音も気配も全てをかき消す激しい雨音で、背後から何かが近寄ってきたことに全く気づかなかった私は、突如車が横付けされたことに気づき、正真正銘チビりそうになりました。

ギクッ

と見ると、それはヒマポの車。

いやだ!

まさか追いかけてきた??

当時、頭がおかしかったヒマポとはこういうシチュエーションにはまることが多々ありました。

ヒマポが突然暴れ出し、私が走って逃げる。というパターンです。

でも、多分意外と女心を深読みできるヒマポは

『こういう時に男が追いかけると思うなよ。僕は絶対にそういうことはしない男だ』

と、『俺は最低の男だ』と言ってるようなもんですが、とにかくイヤーな顔と声で宣言する男だったし、私もまた追いかけられるのが大嫌いなタイプでしたので、どんなにひどいシチュエーションでも、彼が追いかけて来たとか、ましてや慰めたり謝りに来たなんてケースは一度たりともありませんでした。

なので、車が音もなく近づいてきた時、一瞬

「車で当て逃げされる!?」

と真剣に思いました。

今思うと、そこまで信用していない人間と付き合う自分も自分だと思いますけどね。

ビクッと振り返ると、運転席から私をジーっと見ているヒマポ。

なんか。

ちょっと。

マジでこわいかも・・・。

無言でしばし睨み合っていましたが、私が車に近寄り、ドアを開けて乗り込むという行動を取らないのを見てとると、フンッと肩をすくめ、そのまま私の脇をガーーーーッと走り抜け、あっという間に走り去って行きました。

明らかに、私から歩み寄ることをするはずがないことは百も承知で、俺は一応近寄ったからね。乗り込んでこなかったのはお前の選択だからね。

という、意地悪の上に意地悪を二重三重に上塗りするひまぽの典型的な意地悪作戦です。

 

それにしても、なんという底意地の悪い行動・・・。

いなくなるなら黙っていなくなればいいのに、わざわざ去っていく後ろ姿を見せつけるなんて、私がそこまで何か悪いことをしたんでしょうか・・・。(←してねえよ!)

大雨の中、走り去っていく車のテールランプを見ていると、雨なのか涙なのかもう何がなんだかわからないけれど、視界がぼやけて頭の中までぼやけてきました。

まあ・・いいか・・・。

追いかけられてもめんどくさいし、これ以上一緒にいても話にならないしね・・・。

心の中でつぶやいたのか、あるいは思わず口に出てしまっていたのかもしれませんが、そう自分に言い聞かせ、またモソモソと歩き始めました。

 

次の行動を考えず、しばらく雨の中を歩いていると、ようやく見覚えのある場所に出てきました。

あれ。

このガススタンドとマクドナルドは確かFラインの駅から徒歩10分ぐらいの場所?

洗車場も見覚えがあるし、怪しいデリも見覚えがある。

やれやれ。

駅まではまだちょっと遠いけど、やっと人気のある場所に出てきたよ。

雨脚は弱まることはなかったですが、見覚えのある場所に出たことでちょっと心が温まる心地になりました。

帰宅後、さらに背中に氷水を流し込まれるような出来事が起こるとは、夢にも思わずに。

 

<新元号はレイコワンワンで記憶一発! つづく>