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昨日はギリギリで奇跡的にとれたチケットを握りしめ、ナポリのオペラ座で『ラ・トラビアータ(椿姫)』を観賞してきましたよ。
オペラも好きなんですが、今回は特に、劇場が必見!というレビューをたくさん見たので、偶然チケットが取れて嬉しかったです。
……とはいえ、オペラに行く予定なんてなーんにも考えていなかったので、持って来たお洋服は敗れたジーンズとトレーナーだけ。靴も登山靴とスニーカーだけです。
チケットが取れた前夜、同じホテルに泊まっている紳士淑女の皆さんがオペラ座に出かける様子を拝見すると、皆さん蝶ネクタイにカクテルドレスというかなりフォーマルな出で立ちでしたので、いくらなんでもジーンズと登山靴はまずいかなあと思い、繁華街に出かけてスカートかなんかを300円ぐらいで買うことにしました。

とはいえ、初めての街でしかもイタリア語なんてほとんどわからないナポリで、どこのお店に入って何を買えばいいのかさっぱりわかりません。
適当にショーウィンドーを覗いて、ここならまあまあかなと思ったお店に入ってみました(300円のスカートにそこまで気合い入れるな)。
こぎれいなお店ですが品物のお値段はかなりお財布に優しい感じ。
そして売り子のお姉さんとおばさんの中間な感じの女性は、なんかもうとりあえずパンチ100%な感じ。
ガーっと派手なお顔にさらに濃いいいいお化粧をして、ド真っ青なボディコンピッタピタなミニワンピに包まれたお体はもうとにかくドカーンバリバリバリー。
「英語話せますか?」
と訊くと
「ちょっとだけ」とのことだったので、必死で値段を聞いたりサイズを聞いたりしましたが、ちょっとだけというのは彼女の場合1%ぐらいの意味だったらしく、ほとんど通じません。
もうどうにでもなれと思ってスペイン語で話しかけてみると、イタリア語とよく似ているせいかこちらのほうが通じました。
通じました、ってエラそうに言っても、たかだか数字とちょっとした単語だけですけどね。

で、300円とはいかないまでも、1000円ぐらいのスカートがあったので試着してみることにしたんですが、試着室に入ってゴソガサやっていると、外からお姉さんが「ハローシニョーラ」と声をかけてきました。
はいはいと外に出るとお姉さん、両手にいっぱいお洋服を持っているんです。
ニットのワンピースとかマフラーとかネックレスとかブーツとかコートとか。
「これを全部着てみろ」
と言うので(と思う)
いや。全部いらない。
と返事をすると、言葉が通じなかったのかそれとも通じないフリをしているのか、満面の笑顔で「あなたに絶対似合う」と私の体にお洋服たちをグイグイ押し付けてくるんです。
いや。ホントにいらないから。
と言うと、今度はおもむろにコート以外のお洋服を私に無理矢理持たせ、自分の手に残ったコートをぱぱぱっと着るんです。
そして、ぱんっぱんになった結構ボディコンのコート姿を鏡に映してうっとり。クルクルクルっと何度か回ってみたりして、自分の姿に見とれています。
両手を拡げたり、腰をクネッとさせたり、胸元をグイイっと拡げてみたり。
もうそこは完全にお姉さんのファッションショー。
そしておもむろに私の方を振り返り
「ビューティフル」

ていうか。
私、一応お客さんだったと思うんですけど。いらん服を持たされた挙げ句にお姉さんのファッションショーにつき合わされ、さらにビューティフルて言われてもああた。
確かにかわいいお洋服ですけど、お姉さんがビューティフルかどうかと私がそのコートを欲しいかどうかとは全く関係が無いような気がするんですけど、私間違ってます?

なんかイタリア語で、このお洋服は素晴らしいとかビューティフルとか絶対買うべき!って言われてる感じはすっごくしたんですが、こっちは世界一ド厚かましくて失礼な人間が一億人ぐらい住んでいるニューヨーク育ち(?)ですからね。
いらんもんはいらん。
ものすーっごーーーっくしつこくされましたけど、いりませんいりません、ついでに試着してみた黒いミニスカもいりません。
と突っぱねたら、さっきまでの満面の笑みが突然潮が引くように、さああああーーーーっと消えてしまいました。
そして、さいなら、の挨拶も無く、犬のように追っ払われました。
全く失礼だわ。ナポリの人たちは陽気でフレンドリーで楽しい人が多いけど、ちょっと攻撃的な一面もあるみたいです。町中でも、喧嘩しているのかただ普通に会話しているのかよくわからん大声で怒鳴り合ってる人をいっぱい見かけます。
それに、狭い路地を猛スピードで突っ走るオートバイや車も結構おそろしい。
イタリア人の皆さんはとっても運転が上手だと思うけど、あれは「もう別に人の一人や二人、はねてもいいか」と思って運転しているとしか思えない無謀運転ぶりです。

そんな路地や商店街を歩き回り、ようやくアバクロまがいのカジュアルショップでミニのニットワンピースを19ドルで購入し、大急ぎでホテルに駆け戻りました。
オペラの開演は午後7時。
この時午後6時。
ホテルに走って戻るのに約10分ぐらいかかるので、着替えて取って返してギリギリです。
もう大汗かいてホテルに駆け込み、ものすごい剣幕で着替えてまた走ってオペラ座に向かいました。オペラを観に行くというよりは、スポーツ観戦の気分です。
ようやく劇場に到着したのは開演3分前。もうダメかも。と思って駆けつけたんですが、シアター前には大量の人々がまだノンキにたむろしていました。さすがイタリア。時間通りに事が進むわけがなかった……。
結局劇場に入り一番安い5階のボックス席についた時は7時15分。開演の気配はまるで無し。
それから15分あまりたったころ、ようやく開演となりました。


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↑コチョビ、初オペラです。

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↑素晴らしいインテリア。

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↑インターミッションの時、一階席に降りて撮ってみました。ここで観たかったな。

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↑王様席でしょうか?


本やなんかで読んだ通り、荘厳でクラシックな劇場に大感激です。
何百年も前に建てられたこの劇場でこれまでどれだけの演目が上演され、どれだけの人々が楽しんだのか。どんな歴史をこの劇場は見下ろし続けて来たのか。想像力がめちゃくちゃ刺激されて、多分電気がない時代にはガス灯だったに違いないろうそく型のシャンデリアにボーっと見とれて夢の世界をさまよいました。
オペラそのものはと言いますと、太ったおじさん(お父さん役の人)が素晴らしいバリトンで感動しましたが、それよりもビオレッタが突然ダバーっと血を吐いたのにびっくりしてその姿に思わず月影先生を思い出し(ガラスの仮面参照)、さらにそこまで血を吐いたのに死ぬまでめちゃくちゃ時間がかかった上に、死にそうな病人とは思えない声量で歌いまくる姿にこういっちゃなんですが、ちょっと『ウヒ』と笑いが出ました。
はなはだ不謹慎なオペラ観賞の態度だと我ながら思いましたけど、なんといっても左端の5階席。舞台の1/3は死角に入っていて、しかもなぜか主なアクションがほぼ全てその死角内で行われていたので、なんかもう何がなんだかさっぱりわからなかったんです。

今回のオペラ観賞は、オペラそのものもさることながら、『ナポリの超クラシックオペラ劇場でオペラを観賞する』という行為そのものに意義があったと。こういうことで自分的に納得の一夜でした。