リン父から電話がありました。

毎日電話はかかってくるんですが、特に用事のない日などは電話は三十秒ぐらいで終了することもあります。

何せ男親と娘って、日常的にそこまでコミュニケーションがありませんでしたので、リン母がスタコラサッサとどっかに行っちゃってから急激に父と娘のコミュニケーションが増え、お互いにちょっと戸惑い気味です。

 

本日は出だしがスリリングでした。

 

「今日はねえ。なんかおかしなことが起こってなあ」

 

「え。おかしなこと?」

 

「ごっつい変なことやねんけどな」

 

「え」ドキドキ

 

「神戸市水道局たら言うところからなんかわけのわからんもんが届いとるんや」

 

「神戸市水道局たら言うところ、って水道局じゃないの?普通の」

 

「うんまあそうやねんけどな」

 

「その普通の水道局からどんなわけのわからんものが届いたと?」

 

「それがやなあ。ほんまにわけがわからんのやけどな。とくそくじょうたらいうわけのわからんもんが届いてやなあ」

 

とくそくじょうたら言う、ってああた。それはただ単に督促状なのでは?

 

「なんでこんなおかしなもんが来るんや?」

 

来るんや?って私に聞かれても

 

「大体やなあ、先月もなんか知らん変なもんが届いとったんや」

 

「どこから?」

 

「だからその水道局たら言うところからやがな」

 

「・・・変なもんって、何?」

 

「わけのわからん請求書が来たんや」

 

「で、それをどうしたの?払ったの?」

 

「払わん」

 

払わん。て言い切られてもおとうさん。それは払ってなければ督促状が来るのは当たり前では?

 

「ええ?」

 

ええ?

ってそんな頭のてっぺんから出るような声で言われても。

 

「え?これ?私が払うの?」

 

私が払うの?って他の誰が払うと?

道端のホットドッグ屋のおじさんが払ってくれるとでも?

 

「私は知らんでこんなもん」

 

つまりこう言う事情です。

今現在父が住んでいるマンションは、私が里帰りをしていたリン母とリン父が住んでいた住まいとは別の場所ですが、元の住まいのお掃除や修理の作業中、閉めていた水道栓を開けて水を使っていたわけです。

そして、私がNYに戻る前日に水道の元栓を閉め、水道局に連絡をし、使った期間の請求書を父のところに送ってもらうように手配しました。

もちろんそのことを父には伝え、「コンビニでも支払いできるから、ちゃんとしてね」と言うと

「おおよっしゃよっしゃ!わかった!」

とニコニコで請け合ってくれたんです。

そしてその件の請求書が来た時、支払い関係をすべてリン母に丸投げにしていたリン父は、封筒をバリバリバリッと破り開け、中身が請求書ぽいなと見るや『自分は関係ないわ』と思い込み、そのまま郵便物入れに放り込んで忘れ去っていたというわけです。

 

「言ったじゃん、私。帰る日の朝に!水道局から請求書が来るから、コンビニで払ってね、って!」

 

「えー・・・あーそういえばそんな話もあったような気もせんでもないなあ!」

 

膝をパーンと叩く音とともに、わっははははーという笑い声。

 

 

いいんですけどね。

はい。

元気で機嫌よく、自分の失敗も笑い飛ばしてくれる父でいてくれれば。

はい。

水道局さん、すみません。もうすぐお支払いしますから、お許しください。