歩くだけでもいい、

エレベーターは使わず階段できゅん

 

出来るところからコツコツですきゅん

 

 

 

(ディリー新潮HP)

 

 

 

■筋肉からのホルモン

 

なぜ、末期がんの患者は痩せてしまうのだろうか。

原因は単に食欲が衰えるだけではない。

「病状が進行してくると、がん細胞は自分自身が生存するために骨格筋にため込まれているグリコーゲンやたんぱく質をエネルギー源として使いはじめるのです。筋肉が多い腕や太腿、腰回りがどんどん痩せて行くのはそのためです

研究者が注目するのは、筋肉の急激な衰えが死につながっているという点だ。

首都大学東京・大学院の藤井宣晴教授によると、
「がん細胞を移植し、人工的にカヘキシアにしたマウスに筋肉増強剤を投与してみた実験があります。筋肉増強剤を打たなかったがんマウスは筋肉が減少し、全部が衰弱死する。ところが、筋肉増強剤を打ったマウスはがん細胞が増殖しても筋肉量と体重が維持され、10%しか死ななかった。つまり、生存率が飛躍的に上がったのです。これは、がんに罹ったとき、筋肉が生命維持のために何らかの役割を果たしていることを意味しています」

筋肉には体を動かすためだけではなく、病魔と戦う役割もあるのではないか。それが明らかになってきたのは最近のことだ。

「がんに罹っていなくても、運動している人は、将来のがん発症リスクが低いことが分かっています。これは、疫学調査のデータではっきりしている。さらに、2015年に『アメリカがん研究協会』などが、肺がんや食道がん、肝がん、乳がん、そして骨肉腫など少なくとも13種類のがんに関して、運動の効果が確実にあると医師会誌で発表している。世界的にも運動することにがん予防効果があることが認められてきているのです」

もっとも、運動とがんの関係はまだ不明なことも多く研究途上にある。だが、次第に分かってきたのは、筋肉から身体を守る有益なホルモンが出ていることである。それが「マイオカイン」だ。

■糖尿病、脂肪肝、動脈硬化への効能

筋肉から分泌されるホルモンを「マイオカイン」と呼ぶようになったのは05年のこと。

コペンハーゲン大学のペデルセン博士が、筋肉からホルモンが出ていることを発見し、「マイオ(筋肉)」、「カイン(作動因子)」と名付けたのだ。これをきっかけにマイオカインの効能を解き明かす研究に拍車がかかる。

①例えば、「SPARC」というマイオカインは、大腸がんを抑制する効能があることが分かっている。筋肉で作られたSPARCは、大腸がん細胞を見つけるとアポトーシス(自殺)を働きかけるのだ。

筋肉から分泌されるホルモンはSPARCだけではない。

 

②肥満や糖尿病を抑える「IL―6」、

③肝硬変につながる脂肪肝を改善する「FGF―21」、

④糖尿病や動脈硬化、さらにはうつ病やストレスにも効能のある「アディポネクチン」、

⑤ハーバード大学の研究チームが注目したのは、認知機能の改善につながる「アイリシン」。

⑥そしてアルツハイマー病の原因物質を減らす「IGF―1」といったマイオカインが次々と見つかっている。

■「AMPキナーゼ」

筋肉で作られる物質は他にもある。ホルモンではないため、マイオカインとは言えないが、日本人に多い2型糖尿病を抑え込む酵素が筋肉で生成されていることも分かっている。「AMPキナーゼ」と呼ばれる物質がそれだ。

「体内の血糖値が上がると膵臓の『ランゲルハンス島』からインスリンが分泌され、血糖値を下げます。2型糖尿病はこのインスリンがうまく働かず、糖の取り込みがうまくいかないのです。ところが筋肉で作られるAMPキナーゼは、血液中の糖を吸収して細胞内に取り込んでくれる。これが分かったことは医学的に大きかった。インスリンがうまく働かなくても糖尿病と上手に付き合ってゆけることが分かったのです」(前出の藤井教授)

骨格筋が万能ホルモン・マイオカインやAMPキナーゼを作ることは分かった。分泌を促進するためには運動が必要なことも理解していただけるだろう。ところが、皮肉なことに現代社会は、逆に筋肉を使わないように“進化”しているのも現実だ。

早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授によると、

「私たちの毎日はデスクワークなどが中心ですよね。すると、一日の多くを足を動かさずに過ごしているわけです。会社にいても大腿四頭筋もふくらはぎもほとんど使われない。また、家にいても体を動かさないで済むようになっている。テレビも洗濯機も照明もボタンひとつで、座りっぱなしで使えてしまう。そうやって骨格筋を使わないでいると、ただでさえ代謝機能疾患や神経器官疾患のリスクが高くなるのです」


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170716-00523678-shincho-life