なれそめー53ーの続きです。
最終決断がどうのこうのとちょっとは考えたのは考えたのですが、何せ久しぶりのポール様(マッカートニーの方)。
それまでの日々が暗くて辛くて悲しいことばかりだったので、久しぶりの高揚感は半端なく、まあその辺のことはライブが終わってから考えよう。
ということで、ルンルンルンルンでバッグにお財布を詰め込み、トコトコとフェンウェイパークに向かって歩き始めました。
遠いかな?歩けるかな?
とちょっと不安でしたが、同じ方角を目指して歩いている人々の大半が絶対ポールライブを目指していることがわかり、俄然勇気が出ました。なぜわかったかって?そりゃもう奥さん。みんなビートルズやポール様のTシャツを着ていたし、ライブに向かうウキウキ感がみなぎっていましたもの。
二日間ライブの2日目チケットを購入した私は、あっそうだ、もしかしたらダフ屋か何かから当日券を買えるかも!と思いつき、さらに急ぎ足になってフェンウェイパークを目指しました。
徒歩約20分ちょいぐらいでしょうか。
橋を渡ったり交通量の多い通りを渡ったり、一人だったらちょっと歩くのは勘弁してもらいたい感じの道のりでしたが、周りのビートルズファン・ポール様ファンたちと一緒に歩くのは結婚楽しかった。
ライブ会場にたどり着くと、フェンウェイパークの前にはチケットピックアップのテーブルがずらりと並んでいました。
ほんの10年ほど前のことなのに、現代の厳戒態勢厳しいライブ会場とは全く様子が異なり、野球場の外にテーブルを並べてチケットピックアップのお客たちを待っている様子はローカル色プンプン。
へえ。
こういう感じなのか。
と遠巻きにして見ていると、なんだか当日券を売っているぽいテーブルが端っこの方にあるではありませんか。
スススと近寄って
「当日券はありますか?」
と訊くと
「うーん・・・うーんんん・・・」
と私の顔をジロジロと見るお姉さん。
な、何?
「そうねえ・・・・」
何ですかその間は。
「1時間後にもう一度来てくれる?」
「そうしたら当日券が買えるの?」
「ギャランティーはできないけど・・・もしかしたら・・・多分・・・」
そうか!
1時間後なら、っていう理由がよくわからんけど、買えるものなら買いたい!
よし、戻ってこよう!
時間を潰すのは大得意な私。
会場周辺のスーパー偽物丸出しなポール様Tシャツとか、ライブというとなぜか必ず売られているわけのわからんタオルとかをジロジロと眺め、会場を8周ぐらいしたところでもう一度当日券売り場に戻ってみました。
すると、さっきのお姉さんは姿を消しており、おじさんが一人ポツネンと座っていました。チケットを取るのに死ぬほど苦労したのに、なぜなのここには誰もいない。
「1時間ぐらい待てば当日券が出るかもしれないと聞いて戻ってきたんですけど」
「うーん・・・当日券ねえ・・・ううーん・・・」
またそれか!
何なんですか一体。
「そうだね。まあ今日はもう大丈夫かな」
は?
「じゃあこのチケットを買うかい?」
見せられたチケットは、なんとおくさんアリーナの最前列から三番目。右側に寄っているけれど、前から三列目!
えええええええええええ!これ?この席???なぜこんな良い席が当日に???
しかもお値段は135ドルほど。
えええええええええええ????
「あの・・・これ・・・・」
思わずおじさんとチケットを交互に見ると、おじさんが
「これね。ハンディキャップ専用の席なんだけど、今日はもうこれ以上車椅子は来ないみたいだから」
おおおおおおおおおお・・・・そうなんだ・・・・
「すごく・・・すごく良い席ですよね・・・」
「よかったね。君はラッキーだ」
おじさんがグッと親指を立ててウィンクをしてくれました。
嬉しい。
嬉しい。
うれしいうれしいうれしいうれしい。
ああ
こんなに嬉しい気持ちになれて、それにずっと一人で浸れるなんて本当にどれぐらいぶりだろう。
この後、何も怖い事なんて起こらないってわかっている喜びの瞬間を100%楽しめるなんて、本当に本当にどれぐらいぶりだろう。
ありがとうありがとう!と繰り返すと、楽しんでおいで、とおじさんが背中を叩いてくれました。
<どんなに良いことが起きても、いつ何時奈落の外に落とされるかわからない日々がどれほど不健康だったか。ポール様のお陰で思い至ることができました。ポール様ありがとう>(←念の為、マッカートニーの方ね)