百万回繰り返される女性の合成音声は、夜中というか明け方というか、とにかくイレギュラーな時間帯に聞くと結構ブキミなものです。
寝入り端を襲うブキミな合成音声で、心臓がまたもやバックバク。
マジで火事なのか?それとも故障?緊急事態だとしたら、一体どうすれば?
またもや脳内で、大量のお年寄りをレスキューするシミュレーションがグルグルし始め、いよいよ目が冴えてきました。
そして、時間にしておそらく12ー3分ほど経った頃、またもやスピーカーから異音が。
ガサーゴソッ
ブチブチブチッッ
ビーガガガガガー
シーーーーーーーーーーーン・・・・・
ああ・・・
一体全体どうなっているのか、誰かなんとか言って欲しい・・・
いよいよもって廊下に出て様子を見てこようかと思い始めた頃、またスピーカーがガサッッと異音を発しました。
「あー。あのー」
お。男性の声が。
「えっと。先ほどの、あのアレですが」
先ほどのあのアレってああた。
警備員さんだよね、これ。
緊急放送だよね、早朝のね。
それで『先ほどのあのアレ』はいくらなんでも・・・。
「あのー。つまりまあ、簡単に言いますと警報機の不具合で。あのー。はい。誤作動というようなことで」
ブッ、という音とともに放送終了。
『簡単に言いますと』って。
『つまりまあ』って。
『誤作動というようなことで』って。
意地になって目を閉じたまま思わず呟いてしまうわけのわからなさ。
そもそもこのこんなバカみたいな緊急放送を早朝に流していいんだろうか?
お年寄りの皆さんは午前五時なら起きてるだろうからまあいいか?って思ったのかしら?
少なくともリン父は五時には起きないけど?
疑問がグルグルと渦を巻き、完全に目が冴えてしまったので仕方なくトイレに行きました。
そして、ベッドに再び潜り込み、せめてあと2時間は安眠させてくれ、と祈りながら目を閉じました。
果たせるかな。
後からご近所のご婦人から聞いたところによると、五時四十三分だったそうですが、再びスピーカーから大音響で警報が鳴り響きました。
もちろん女性の合成音声です。
ひいええええええええええ〜〜〜!!
あっという間に二度寝していたわたくし。
びっくり仰天して飛び起きましたとも。
またか!
また誤作動か!
そして、なぜに直後でなく数分後なのかよく理由はわからないのですが、またもや警備員らしき人のアナウンスが流れました。
「あのー。えっと、さっきからのアレ、あの、警報なんですけどね」
立ち話してるわけじゃないんだから、もう少し緊張感のあるアナウンスにしてもらえないもんだろうか。
「あれは、なんというか、言ってみれば誤作動みたいな感じでした。はい」
ブツ。
放送終了。
・・・・・・。
『誤作動みたいな感じ』って。
『言ってみれば』って。
そんな『感じ』なことで早朝から叩き起こされたわけですか、私たちは。
結局、この日の火災報知器劇場は、この消火器を抱えて息を切らして消火活動しようとしているラーメン屋のおじさんを『あんた大変やなあ』とタバコをくわえて眺めている隣のおっさんが他人事で言ってるみたいな、120%納得できない放送で幕を下ろしました。
翌日、リン父に
「今朝のあの騒動は何だったの?」
と聞くと
「ほんまじゃ!なんやあれは!後で文句いうたろ」
と嬉しそう(としか思えない)な表情で言ってました。
そして、実際に事情を聞いたらしいのですが、私へのリン父の説明は
「なんか知らんけどガス漏れがあったらしいで」
というシンプルなものでした、
「えええ。どこかのお部屋でガス漏れがあったっていうこと?実際に?」
と問い返すと
「なんやようわからんねんけど、そんな感じの話みたいやで。知らんけど」
という、全くもって納得できない説明で強制終了しました。
わけわからんがな、なんじゃあれは!
といきり立っていたリン父の説明もわけわからんがな100%ですが、そのあたりは本人は全然オッケーらしいです。
そして、一連の出来事に納得がいかないまま取り残されたのは、どうも私だけらしく、廊下で出会ったご老人の皆さんは
「うるさかったわねえ」
で話が終わっているようでした。
まあ。
いいですけどね・・・・
火事じゃなかったんだし。
私も大勢のお年寄りをおんぶして逃げ惑わなくて済んだんだし。
ほんとに。いいんですけどね。。はい・・・。