↑エンパイアはいつもキラキラだ。

 

 

 

さて、今日は皆さんお待ちかねの(?)昨日の続き『あのホテルでこんなことが・・・2』です。

 

昨日も書きましたが、以前は旅人やビジネスマンの活気やエナジーに満ちてキラキラしていたロビーは、照明を落としているのか、あるいはレストランやカフェに出入りする人が少ないせいなのか、どことなく薄暗く活気がない。

そして、ドアマンも素人臭く、ドアを開け閉めはしてくれるけれど、以前のような上品なスマイルと「グッドアフタヌーン」という言葉もありません。

以前はランチを食べるために訪れても、ササササッとドアマンが出てきてドアを開けながらグリーティングしてくれたし、フロントスタッフやポーターがロビーを行き交う様子にも活気が満ちていました。

でも、今はそういう様子は全くなし。

出迎えがなかったのは夜遅い到着だったからかなと思っていましたが、人手不足なのかもしれません。

 

ちょっと小姑っぽいかもしれませんが、部屋に備えつけのマグカップにヒビが入っていて、お茶を淹れようとお湯を注いだら受け皿にお湯がシミシミと漏れていたのにも結構びっくりしました。

それから、今時ホテルのWi-Fiが無料じゃないのもびっくりしました。

チェックインしてすぐにWi-Fiに繋げようとしたけれど、パスワードが見当たらず、

「Wi-Fiのパスワードは何ですか?」

とフロントに電話で聞くと、夜担当のフロントマンさん

「1日10ドル。部屋番号とラストネームを入力すれば繋がります」

とちょっと紋切り型口調でした。

ああ。

本当にあのキラキラホスピタリティは今どこに・・・。

と切なくなりました。

ちょっと豪勢なランチをフンフンと食べに行くのも、ここの地下レストランが多かった。

いつもお客さんで一杯で人気があったけれど、落ち着きのある雰囲気がよかったし、スタッフのみなさんのお出迎えもサービスも素晴らしく、お料理も美味しかった。

もう20年ぐらい前の話だけど、ロビー奥にあるカフェのカレーライスが美味しくて、地元日本人は「あそこのカレー!」と密かに愛でていたものでした。

それもみんなクローズ。

悲しい。

 

 

とはいえ、ベッドはフッカフカだしお部屋は広いし、お部屋の中は本当に快適だったんです。

ハウスキーピングもDo not Disturbサインを出しておけば静かに放置してもらえるし、一夏の間放浪した時に泊まったセントラルパーク近くのウェリントンホテルのようにメイドが割れ鐘を叩くような大声でおしゃべりをするということもなく、ホテル内はとても静かで快適でした。

 

 

ところが、明日はコンちゃんちにお泊まりというホテル滞在最終日の夜のことです。

出先から戻って足の治療をしてブログを書いたりいろんな書き物をして、さあもう寝ようかとベッドに入ったのが午前12時半ごろ。

ちょっと携帯で遊んで、さてもう寝るかね、と思った午前1時過ぎごろにチーン!とエレベーターのドアが開く音が聞こえてきました。

そしてほどなく、隣の部屋の人が戻ってきた様子で男性のゴホンゴホンという咳き込むような声が聞こえてきました。

この人の部屋は私の隣の角部屋ですので、私のドアと彼のドアはちょうど角角で斜めに向かい合うような位置関係。

彼がドアを開ける時は、私のドアの前に立つわけですから、物音もよく聞こえてきます。

特に耳を澄ませていたわけではないのですが、かなり大きな声でゴホンゴホンと咳き込んでいる声がベッドまで聞こえてくるな・・・と思った次の瞬間、聞こえてきたのは・・・・

まあ、つまり、その人はかなりかなり酔っ払っていらした様子で、自室のトイレまで間に合わず・・・・という物音が聞こえてきたわけですよ。

 

最初、「は?」

と我が耳を疑いました。

いやちょっと待ってよ。

そこ、部屋の前だよね。おじさんの部屋の前だけど、私の部屋の前でもあるし、そもそもホテルの廊下だよね?

酔っ払ってるから仕方ないかもしれないけど、いやいやいやいやちょっとほんとにちょっと勘弁してくださいよ。

と思いつつ、もうあんまりにあんまりな物音にウワーっと耳を塞いでお布団を頭までかぶってしばし耐え忍びました。

 

そろそろ大丈夫かなあ、とお布団から頭を出すと、なんということでしょう。

今度はドアの外から聞こえてきたんですよ。

ゴオオオオグオオオオオーといういびきが。

 

え?

え?

ね、寝てる?

酔っ払ってキボヂワルグナッデ挙げ句の果てに部屋に入る前に?

ドアの前で?

おじさんのドアの前でもあるけど私の部屋のドアの前でもある、ホテルの廊下で?

寝てるんですか??

 

これがまたものすごい大音量な上に、いっかな終わる気配がない。

しばらく待ったら目を覚まして部屋に戻るかしらんと思いましたが、そういう感じがしないほど泥酔熟睡状態な気配です。

かといって部屋のドアを開けて様子を見るのは色々といやだし、うわあ、どうしようどうしよう。

しばらく様子を伺ってみましたが、いびきの音量は増すばかり。

これなあ。

ただ単に酔っ払って具合悪くなった挙句に廊下で寝ちゃっただけならまあ、近所迷惑はともかくとして、命の危険はないかもしれないけど、まま万が一脳梗塞とかなんとか、そういう感じの具合の悪さだったらちょっとまずいかも?

と思い付いたら今度は心配で不安でドキドキしてきました。

 

これって普通ならセキュリティーガードが夜中に各階を見回って発見する可能性もあるけど、どうもこのご時世、人手不足でもしかしたら朝メイドが掃除に来るまで発見されない可能性もあるかも?

それにそもそも、どう考えてもおじさんは私の部屋のドアにもたれていびきをかいているとしか思えない感じだったので、気になって眠れやしません。

もうたまらん。

フロントに電話して誰かに来てもらおう。

 

早速受話器を取り、フロントに電話をかけました。

 

が。

 

誰も出なーい。

待てど暮らせど誰も出なーい。

ゲストサービス、ハウスキーピング、ルーフトップバー、フロント。

全ての内戦に電話をかけまくりましたが、誰も出ない。

それならば、と自分の携帯からホテルの電話番号にかけてみましたが、これも出ない。

もうやけくそで、内線電話をスピーカー状態にして鳴らし続けました。

最終的にフロントの人がやっと出るまでに、トータルで20分は絶対に待ちました。

下手すると30分ぐらい待ったかも。

ホテルって、ホテルって、こういうもの?

夜中にフロントスタッフがいないって、いいんですか?

それも安宿じゃなくて、5つ星ホテルですけど、いいんですかこんなことで?

 

電話に出たのは陽気で親切な女性スタッフ。

膝を怪我したので冷やすための氷をくださいと電話をした時は「オーノー!大丈夫!?」とちょっと笑いながらすぐに氷を手配してくれた時と同じ人のようでした。

 

酔っぱらいおじさんの事情を説明すると、さすがにびっくり仰天して

「ええ?ドアの前で?眠ってるんですか?」

 

「はい。いびきが聞こえてくるし、その前の色々な物音もすべて私の部屋の前だと思います。超嫌だからドアを開けて確認したわけじゃないけど・・・」

 

「オーノー!すぐにセキュリティーを送ります!」

 

そして5分ほどでエレベーターが開く音と、セキュリティーの男性が

「サー。サー。大丈夫ですか?起きてください」

と泥酔おじさんに声をかけているのが聞こえてきました。

あー気の毒。

泥酔していたらしいおじさんは、まさしく酔っぱらいの典型のような

「ん?あ?え?ムニャムニャムニャムニャ」

という言葉にならない言葉を発していましたが、そのムニャムニャは英語。

うわー。アメリカ人なんだ!

アメリカ人もこんな醜態を晒すまで酔っ払うんだ!

 

とりあえずきちんとおじさんを部屋に収納する様子を確認するまでは、私も安心できません。

耳を澄ましていると

「サー。ドアを開けますからね、部屋に入ってください。大丈夫ですか?」

というセキュリティーの丁寧な声が聞こえてきて、程なくドアがバタンと閉まる音がしました。

うーん。しかし大丈夫かなあ。おじさん、部屋の中の床でまた寝るんじゃないかな?

と思っていると、セキュリティーも同じように感じたのか、すぐにまたドアをノックする音と、マスターキーでドアを開ける音が聞こえてきました。

 

「サー。大丈夫ですか?」

セキュリティーの言葉に、部屋の奥からまたもやムニャムニャホニャホニャという酔っぱらい声が聞こえてきたので、ああとりあえず生きてる・・・・と私もセキュリティーもほっと一安心。

セキュリティーもすぐに部屋を出ていきました。

そしてほどなくお掃除の人がやってきて、部屋の前を清掃している音も聞こえてきました。

あー本当に気の毒。

そうそう。セキュリティーがやってきておじさんを助け起こしている時に、フロントデスクからも電話がありました。

 

「セキュリティーを送りましたので、10分以内に清掃も完了して静かになると思います。本当にベリーソーリー」

 

いやー。

これは本当に不可抗力。ホテルの責任ではないし、ホテル側もきちんと対応したと思います。

セキュリティーも夜中の清掃もお気の毒でした。

 

でも、翌朝のチェックアウトの時、フロントの人から何か言われるかなと思ったのに、一言もなし。

「昨夜、私の部屋の前で何があったかご存知ですか?」

と私から切り出すと

「あ!はい!大変申し訳ございませんでした!お客様のお加減がお悪くなられたみたいです」

 

とまあ、そりゃそうですよね。

お加減が悪くなったからああいう騒ぎがあったわけだし、まあ本当に全員お気の毒でしたけど、ちょっと思いましたよ。

超一流ホテルならば、客から切り出す前に

「昨夜は大変なご迷惑をお掛けした旨、申し送りがございました。本当に申し訳ございませんでした」

とかいうもんじゃないかしら?

私、小姑っぽいですかね?

 

まあそれもこれもこうしてネタにさせていただいたので、結果オーライだし、あの泥酔おじさんも今頃は元気一杯お仕事してるといいなあと思いますけどね。

いやー。しかしびっくりした。

ネタにはしたけれど、もうああいう経験は二度とごめんです。

 

何にせよ、3年ぶりのニューヨークは実家に戻った感と、あれ?なんかちょっとあれ?エナジーのベクトルがちょっと違う?

という、少し切ない感じで一旦終了。

つくづく、コロナが世界を一変させたんだな、と深く深く感じましたよ。