貴女の中の豊饒の泉とのリコネクト  

・・追記  その二    

 

 

 

 

 

 

」 とは

シ   

種のある 果物

 

その 潤うこと

 

 

木  の

モク  

光潤のもとに 生じ

 

 

子実

 盛んに茂るがごときことを

申します・・・

 

 

 

 

 

       と、言ったのは 漫画「陰陽師」13巻「三国相伝陰陽轄簠簋内伝

   金烏玉兎緑玉碑文」(さんごくそうでん いんようかんかつ ほきないでん

    きんうぎょくと りょくぎょくひもん) で、安倍晴明に対峙する 道満法師でした。

 

三国相伝陰陽轄簠簋内伝金烏玉兎集」は安倍晴明が編纂した、

    と伝えられていますが、事実は定かではありません。

    ただ、安倍晴明を研究する人は必見の書です。・・付け加えられた

    「緑玉碑文」とはエメラルドタブレットのことで、OKANOの創作です。

 

 

   上の場面のモチーフは、晴明伝説の中でも印象的な物語で、安倍晴明と

   宿敵 蘆屋道満が、公の場で、布に覆われた箱の中に隠されたものを、 

   占いで射てる術を 競い合う「射覆(あてもの)」 に挑み、箱の中を

  「柑子(みかん)十五個」と占出した道満法師  に対し、呪を使って

   中を十五匹の」に変えて安倍晴明が勝った、という内容です。

 

 

     箱の蓋を開けたら中からが飛び出した・・・

     というエピソードは、葛飾北斎の漫画絵にもあって有名です。

 

 

 

 

 

 

 

 

春になると心が騒ぎドキドキしてしまう・・・という博雅に、

天地の理である五行と、地の気を示した十二支で 解説する晴明

 

 

 

 

六壬の占いの卦から "果実"の意味で「子」と晴明が回答したのを

判者が "鼠"を意味する干支の「子」と読み違えて、主上に奏上してしまう

 

 

 

漫画「陰陽師」の中では「」の意味に触れるシーンが

何箇所かありますが、完結の第13巻の「射覆」のシーンは、

「陰陽師」作品全体の、結びに繋がるところでした。

 

 

 

本日は前のページに引き続き、

 

子宮」の「」の意味するものを

「陰陽道」・「十二支」や、漢字の成り立ちから、

ノートのつもりで、したためてみようと思います。

 

 

ね うし とら う たつ み うま・・・

           子   丑  寅   卯    辰   巳   午  ・・・

 

と、続く十二支の循環は良く知られていますが、

 

 

十二支を鼠や牛や虎など、獣神にあてるようになったのは、

仏教思想の影響を受けてからのことでした。

 

確かに覚えやすいのではありますが、

 

本来、十二支の始まりと終わりの境目は、現在知られている

ね、 うし・・の順番とは違って、

 

皆によく忌み嫌われている・・

                        ウシトラ       

「 丑寅 」の

」と「」の間。

 

時の流れからいえば・・・

一つの生命の形が始まり芽吹き・・

・・そしてその形骸の中に種を宿しながら終わる・・

生命の循環の息継ぎ・・大事な繋ぎ目に当たるところ。

 

方角からいえば・・・

夜明けに・・爽やかな霊気の流れて来る方向・・です。

 

というわけで・・本来の順番は・・

 

 

十二支

 

寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌   亥 子 丑 

                      イン  ボウ  シン    シ     ゴ     ビ    シン  イウ ジユウ  ガイ   シ   チュウ

 

 

(そして・・十二支の循環では、一年の始まりは、節分に当たる

」の月、・・西洋暦二月の新月から始まります。)

 

 

      「」(とづる) が   籾種(もみだね)のように、生命の力が

                                  ガイ             

      種子の中に閉蔵された状態を示すことに続いて、

 

 

」は「」(ふゆる) 。 新しい生命が、  

種の中に萌し始めることを示しています。

」は

しげる、ふえる、こをもつ、さかる、はらむ、

などの意味があります。

 

 

時刻 「」の刻 は  真夜中。午前零時を中心にした二時間

             ネ

全てが終わった「」の刻と  

新しい日が始まった「」の刻の間 

 

 

「子」の月 は 十一月  (旧暦)  西洋暦の十二月 

 

 

方位は 「

 

   五行は 「」気

 

       色は   「(くろ)」

 

 

 

 

 

上は金文文字の「子」

 

漢字の「」の文字は 「幼児」の姿から

形取られています。

 

踊るような、むずがるような、そんな風にも見えますが、

元は、男児を意味し、貴人の身分称号として使われていたと

「字通」(白川静著) には記されています。

 

 

     

 

     上二つも青銅器に刻まれた金文文字の「子」  ・・・可愛いです。

 

         (金文編 中華書局より)

 

 

 

 

「十二支」に 「鼠」「牛」などの獣神のを配するのは、

仏教の思想の影響とはいえ、

 

こうしてみますと・・・

 

 

晴明伝説の、晴明と蘆屋道満の「あてもの」での術比べで、

柑子十五個」から「鼠十五匹」への変換は、

 

全く違って、思いがけないように見えますが・・・

 

十二支の「子」の意味から見れば、

実は、意味は同じ・・・見た目は違うけれど・・・性質は・・

果実」であり、「ふゆる」もの・・「同じもの」だったのですね。

 

 

 

確かに

鼠も 子実茂盛

 

子々孫々  はびこる

    生のものです・・

 

 

 

 

 

 

 

さて・・  

 

もっとも晴明が畏怖する存在、道満との術比べの占いで  

 

繁栄の慶賀の徴(しるし)が、解かれたにもかかわらず、

 

この後、晴明は、ますます窮地へと

追い詰められてゆきますが、

「射覆」のシーンの詳細については、

また別の機会にといたしまして・・・・・・

 

 

 

 

漫画「陰陽師」は、連載してゆくうちに、

夢枕獏さんの原作からどんどん離れて・・より史実に沿って・・

 

平安時代の貴人たちが、書き残した日記や記録をベースに・・

書き漏らされた、歴史の空白の部分に、安倍晴明の伝説や

創作部分がはめ込まれて、描かれて行きましたが・・・

 

 

 

 

その、全13巻・・・執筆中は

作品の内容が、多岐にわたって難しかったので、

描いている作者本人も、無事に物語が完結できるのか、

まったく予想もつかなかったのです。

 

 

「射覆」も、漫画なのに、「六壬」という、

陰陽師が習得していた占いの手法で、シーンを描くのために

実際に占ってみるしか、物語を先に進める活路がなかったのですね。

 

・・・そして、驚いたことに、

そこに出た占いの結果が、・・奇しくも、ピッタリ・・

柑子十五個」と「鼠十五匹」を出すことが出来たのです。

・・そして、全てが織物のようにまとまり、無事に完結・・・。

 

 

 

 

最終章・・難題の・・

三国相伝陰陽轄簠簋内伝金烏玉兎緑玉碑文」に

取り掛かった時、OKANOとスタッフ一同は、

地元ゆかりの由緒ある神社へお参りし、作品の完結を祈願して

正式参拝をいたしました。

 

 

長い航海を経て 無事に 完結の港へと

漕ぎ着けるように・・・

 

 

と、祈願のために、したためられた祝詞が

御祭神の御前で、朗々と謡いのように詠みあげられ・・

思いがけない・・その祝詞の・・

 

心細やかに、海の波間を縫うように、朗々と

歌となって御神前を流れてゆく様に、

 

心底、完結を願っていたスタッフ一同、覚悟もなく

滂沱の涙を流していたのです。・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

「貴女の中の豊饒の泉とのリコネクト」

ワークショップに先立って、皆で正式参拝したのも・・同じ・・

 

豊島氏ゆかりの 石神井氷川神社・・・でした。

 

 

 

 

 

つづく