本日、わたくしはドラムのレッスン。
ピザ雄さんはオンラインセラピーでした。
お互いの用事が終わる午後7時ごろ、ピザ雄さんお気に入りの天ぷらと十割蕎麦を出してくれる美味しいレストランでディナーにしようということになり、二人で美味しくお食事をいただきました。
ピザ雄さんは天ぷら12個(うち、エビ天ぷら4個)とざるそば、生ビール3倍。
わたくしは豆乳ラー油スープ入りのお蕎麦をいただき大満足。ここ、変わり蕎麦だけど本当に美味しいんです。
満腹になった帰路、いつものようにピザ雄オキニのセブンイレブンを目指して歩いているとふとピザ雄が
「What's she doing?」
と呟き、ほぼ同時にドンガラガッシャーンという音が前方から聞こえてきました。
おや?
と思っていると私たちの前を歩いていた若い男性がダダッと走りだし、その先にはなんかよくわからない大きな荷物がボトーっと落ちている感じ。
わたくし夜目が効かないので本当によくわからなかったんですが、次の瞬間にはそれが地面に仰向けに倒れているおばあさんだとわかりました。
あっ大変!
素早く駆け寄った若い男性が、
大丈夫ですか?
と聞いているけれど、おばあさんは無反応です。
私とピザ雄も駆け寄り、ピザ雄はお婆さんの頭の方に回って覗き込みながら
「ambulance救急車を呼ぶ?」
と私に聞きました。
おばあさんは助け起こそうとしている若い男性に
「お尻の方持ち上げて立たせて」
とうめいています。
「救急車呼びますか?」
と私が言うと、おばあさんは
「いらない。お尻を持ち上げて起こして」
どうしてもお尻を持ち上げてほしいようだけど、お尻を持ち上げてどうやって立つのか?
私も男性もどうすればいいのかわからず、しかも骨が脆くなってるご老人をヘタに触ると大変なことになるかも。と躊躇してしまいます。
「お尻。お尻の方持って」
おばあさんが何度も言うのでピザ雄に英語でそれを説明している間に、男性が腰からお腹の方に手を回して立たせようとしましたが、そんなことをしても体がV字になって折れ曲がるだけで立ち上がれるはずもないです。
ピザ雄がお婆さんの腋の下に手を入れて、男性に
「足を伸ばしてあげて」
と指示しましたが、英語なので誰にも理解してもらえず。
現場はプチパニック状態だし、私も日本人相手に英語で説明したり、ピザ雄に日本語で説明したり、大混乱です。
結局男性が腰を支えて仰向けからうつ伏せの状態にゴロンと転がしてあげましたが、おばあさんはやっぱり立ち上がれません。
するとおばあさん。チラッとピザ雄を見て
「この人、体が大きいから、この人が力もちだと思う。この人に起こしてもらいたい」
おばあさん、この緊急時にすごい観察眼だな!
おばあさんが地面に倒れているのを見て、交差点の向こうから若い女性や男性が数人駆けつけていましたが、その全員の前でブハーッと吹き出してしまいましたよ。
不謹慎です。
不謹慎なんです。
わかってます。
でも、
おばあさんに指名されたピザ雄。
一人デカいピザ雄。
指名されたことに気づかないピザ雄。
私にとって、どれをとっても笑う要素しかありません。
衆人環視の緊急事態なのに、私一人でバカ受けです。
もうホント、地獄。
ウググググッと笑いを堪えながら
「あなたに助け起こしてもらいたいと言ってるよ」
とピザ雄に告げましたが、それはもちろん英語なので周辺の善意の人々には伝わりません。
せーので助け起こそうとみんなが右往左往していましたが、私からおばあさんのご指名を聞いたピザ雄は、あっそう、と言って再びおばあさんの両脇に腕をいれ、周辺の人々を蹴散らしながらグワーッッッと一気に立ち上がらせました。
オオオオオとどよめく一同。
最初の男性がおばあさんの前にまわり、ピザ雄が背中から抱えているおばあさんに
「大丈夫ですか?」
と聞きましたが、おばあさんは急に立ち上がらせられたせいか、目をキョロキョロさせて返事をしません。
ピザ雄が背後から
「ダイジョブ?」
と日本語で聞くと
「だいじょうぶだいじょうぶ」
とようやく返事をしてくれました。
そして
「椅子に座らせてー」
その時にはセブンイレブンの店長さんも出てきていて
「中に椅子がありますから、そちらに」
と誘導してくれました。
ピザ雄が背後からおばあさんを抱えたまま、よちよち歩きで椅子まで連れていき、ゆっくりと座らせてあげました。
店長さんに「こちらの方、ご存知ですか?」と聞くと
「はい。いつもお越しのお客様です」
と言ったので、ちょっと安心。
だっておばあさんは手荷物も何も持っていなかったので、どういう経緯でコンビニの前で転んだのかさっぱりわからなかったんですもの。
おばあさんに
「大丈夫ですか?荷物は何もないんですか?」
と聞くと
「荷物はないの。タバコを買いにきただけだから」
ピザ雄がもう一度
「ダイジョウブ?」
と聞くと
「大丈夫。ありがと」
そして、私たちがお店を出るころにはおばあさんの姿は消えていました。
おばあさん、どこに住んでるんだろうね?
一人暮らしなのかな。
誰か面倒見てくれる人がいないと大変だよねえ。
なんて話をしながらお店の外に出ると、おばあさんが1ブロック前方を歩いているのが目に入りました。
チョコチョコ歩きだけどスピードは結構早い。
あーあそこにいる。大丈夫かな。
と見ていると、ドリンクの自動販売機で何か飲み物を買って、またチョコチョコと歩いて去っていきました。
あーびっくりしたね。
とピザ雄に言うと
「消防士はああいうの100万回ぐらい経験してるから、別にびっくりしない」
と言われました。
そうか。
まあそりゃそうね。
それにしても通りかかった人たちが一斉に駆け寄ってきて、自分達の荷物を地面に放り出して、それぞれがおばあさんの横にひざまづいて助けようとしたのには感動したなあ。
最初の男性なんて、バックパックや紙袋と一緒に火をつけたばかりのタバコを地面に放り出して一生懸命助けようとしてました。
みんな本当にいい人たちだ。
うむ。
世界の未来は明るいな!