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みみみみ、みなさーーーーーーーーーん!!!
警察から戻りました!!

今日もマシュー刑事は、ほっぺがリンゴの一休さんみたいでしたが、いつになくハイテンション。
ぱーっと階段を駆け下りて来て、
「久しぶり!元気でしたか?」
と満面の笑みでした。
もしかしてこれはやっぱりデートのお誘いだったのか?
と1/3秒ぐらい思いましたけど、そんなわきゃありません。

「じゃこちらへ」
と案内されたのは、やっぱり前と同じ二階の刑事詰め所。
階段を上がりながら
「あなたの友達に電話を何度かしたんだけど、どうも僕の記録が間違っていたみたいで、電話が通じなくて……。それに、彼よりもあなたの方が犯人の顔をよくおぼえているっていう話だったので、まずはあなたに見てもらおうと思ったんですよ」
とマシュー刑事。
あなたの友達あなたの友達って、フンフンの名前はせっかくのアメリカンネームにも関わらず、結局ぜーんぜんおぼえてもらっていないみたいです。

二階の別室に通されると、そこは刑事の休憩部屋。
テレビもあるし、ウォータータンクに電子レンジ、オーブントースターなんかもありました。
そこにかけてください、
と言われて座った椅子がフカフカすぎて、椅子から落ちそうになり「ぎゃー」となりました。
いや。
柄にも無く、結構緊張していたんです。
とにかくあの事件のことを思い出すと心臓がバクバクするし、その上犯人の顔写真を特定するとなったら緊張も倍増です。

薄っぺらい紙ファイルを持って来たマシュー刑事。
「まずはこれから読み上げる内容をよく聞いて、何かわからないことがあったら質問してください」

へいへい。と返事して背筋を伸ばして聞きました。
でも心の中はドッキドキです。
緊張のあまり似ても似つかない超ウルトラデブのおっさんとか選んじゃったらどうしよう。
とか、
ヨン様似のイケメンドライバーの写真があったら思わず指差しちゃうかも、とか、まあそういう色々な思いが交錯して、落ち着かないことこの上無し。
挙げ句の果てに
「じゃあこの写真を見てもらって……」と言われて紙ファイルに手を伸ばそうとしたら、
「あっ。ちょっと待って!タイプミスが!写真を見る前にこの書類にサインをしてもらわなければならないんですけど、タイプミスがありましたので、ちょっと待っていてください」
と言われ、顔写真ファイルを前にヘビの生殺し。

待つ事数分。
やっとマシュー刑事が戻って来て、言われた通りにサインをし、
「じゃあ見てください。いくらでも必要なだけ時間をかけてもらっていいですからね」
と言われ、紙ファイルをそろそろそろ~~~っと開くと……









「コイツだっっっっっっっっっ!!!」



もう一瞬です。
0.2秒です。
一枚のプリントアウトに11人のドライバー達のガンクビが並んでいましたが、あいつの顔は一目瞭然でした!
いやー。もう二ヶ月以上時間が経ってしまったし、私ちゃんとわかるかなあ、って結構不安だったんですけど、見れば思い出すものです!!
他に気になる写真といえば、左の上のほうに居たこの世のものとも思えないほどヘンチクリンな髪型のおっさんとか、真ん中らへんに居た超ウルトラハッピーな笑顔のおっさんとかでしたが、いやいやいやいやいや。それにしてもいましたよいましたいましたあいつっ!
こういっちゃなんですが、11人の中でダントツのイケメンです。
動物園の中に一人混ざったクールガイって感じです。

実は今日の午後マシュー刑事からの電話で、おぼえている限りの特徴を伝えた時に、もしかしたらGPS機能ですでにおおまかな目星はついているんじゃないかな……と思ったんですが、そのあたりは定かではありません。
写真を見る前に読み上げた書類の内容で、
「他の目撃者と相談をしない」
とか
「事件当時よりも髪型や特徴がかわっている可能性がある」
とか
「顔写真の中に当人が含まれていない可能性もある」
とか色々説明をされた後に、
「僕が犯人が誰なのか知っていると思わないで、先入観無しに見てください」
と説明を受けたんです。
そう伝えることで、『もしかして間違ったら叱られるかも』と思ったり『嘘をついたと思われたくない』という余分な緊張感を生み出さないように、という配慮もあるのかもしれないですね。
いずれにせよ、見た瞬間
「あのヤローっっっっっっ!!ここにいやがったかっっっっ!!!」
となるぐらい瞬間的に目に飛び込んで来たので、配慮もへったくれもありませんでしたけどね。

それから、ああいう写真って、あまり長時間しげしげと見すぎない方がいいような気もします。
「コイツコイツ絶対コイツ100パーセントコイツ!」
と言い切ってから、少しの間11人のおっさん写真を眺めたんですが、どこからどう見ても違うけど、比較的動物っぽくないおっさんの顔が目に入り
「……いや……もしかしてあいつがちょっとやせて口ひげはやして髪の毛を丸坊主にしたら、こんな風になるかも……?」
なんてだんだん思えて来たあたり、恐ろしいです。
人間の心理って、なかなか侮れません。
自動的に脳内イメージを調整するんです、つじつまを合わせたり自分の中の不都合を消去するために。
この場合、
「言い切っちゃったけど、もしかして違ってたら……。早く決めすぎたかも……」
という不安が、似ても似つかないおっさんを『もしかしたら……?』と思わせたわけです。
でも、やっぱり何回見てもアイツはアイツ。

「では、その番号をこの書類に記入して、サインしてください」
と、いくつかの追加質問の後、そう指示されて書類にサイン。

「この紙に、その番号の写真を犯人の顔として特定した旨と、簡単に事件当時の状況を交えてその顔を特定した様子を書いてください。いくらでも時間をとってもらって構いませんよ」
と言われて手渡されたのは、11人のおっさん写真紙です。
裏返しにして
「はい。ここに書いて」
と言われ、なんか犯人のガンクビってもっと巨大な顔アップの写真を一人一枚ずつ手渡されて、並べて見比べるんだと思っていたのに、これじゃただの普通のプリントアウトな上に、裏になんか書けってああた、スーパーのチラシじゃないですかそれじゃ……。

でもしょうがないのでガンクビ紙の裏に色々と書き始めましたよ。
緊張のせいで文字はガクガクのヘロヘロですが、書いているうちに興が乗って来て、長い長い長い長い文章になりました。
部屋を出ていたマシュー刑事が戻って来て
「えっ。まだ書いてるのっ」
とびっくりしたぐらいでした。
すみませんねえ。一応ライターぽい人なもんで、文章書き始めると長くなっちゃって……。
「いやいや。いくらでも書いてください。時間は気にしないで、僕が部屋に戻って来たから書き終わらなくちゃいけないとかも思わないでくださいね」
リンゴのほっぺマシュー刑事がにこやかに言ってくれましたが、こっちは緊張で手が固まっている上に、書き始めたら止まらない止まらない止まらない。
紙の下の方は文字が小さい上にグジャグジャで、何が何やらわけがわからなくなりましたが、とにかく書きたいだけ書きまくってサインをしてマシュー刑事に手渡しました。

「オッケー。では下までお送りします」

……えっ。もう終わり?

「はい。ご協力ありがとうございました。この後は、あなた達の目撃証言を元に捜査をすすめ、間違いが無ければほどなく犯人逮捕となります。犯人が逮捕されたら、もう一度来てもらってマジックミラー越しに面通しをお願いすることになると思います」

うおおおおおおおおっっっっ。
来た!面通し!!!

「今日選んでいただいた犯人の顔写真は、絶対間違いないですか?」
と念を押され、
「POSITIVE!」と返事をしました。
「その言葉が聞きたかったんですよ!ありがとう!」とマシュー刑事。
へへ。
実はこの台詞、The 48 hoursで目撃者がガンクビ確認の時に言った台詞なんです。

ロビーまで送ってくれたマシュー刑事と握手を交わし、
「ではまた近々お会いしましょう、今日はご協力ありがとうございました」
と言われ、今日の犯人特定作業は終了いたしました。

はー。緊張しましたよー。
トラウマのせいもあってか、私としては異様な緊張ぶりでした!

この先、どういう展開が待っているのか!
待て!次号!!