リン父、介護棟に移ってからも相変わらずデカ声で元気いっぱいです。

とはいえ、移動直後は完全に緊張の糸が切れた状態だったらしく、施設のみなさんにもとってもご心配いただきました。当時は、『介護棟に移ったからには息をするのもご飯を食べるのも、誰かにかわりにしてもらうで!』ぐらいの勢いで、全てにおいてやる気ゼロでした。

「元気出して楽しく暮らしてよ」と電話で励ましても

「元気が出んのや」と情けない答えしか返って来ませんでした。

体を動かさないと脳の働きも衰えるのは当然で、一時は「ああこのままボケ老人路線まっしぐらか・・・」と思えるほど調子がガタ落ちな父の様子にがっくり来ていましたが、なぜでしょう、ここ1週間ほどで突然調子をあげてきました。

訪ねて行くと、廊下で直立不動訓練(もちろん手すりに捕まっているし、腰は直角近く曲がっていますが)をしたり、廊下を行き交う人たちを観察して楽しんだり、じっくりと新聞を読んだりテレビを見たり、と徐々に以前の生活を思い出し、取り戻しつつあるようです。

 

また、そんなリン父と日々接していると『高齢者だからと言って何も感じたり考えたりしていないわけではない』というごく当たり前のことをついつい忘れてしまいがちな自分に気付かされます。

若い人のようにサクサクと舌が滑らかに回らないお年寄りは、返事もスローだし、思考のスピードもスローです。でも、だからといって言いたいことがないわけじゃないし、何かを考えたり感じたりしていないわけでもないのに、ついつい返事が遅いからとこっちで勝手に返事をしてしまったり、きっちりと意見を聞かずに勝手に物事を進めてしまったり。

黙っているからといって、意見や好みがないわけじゃないのに、後から聞いて「実はいやだった」と言われると、ああしまった・・・と申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

何かを嫌がったり文句を言ったりするのを聞くと、ついつい「ワガママを言ってる」と決めつけてしまいそうになりますが、よくよく話を聞けばリン父にはリン父のちゃんとした理由があるんです。

なのに、それを理解しようともせず「ああはいはい」と流したり「ワガママを言わずにちゃんとして」とお説教したりしてはいけないなあ、と日々反省もします。

とはいえ、ついこの間も「メガネがないんや!玲子が来ると物がなくなる!」と決めつけられた時はさすがにブチキレしそうになりましたけどね。

それも後になってよくよく聞くと、なくなったのはメガネじゃなくて髭剃り。

しかも、デイサービスに出かける時用のバッグにきっちりと入れてあったんです。

「メガネと髭剃り間違うな!!」

と言うと

「うわっっはっはっはっははは!!ほんまやな!!!」

と大声で笑ってくれましたけど、まじ、メガネと髭剃り、全然似てないやんか!