、住民のそれらの高額負担を軽減するための地方交付税の増額すら要求していません。

 経済学者や国会議員の場合は、経団連の投資家などに対する機嫌取り、故意の売国などの動機が考えられますが、地方議員の場合はそのような故意の悪意すら持つ能力はないように思われます

 おそらく、これは、地方の貧困化に対してかろうじて疑問を持った地方自治体の首長や議員も、まったくマクロ経済を勉強していないために、地方交付税や補助金の増額の要求をして良いものかどうかも判らないし、ましてや、国の政策に対して反論しようにも、地方自治体財政のマクロ経済的な意味を理解出来ないということなのであろうと疑われます。

 ゆえに、おそらく、地方自治体の首長や議員の無知が地方の貧困化の原因であり、地方住民の苦しみの原因なのであろうと思われます。

 

 

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