スウェーデン・

Umeå UniversityのGabriel Högström氏らは,

130万人を超える同国の男性を平均29年追跡。


青年期(平均年齢18歳)の徴兵検査時に測定した

有酸素運動能力が高い男性ほど,早期死亡リスクが低かったと

Int J Epidemiolに報告した。


ただし,BMIが高くなるほどリスク低下のベネフィットが小さくなり,

BMIが35以上の肥満者ではベネフィットが認められなかった。

(ベネフィット:ためになること)


同氏らの研究結果は,近年の「肥満でも健康なら良い」という考え方に

疑問を投げかける形となった。


特に物質乱用による死亡リスクが大きく低下

対象は,1969~96年に徴兵検査を受けた同国の男性131万7,713例

で,検査時の平均年齢は18歳であった。


全例が徴兵時に自転車エルゴメータによる運動負荷テストを

受けており,これを青年期の有酸素運動能力のデータとして用いた。


平均28.8年の追跡期間中に4万4,301例が死亡しており,

主な死因は外傷(1万661例),がん(8,566例),

心血管疾患(7,695例),自殺(4,619例)であった。



年齢および徴兵された年で調整後の解析で,

有酸素運動能力の最高五分位群は最低五分位群に比べて

全死亡リスクが51%低かった〔ハザード比(HR)0.49,95%CI 0.47~0.51〕。

死因別でも同様の関連が認められ,特にアルコールや薬物などの

物質乱用による死亡(同0.20,0.15~0.26)および

自殺(同0.41,0.36~0.47)のリスク低下幅が大きかった。


一方,がん関連死のリスク低下幅は小さかった(同0.80,0.66~0.85)。



さらに体重で調整後の解析でも,有酸素運動能力の最高五分位群は

最低五分位群に比べて全死亡リスクが48%低かった

(HR 0.52,95%CI 0.50~0.54)。

死因別では,やはり物質乱用による死亡のリスク低下幅が最も大きかった(同0.25,0.20~0.32)。


高BMIほどリスク低下幅が減少

有酸素運動能力を高・低の2群に分類してBMIで層別化した解析では,

有酸素運動能力の高さによる死亡リスク低下のベネフィットが

肥満者では小さくなることが判明した(相互作用のP<0.001)。


標準体重群(BMI 18.5以上,25未満)では,有酸素運動能力が

高い男性は低い男性に比べて死亡リスクが34%低かったが

(HR 0.66,95%CI 0.64~0.68),

このリスク低下幅は過体重群(BMI 25以上,30未満)では28%,

1度肥満群(BMI 30以上,35未満)では26%に減少し,

2度以上の肥満群(BMI 35以上)ではリスク低下のベネフィットが認められなかった。


さらに,有酸素運動能力が低い標準体重者は,

有酸素運動能力が高い肥満者に比べて全死亡リスクが30%低かった

(HR 0.70,95%CI 0.53~0.92)。


因果関係ははっきりしない面も

Högström氏らは研究の限界として,①データ不足のため

喫煙による影響を考慮していない②対象が若年男性のみなので

結果を女性や高齢者に当てはめられない③有酸素運動能力に

大きく影響するとされる遺伝的要因が交絡因子となった可能性がある

などの点を挙げている。


その上で,今回の結果について「肥満者は有酸素運動能力が高くても

標準体重者に比べて早期死亡リスクが高かったという点が重要だ。


この結果は,"肥満でも健康なら良い"という考え方に

疑問を投げかけるものだ」と述べ,「早期死亡リスク低下の点では,

青年期に低BMIであることが健康レベルの高さより重要であることを示している」と付け加えている。


なお,有酸素運動が心血管疾患や糖尿病の予防・管理に有用で

あることは以前から知られているが,今回の研究では心血管疾患

より自殺および物質乱用による死亡のリスクと有酸素運動能力

との間に強い関連が認められるという興味深い結果となった。


これについて,同氏らは「運動がうつ病の改善に有効であるという

エビデンスもあるが,逆に青年期の飲酒量が多かった男性は

当時の有酸素運動能力が低かったということかもしれない」と考察している。


http://ije.oxfordjournals.org/content/early/2015/12/20/ije.dyv321.short?rss=1