ハリファックスの女性からのメールが私に届いたなんて夢にも思っていないヒマポ。

この頃は、私からかけた電話をヒマポが取ることはほぼ100%なく、もっぱら彼からかかってくる電話を私が取ることでしか連絡がつきませんでした。

土砂降りの中でひどい仕打ちをされましたが、当分の間ヒマポから電話がかかってくることもメールがくることもないだろうなと予測はついていました。

私のことをあまり好きじゃないからなのかな、と当時は思っていましたが、そりゃ他に何人もの女性とデートを重ねていたら、そんな時間はないに決まっています。それに、ひどいいじめを繰り返していた相手は私一人だけだったわけですから、どちらかというといじめるために私と会っていたのかもしれません。

 

デートサイトのアクセスやメール交換、浮気旅行の写真を見ても、なぜなのでしょう、なんとなく現実味に欠けていたものが、ハリファックスのおばさん女性からのメールを見て、裏切られているという事実がにわかに現実味を帯びてきました。

メールをハッキングすれば、絶対にもっとでてくる。

それも現在進行形の浮気が。

と思いました。

それに、たとえどんなに精神的に追い詰められていたとしても、自分以外の人のメールを盗み読みするというのは、確実に自分の品格を落とす行為。

やめたほうがいいよ。ロクなことないよ。

あいつと同じ場所まで落ちるよ。

と頭の中では色んな戒めの声が響きましたが、でもとっくのとうに心は決まってしまっていました。

 

こうなったら全て暴いてやる。

そして、あいつに三行半を叩きつけてやる。

 

あの時、自分がどんなに醜い顔をしていたか、想像するだけで肺が痛くなります。

でももう止まらない。

ここらへんで皆さん、きっと思ってらっしゃいますよね。

『リンコさん、なんでメールハッキングなんてできるの?』

って。

まあ色々と事情はあるのですが、多分ヒマポ相手なら、メールハッキングはそんなに難しい行為ではないと思います。

だって彼はまずもって、マックのラップトップを使っているくせに、メールソフトを使わずにずっとウェブメールを使っていたんです。それに暗証番号だって彼の性格をよく理解していれば、多分10回以内のトライアルでアクセス成功します。

現に、私は2度目でヒット。

しかもそれはとある女性の名前でした。彼の『過去の友達』としてよく話に出てきた女性でしたけど、多分彼女とも色々関係があったはず。そして、心の底で私はそれを感じ取っていたのです。だからパスコードを想像した時に、彼女の名前かも、とすぐに思ったんです。自分の名前やチョビの名前かもしれないなんて夢にも思わなかったし、実際そうでなかったところが惨めさ200%です。

 

その人の名前が暗証番号としてヒットした時、「あーこりゃまずい。もう本当にまずい」って思いました。

そして、自分で自分に言い聞かせました。

どんなにひどいことをされたからと言って、他人のプライバシーに土足で踏み込む行為を今からするのだから、これを最初で最後にしよう。そして、見たものは全て彼に告げよう。

たとえ彼が浮気をしていたという証拠がそこになかったとしても、(そんなこと絶対にありえないと思っていたけど)

「あなたのメールアカウントに侵入して、全部読みました。ごめんなさい。ではさようなら』

と謝ろう。

電話なら即切り。

もしかして面と向かって告白するハメになったら、走って逃げよう。

と決めていました。

しかしなあ。

この世の中で、こういう状況に置かれてメールを読む誘惑に勝てる人っているのかなあ。

いや。いるのかもしれないな。

もっと言うなら、こんなことをしたら自分がもっと傷ついてもっと嫌な気分になるってわかりきってるのにやるなんて、私ぐらいなのかもなあ。そもそも、こんな状況になるまであいつと付き合ってきた私って、真剣に終始一貫してバカだわー。

誰か止めてくれないかなあ。

後ろから羽交い締めにして、止めてくれないかなあ。

心の中も土砂降りです。

 

カチとマウスをクリックし、ダダダダーと出てきた彼のメール受信箱。

それは、私の想像をはるかに超えるものでした。

 

<この後のヒマポの対応が、人間離れしていたぞ!待て、次号!>