毎日、生きています。

日を追うごとに
寂しくて寂しくて
会いたくて…
味わったことのない喪失感の中で
毎日たくさんの人に支えられて
食べて、眠って、ちゃんと笑って
生きています。

でも何をしていても
頭の中は玲でいっぱいです。

家にいれば、玲が好きだったおもちゃや
玲のお気に入りの場所…
どこを見ても玲が生きた証があります。

車に乗っても、スーパーに行っても
何を見ても、玲との日々が蘇り
日常は玲との思い出でいっぱいです。

買い物に行くこと、ごはんを食べること
笑うこと、寝ること、息をすること。

生きるとはこんなにも
エネルギーを使うことだったのかと
毎日噛み締めながら生きています。

きっと凛もそうなんだと思います。

先日、学校でお友達に
「弟が死んだのに
  なんでそんなに笑っていられるの?」
と言われたと凛が話してくれました。

きっと凛と同じ2年生。
悪気は全くないんだと思います。
でも私は、そう聞かれた凛の心が心配で、

「何て答えたの?」と聞くと、

「笑ってないと、
   玲が悲しむから!って答えたよ」

と当たり前のように教えてくれました。

本当に本当に強くなりました。

小さな体で必死に受け止め
小さな頭でたくさん考え
大きな心で玲を想って
凛も毎日を生きているんだなって
改めて思いました。


そんな凛は玲の4つ年上の小学2年生。

玲の病気が発覚したとき
凛は年長さんでした。

玲よりもずっとずっと甘えん坊で
泣き虫だった凛。

1年3ヶ月、凛のことは全て
友ちゃんやバッバに任せて
私はずっと玲と病院にいました。

最初こそ泣いてばかりだった凛も
「絶対に玲とさやは元気になって
   お家に帰ってくる!」
と信じて、がんばってくれました。

子供なので病室に入れない凛が
玲に会えるのは月に1回の外泊のときだけ。

キツい治療はしているけど、
いつも元気に外泊してくる玲を
最後の最後まで元気になると
信じてくれていました。

本当に仲のいい2人でした。

2回目の大量中に増悪して
もう治療ができないと分かったとき
凛にも事実を伝えた方がいいと
主治医から言われました。

だんだん治療がうまくいかず
少しずつ覚悟をしていた私達でさえ
受け止められない事実を、
ずっと元気になって帰ってくると
それだけを信じて頑張ってきた凛に
受け止めることができるのか…

たった7歳の凛が
どれほど理解できるんだろう…

そして、私は上手に伝えられるのか…

不安と辛さしかありませんでした。


そうしてる間にも
玲はだんだん体がキツくなり
私以外受け入れず、
大好きだった凛が近づくのさえ
嫌がるときもありました。

何も知らず、淋しそうにする凛を見て
そろそろ言わなければ…

分かっていながらも

「ディズニーが終わるまで…」
「USJから帰ってくるまで…」

何かと言い訳をして
なかなか凛には伝えられずにいました。


そんなときふと、まだ治療も順調で、
玲も元気に外泊をしていた頃の
ことを思い出しました。

外泊から病院に戻った私に電話があり

「凛ね、いつも外泊から2人が帰ったら
   思うことがあるんだー。
   あーもっと玲に優しくすればよかった!
   またしばらく会えないのに…って
   毎回思うんだー。」

と言いました。

元気になると信じていても、
凛は玲のことをこんなに
想ってくれているんだと思ったとき、
今言わないまま、もし玲が急変でもしたら
凛は一生後悔するかもしれない!
なんで言ってくれなかったの?と
責めるかもしれない…

主治医が言ってくれていたのは
こういうことだったんだ
と凛に伝える決心をしました。

それが亡くなる前日です。

主治医を交えて、カンファレンス室で
凛に玲の現状と、これからのお話を
してもらいました。

分かりやすく、そして本当に優しく
凛に1つ1つお話してくれました。

最初はニコニコしていた凛の顔が
だんだん曇り、大きな涙が目から溢れ
しゃくりあげて泣いてしまいました。

私は母親なのに
何の言葉もかけてあげられず
全て先生に任せてしまいました。

「玲くんの機嫌が悪いのは
   凛くんを嫌いになっちゃったんじゃなく
   体がキツくて、うまく遊べないからなの。
   玲くんは今でも凛くんが大好きなんだよ。」

そう言って、今までの凛の不安を取り除き

「凛くんの大好きな玲くんを
   元気にお家に帰してあげられなくて
   ごめんね。」

と主治医団は本当に
一生懸命治療してくれたのに
凛にそう謝り、

「これからはたくさん玲くんのしたいこと
   凛くんが玲くんにしてあげたいことを
   先生とお母さんと叶えて行こうね」

と言ってくれました。

私は幾度となく、
このカンファレンス室で
辛い告知を1人で聞いてきたけど、
告知する方もこんなに辛いんだと
初めて知りました。

これまでの、どの告知のときも
先生は私に寄り添い、
肩をさすり、心を込めて
お話してくれました。

先生じゃなければ
きっともっと早く心は壊れていたし
最後まで頑張れなかったと思います。


告知後の凛は一通り泣くと、
涙を拭いて
「玲のところに戻ろう!」
と私の手を引きました。

今までとは違う凛がいました。
全身全霊で玲に寄り添い、
心から玲を想い
「玲大好きだよ」と
たくさんたくさん伝えました。

玲にも何かが伝わったのか、
この告知以降、これまでの2人のように
また兄弟仲良く笑い合う姿が
たくさん見れました。


そして凛は玲の前では
優しいお兄ちゃんでいてくれ、
玲の見えないところでは
涙をポロポロ流して泣きました。

次の日も
「行ってきます!」
と笑顔で登校したのに
学校に着くと泣いていたこと
担任の先生やお友達に聞きました。

何も教えていないのに
決して玲の前では最後まで泣かない
強くて優しいお兄ちゃんでした。

だけど本当に悲しくて辛いこと
玲が大好きなこと
たくさんたくさん伝わりました。

元気になるはずの玲が
歩けなくなり、酸素が必要になり
機嫌が悪いときや、
横になっていることが多くなった玲を
実はずっと心配に思っていたことも
教えてくれました。

だけど、何も聞かずに
信じて笑顔でいてくれていた凛に
ありがとうとごめんねで
いっぱいです。

告知の次の日の夜には
玲はお空に行ってしまって
凛の心は本当に慌ただしかったと思います。

でも決して何かを責めたり
怒りや淋しさをぶつけることもなく
ただ現実を受け止め、
悲しさと淋しさと戦い、
私と生きています。

元気に見えても
ときどき玲のことを思い出し
突然ポロポロ泣きながら
抱きついてきます。

「淋しいね、会いたいね」

と2人で抱き合って泣きます。

だけど、
「玲のために頑張る!」
とも言ってくれます。

玲のことを家族で話すとき、
玲のものを片付けているとき、
私が下を向くとき、
凛はすぐに私の顔を覗き込んで
 
「泣いてない?」

と心配そうに聞いてきます。

優しい優しいお兄ちゃん。
凛がいて本当によかった。
ありがとう。

そして、玲も
私が凛へ告知するのを
待っていてくれたんじゃないかな?
と思ってしまいます。

もし告知しないままだったら
最後に2人で笑い合うことは
なかったかもしれない。

凛は、あんなに大好きと
伝えられなかったかもしれない。

玲に嫌われてしまった…
と凛が思ったまま
お空に帰るのはかわいそうだと思って、
お兄ちゃん思いの玲が
告知するまで頑張ってくれたのかなって
そんなことを思います。

また3人でぎゅーってして寝たいね。
その日まで頑張ります。
2人とも大好きだよー。   

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