バタバタと毎日が過ぎていった。
地域包括センターへ相談に行ったり、介護認定を受けたり。
父の介護がずっしりと自分にのしかかってきた。
忘れてはならないのが、引越し前から中々父の下に訪れることのなかった不倫相手の「色のない人」について。
父の部屋に引越し屋のマークの入った段ボールが積み上がる日々が続いたが、その間も色のない人は父の家を訪れることはなかった。何のアクションもなかった。
それだけもう父にも思い入れがなくなったということか。
引っ越しに気がついていない「色のない人」は毎朝父の携帯を鳴らし、
開口一発目から叱るような口調で父に薬の指示を出していた。遠隔操作だ。
「薬は飲んだの!?飲んでない?!飲みなさい!」
父は電話口の声にオロオロしていた。
色のない人は夕刻にも父の携帯を鳴らした。
「夕飯は食べたの?冷凍庫の〇〇があるでしょ?!それを出して!」
その時の父はもはや何がどこにあって、
どうやって袋からだして、何分温めるのか。
温める方法すら理解できていなかった。
何ならお皿も箸も何もわからない。
人に怯えて言われるがまま、理解できないボタンをただ押すのみ。
そばでその様子を見ていた私は苦しくもなった。
見ているだけで情けなくなった。
父はいつからオロオロする人になったのか。
昔の面影はなかった。
わからないことを悟られたくない。
わからないことがわからない。
父が愛した不倫相手は
父の認知症をどうみていたのだろうか。
引っ越した後も「色のない人」は新しい場所に父がいる事、娘の私が常にそばにいることに気が付かず
同じ時間に電話をかけてきては
薬の服用の指図を繰り返した。
私の見立てでは引越し前の重なった段ボールを色のない人がみて、私に何かしらの問い合わせが来ると思っていたが、予想は外れた。
毎朝、夕方にかかってくる電話に父は明らかに混乱していた。
とある日に父は朝の薬を2日分同時に服用してしまった。色のない人の圧力に混乱した父がわけもわからず飲んでしまったのだ。
ここで私は意を決して色のない人に引越しの事実を伝えることにした。
色のない人にしてみれば
1ヶ月以上も電話だけで父の様子を伺う?指図しているだけ。まさか、2人の過ごしたあの古く汚いマンションから父が居ないとは思ってもないだろう。
電話をかけてくれるだけでもありがたいと思うべきなのか?
いいや違う。30年近く続いた父との関係もこんな程度のものなぬか。薄いものだなと察した。
アルツハイマーが縁の切れ目?
金の切れ目もあったのかな。
もはや威厳のない父に何の魅力が残ろうというのか。
いったい彼女は何がしたかったのだろうか。
いまだに私には彼女が何をしたかったのかわからない。