東日本大震災で被災した「雄勝法印神楽」の本拠地、葉山神社の新しい御社殿が

多くの方々のご支援により今年の9月19日に再建されました。

 

 ご遷座祭と竣工奉祝祭に、同じく被災を受けて道具の全てを失っていた

「雄勝法印神楽」も復興し、神楽の演目全24番全てが、集まられた雄勝の皆さんの歓声と見守る中、晴れがましく奉納されました。

 

  この喜びの中、皆様といっしょに影ながらご支援しておりました「雄勝法印神楽」が、完全復興し「雄勝法印神楽復興支援金口座」での支援金の受付が閉じられたとのご報告をいただきました。

 

 震災のとき岡野が初めてご連絡を取リました、雄勝と神楽と笛を愛する「雄勝法印神楽」の博雅、神楽師阿部久利様から「葉山神社ご還座のご報告」のご寄稿を

いただきました。

 

 ご遷座祭に撮りましたお写真をお供に、ここに掲げます。 岡野玲子

 

 

 

 

葉山神社ご還座のご報告

 

 

平成27年9月19日、石巻市雄勝町大浜地区に鎮座する葉山神社では提灯の明りに先導され満点の星空の下、神様のお引越し「遷座祭」が行われました。

 

平成23年3月11日に東日本大震災津波被害により葉山神社は被災し、しばらくはプレハブのハウスを、その後は社務所を仮宮としておりました。

 

多くのご支援を賜りながら無事に建設されました御社殿は、以前のより数メートル高い所へとその場所を遷し建設されました。そこからは、太平洋が一望でき、その先には金華山を望むことができます。やがてお月様が姿を現すと、目の前の海原は金波銀波が美しく輝いて、一続きの錦の道が海の彼方まで敷き詰められているようで、それを渡って八百万の神様までもが遷座を祝いにやってくる、そう思えてなりませんでした。

 

午後7時、いよいよ遷座の時、ご神体は千葉宮司に抱かれ、その周りを白い布で囲い宝物とともに新しいお宮へと多くの方々が見守る中、ご神体がお移りになります。

 

暗闇の中を一歩また一歩と新しい御社殿を目指す行列は、私たちの復興へ進む姿と重なるものがあり、無事に遷座が完了したときには、我がことのように心が明るくなりました。

 

その後に御社殿完成を祝って雄勝法印神楽が奉納されました。演目は「荒神舞」、新築時などに多く舞われる火伏の舞です。

 

通常は神様に向かって奉納するのが雄勝法印神楽ですが、この日ばかりは神様を背にして、お客様と星空に向かって奉納したのでした。

 

私のゾクゾクは止まりません。

 

私には、葉山神社の神様がとても喜んでいるように思えました。いえ、それだけではなく、八百万の神々と多くの皆様に対して、あたかも葉山神社の神様が自ら神楽を舞っているようにも思えたのです。

 

雄勝法印神楽復興支援金を原資として復活した道具を身にまとい、御社殿の中で神々しく輝きを放ち神楽が奉納されている。

 

「ああ、ここで一つの区切りなのだ」

 

小高い丘に立ち、北上川の向こう側の山の向こうにある雄勝町に向かって無心で笛を吹いたのは平成23年春のこと。導かれるままに復興支援金を設立しそれが復興の一助となればと皆様と活動した日々、今回の遷座祭と引き続き行われる竣工奉祝祭、これで一つの区切りなのだ。

 

素直にそう思えた瞬間なのでした。

 

 

竣工奉祝祭は3日間行われました。

 

道具の復活だけではない。私たちが、諸先輩方が伝承してきた演目を継承できてこそ真の復活なのだ。

 

そのように考えていました。

 

震災以降、雄勝法印神楽を受け継ぐべく導かれた仲間を加え、各々が一段上をめざして稽古を続けました。目標は、廃絶していない演目、全24番を受け継ぎ奉納すること。

 

心を一つにして、神楽師が神楽師としてできる精一杯を神様に奉納したい、そんな思いで当日を迎えたのでした。

 

 

心は穏やかでした。

 

目を閉じれば思い出す。平成23年5月28日、瓦礫の中で残された道具で復興を願いながら精一杯奉納したあの日。

 

道具は失いました。でも、私たちの中に宿る郷土愛と神楽までは決して失われることはありませんでした。

 

多くのご縁を賜り、一つ一つ復活していった神楽道具、色々な所で公演する機会に恵まれて雄勝と雄勝法印神楽を発信する活動。

 

本日ここに、神楽24番に必要なすべての道具が揃いました。

 

24番奉納するだけの神楽師がいます。

 

待ち望んでくださった多くの方々がおります。

 

皆様の顔がよく見えました。

 

ドドン!と太鼓が鳴り響いて幕が開く、そこから先は本当にあっという間の出来事。

 

かすかに感じる海の香り、真新しい香りを放つ御社殿、さらさらと肌になじむ衣装、大きな歓声、目の前にある沢山の笑顔、直会で頂戴したお神酒の味。

 

五感全てが喜びを感じる一時でした。

 

そして、感謝の気持ちで一杯でした。

 

沢山の皆様に支えられて迎えることができた最高の竣工奉祝祭神楽24番奉納でした。

 

「ああ、思ったとおり、一区切り」

 

「ここが最高の一区切り」

 

そう私は確信したのでした。

 

 

今ここに感無量の中で、雄勝法印神楽復興支援金募金活動の終了を皆様に報告できますこと、感慨もひとしおです。

 

春と秋、何年たっても雄勝の地には祭囃子が響いていることでしょう。

 

それは、地域の皆様が神様を大切にしているから。

 

そこでは雄勝法印神楽が奉納されていることでしょう。

 

皆様とともに復興した神楽が……

 

設立当初より今日まで心温まるご支援のお気持ちを雄勝法印神楽復興支援金に託して下さった皆様に改めて感謝申し上げます。

 

ありがとうございました。

 

                                                                    平成27年10月吉日

                                                                    雄勝法印神楽復興支援金事務局

                                                                    雄勝法印神楽師 阿部久利