ヒマポとの電話を切ってからも心臓がドキドキして手が震え、その夜は悪夢ばっかり。
翌朝は、よくあるあの気分ですよ。
目が覚めた瞬間襲ってくる、いいようのない喪失感。
私の中ではあれは、極端に寒い冬の朝の気分に似ています。
肌を刺すような冷たくて痛い空気が胸の中に流れ込んできて、ポカッと穴があいたような果てしない孤独感に変化する、あの2度と味わいたくない気分。
あれがやってきました。
はー。
ため息をつきながら、受話器を手に取りました。
その昔ヒマポに紹介されたセラピストの先生に電話をかけたのです。
実を言うと、それまでにも別のセラピストには時々セラピーを行なってもらっていたのです。
長年続くヒマポのいじめがあまりにもひどくて、時々耐え難くなるとセラピーに行く。これを繰り返していました。中年のおじさん先生はビジネスライクな態度だったけれど、私の使うヘンな英語がいたくお気に入りだったようで、時折私の言葉を真似てみたり「他のクライアントにも君の言葉を言ったら、とてもクールだと言っていたよ」と笑って教えてくれたり、結構優しい気の良い先生でした。
この先生は政府機関とコラボしている団体に所属しているセラピストたちの一人で、クライアントの経済状況によってセラピーの費用を抑えてくれるというとてもありがたい先生でした。
けれど、この先生のセラピーはあくまでもトークセッション。つまるところ私の愚痴を聞いてもらってちょっとすっきりして帰る、という感じのものでした。
だけど、ヒマポの非情な仕打ちが立て続けに起こり、駄目押しでメールの件があったことで私の心は完全にポッキリ。とにかく、『一日も早く立ち直りたい!』という気持ちから、藁にもすがる思いで超一流ヒプノセラピストG先生に電話をかけたのでした。
ヒプノセラピーならなんとかなるのかな。
いやもうこの際、ヒプノだろうが黒魔術だろうがなんでもいい。
早くこの苦しい状況から抜け出したい。
予約の電話をかけると、G先生本人が出てくれました。
私のこと、覚えていますか?と聞くと
「もちろん覚えているよレイコ。どうしたの?」
G先生はつるっぱげで巨漢でお腹が異様に出っ張っていて、イケメンのカテゴリーには全然はいりませんが、声は本当に渋いイケメン。
先生の声を聞いただけて涙腺が緩みそうになりました。
「実は、ちょっと色々あってセラピーを受けたいんです」
と言うと、それ以上は何も聞かず翌日の午後にすぐ予約を取ってくれました。
「安心して。彼のことなら、僕は彼自身より彼のことをよく知っているからね」
こう電話口で言われました。
ヒマポのことで相談があるのだと、G先生はとっくに気づいていたのです。
なぜなら、私の知らないところでヒマポもまたG先生のセラピーを受け続け、それはそれはいろんな話を先生にしまくっていたからなのです。
その話の内容が私の耳に入ることになるとは夢にも思わなかったヒマポは、私のおかしな態度が気になり始めたのか、その日以降ほぼ毎日のように電話をかけてくるようになりました。
一方、先生とのセッションを楽しみにして結構穏やかな眠りについた私の元に、翌日またもや怪しいメールが届いたのです。
<またこんな終わり方かいな!誰だよメール!! つづく>