お友達のナルちゃんと銀座をガシガシ歩き回っていた時のこと。

表通りから一本脇道に入り、次の場所(どこだったかは忘れた)を目指しておしゃべりをしながら歩いていると、小さな間口のお店の前でテーブルを出して何かを売っているおじさんがいました。

タコヤキ?

リンゴアメ?

という感じを抱きながら素通りをする私たちに

「xxxです。いかがですか?」

と控えめに声をかけてくれました。

素通りをして十歩ぐらい進んだところでふとナルちゃんが

「え?宝石屋さんの出店?」

と立ち止まり、私も

「え?宝石の屋台?」

 

興味を惹かれ、二人で後戻りです。

するとテーブルに陳列されていたのは正真正銘のジュエリー。

キラキラのダイヤモンドやルビー、真珠もたくさん飾られていてとってもキレイ。

 

「戻ってきてくださってありがとうございます。ゴールデンウィークだし展示会直前なので特別大セールです。いかがですか?」

 

値札を見ると四万円から十五万円ぐらいまでと色々。

私にとって大金は19800円から8億円ぐらいまでなので、ここに並んでいる全てのものの代金は大金です、

あー綺麗だなあ。

小さなダイヤがキラキラしたピアスとか、パールを使ったデザインもののネックレスもかわいい。

でも買えないわー。

 

「全て60%オフです」

 

「えっ?」

「えっ?」

思わずナルちゃんと二人で異口同音。

 

ろろろろくじゅっぱーせんとおふ?ですか?

ていうことは、たとえば4万円のものは16000円?

そんな無茶な!

 

「いや、そうなんです。無茶苦茶なんですははは」

 

異様に日焼けした大きなおじさん。

首にでっかい黒真珠のネックレスをしている。

怪しい。

怪しいけど、なんか信用できる雰囲気もある曖昧な感じの人。

するとお店の中から白髪で小柄なおじさんもスタスタと出てきました。

この人は見るからに頭の先から足の先までが、宝石商という感じです(どんな感じよ)。

 

「いやこれ、本当に大変なことなんですよ」

 

大変なことてああた。

 

「全て18金を使っているので、地金の値段が高騰している今、これはもう大変な値段ですよ」

「そうそう。大変なことなんです」

 

二人のおじさんが口々に「大変なこと」を連発。

私がとっても気に入ったのはダイヤのピアス。小粒なダイヤモンドを18金でぐるりと囲った小さなピアスで、どんなファッションにも合いそう。

うーん。

でも79800円。

 

じいいいっと見ていると、すかさず黒いおじさんが

「これね。これがまた素晴らしいんですよ、なんといっても地金がたっぷりで」

「そうそう地金がね。高いから。これは値打ちある」

 

また二人で掛け合い販売。

めちゃくちゃノリが良くて面白いぞ。

 

うーんうーん。

 

「60%オフですから30000円きります。29930円」

電卓をパチパチパチと叩いてみせるおじさん。

 

うーんうーん。

小さいダイヤモンドのピアス、ずっと欲しかったんだけど。

うーんうーん。

 

と、ここまで考えてふと気づきました。

これ、ドル建てのカードで買ったら200ドル以下なんじゃ?

 

「か、買います!」

「ありがとうございます!」

 

そして続けて

「その端数は切り捨ててくれてもいいですよね」

と言うと

「あーそれはもうしょうがないですね」

「うんうん。それはしょうがないよね」

とキリよく29000円にしてくれました。

おじさんたち、本当にノリがよくて最高。

横で見ていたナルちゃんは、宝石屋で値切る私の関西人ぶりにびっくりしてました。

おじさんたちも別に関西人じゃなさそうだったけど、ノリがよくて素晴らしかった。

 

ということで、無事長年欲しかったダイヤのピアスをゲットしました。

小さいけどキラッキラしていて嬉しい。

 

最後に小さいほうのおじさんが、紙にジュエリーの値段と18kとかダイヤモンドなんちゃらカラットとか色々書いてくれながら

「じゃあこれ入れておきますね。別に特になんの意味もないけど、時々取り出して眺めてください」

 

面白すぎる宝石屋さん。

最高に気に入ったのでまた東京に行ったらぜひ行ってみよう。

ちなみにお店の名前は

GINZA ENJUE

です。

普段はお店の扉は閉まっていてちょっと入りにくい雰囲気らしいですけど、中にいるおじさんたちは気軽な人たちなので、ちょっと覗きに行って戯れにねぎり倒してみるのも一興かも。

 

 

↑わけわからんぐらい小さいけど、気に入りました。