スタインウェイまでも…。 | 零細企業の闘魂日記

【高級ピアノ「スタインウェイ」身売り 米投資ファンドに】
http://www.asahi.com/business/update/0702/TKY201307020031.html
『コンサートホールで使われる高級ピアノなどで知られる楽器メーカー「スタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツ」(SMI)は1日、米投資ファンドのコールバーグへの身売りで合意した、と発表した。総額は4億3800万ドル(約440億円)。』
 
『SMIの傘下には、高級ピアノで有名な1853年創業の「スタインウェイ・アンド・サンズ」がある。SMIはこのほか、トランペットやサックスといった楽器の製造や販売も手がけている。とくにピアノは、巨匠ホロビッツをはじめ、ビリー・ジョエル、ハリー・コニック・ジュニアなど、愛用するアーティストが多いことで知られる。』
 
スタインウェイと言えば、ドイツのベヒシュタイン、オーストリアのベーゼンドルファーと並び世界ピアノ界の御三家でそのなかでも筆頭格にある(もっともスタインウェイの創業者はドイツ出身)。
 
日本でもピアノ愛好者の多くが「スタインウェイ」に憧れ、スタインウェイ製のピアノを所持することがステイタスともなるほど人気が高い。現代のグランドピアノ製造の基礎もスタインウェイが取得した100以上の特許技術によるところが大きく、とりわけ有名なのが「交差弦」であろう。
 
交差弦とはそれまでのグランドピアノでは平行に張られていた弦を斜めに交差して配置する方法である。弦はできるだけ長く張ることにより音量や響きが増し、豊かな音色になるが、そうすると弦の長さに応じて楽器は大型し、調整や管理も難しくなる。しかし、交差弦を採用することによって楽器の全長を小型化でき、より一層、音に深みと豊かな響きを得ることに成功したのである。近現代のグランドピアノはほとんどすべて交差弦となっている。
 
私はピアノを専門としていないが、ピアノ講師をしていたこともあり、三人の娘はピアノを弾く。特に長女は同年齢時代の私より遙かに上手く、合唱コンクールや吹奏楽部との共演では必ずと言って良いほど長女がピアノを演奏し、ことごとく優勝に貢献している。背筋を伸ばして演奏する姿は、我が恩師、故 矢崎馨先生 を彷彿させ、演奏法もよく似ており、矢崎先生の教えが娘に伝承していることを嬉しく思う。

  
そう言いつつ、私は今般スタインウェイの身売りに見られるように高級ピアノに限らずピアノ製造界全体が衰退するのではないかと危惧する。事実、御三家のひとつベーゼンドルファーは2008年にヤマハの子会社となっている。
 
いくつかの理由を挙げることができるが、何と言っても電子ピアノの台頭と総合的な性能の高さが「本物のピアノ」に迫りつつあり、利便性においては確実に電子ピアノに軍配が上がる。ピアノの醍醐味は演奏者のタッチによって音色や曲想が無限に変化することであろうと思うが、マンションやアパート、小型住宅でのピアノ練習は、昨今の人間の寛容さの低下とともに騒音問題に発展しやすい。電子ピアノではその心配がない。

  
私はワンルーム・マンションに入居していた独身時代、ヤマハの電子ピアノ、「クラビノーバー」を購入した。専門のピアノの先生は、電子ピアノ否定派が今も比較的多く、「本物のピアノ」を生徒に勧めるが、住宅事情などを勘案するとなかなかそうもいかない。またスタインウェイクラスのピアノならともかく、失礼ながら一般のピアノ講師レベルでは、そこそこ充実した電子ピアノと家庭向けのアップライトピアノを音色で聞き分けるのは難しいのではないか?少なくとも私には無理である。
 
それを示す意味でも、私が1993年に購入した電子ピアノ「クラビノーバー CVP-55」による演奏を一曲、ご紹介しよう。

 

曲はロバータ・フラックの歌唱で世界的に大ヒットした『やさしく歌って』 である。
 
【やさしく歌って】
(作詞:ノーマン・ギンベル 作曲:チャールズ・フォックス) 
http://music.geocities.jp/agaricuslife/killing-me-softly.html