１２００年ごろの中世のヨーロッパ。当時は、車も電車も飛行機もなく、国から国への移動は、徒歩や馬でなければ舟でした。
例えば、ロンドンやパリ、マドリッドからローマやアテネへ行くのに、アルプスの山々をサウンドミュージックの家族のように超えていくよりも、海岸沿いに船で航海する方がずっと楽だった。
モナコは、そんな海岸沿い、それも、フランスとイタリアの国境沿いにありました。切り立った山と海岸の間にはわずかな平地しかなく、敵に攻められることのない安全地帯でした。
この土地に最初に根を下ろしたのが王子の大ご先祖さまでした。
景観には恵まれましたが、畑や農牧を営むだけの広さがなく、皇族や裕福層をターゲットにしたカジノを経営することに。
◎１８６０年代のモナコ
広さは、東京の皇居よりも小さい。世界の中ではバチカン市国の次に大きい。
太陽の光があふれる温暖な土地柄なこともあり、小さな街は繁栄し続けました。
現在の人口は３万８千人ぐらい。税金なし、相続税なし、徴兵制度なし、失業率ゼロ。２０２２年の平均所得は、２０００万円。ただし物価も高い。
住民は、カジノで賭けをすることを禁じられていたため、負けが込んで破産するということもありません。
▼ 伝統的な継承システム
モナコは、独立した国と思われていますが、実際は、国ではなく、だからと言ってフランス領でもないという不思議な位置にあります。
でも、言葉はフランス語だし、貴族に関する慣例は古き伝統的な慣習に基づいていました。
そのひとつに、継承問題がありました。モナコの王子が子を持たなければ、その代でモナコは消え、フランス領に戻らなければならなくなってしまう。
条約的には、男の子でも女の子でも良く、養子でも良い。
実際、王子の祖父母の間には、女の子ひとりしかいませんでした。しかも、正式に結婚せずに生まれた子でした。
王子にしてみれば、当然ながら実の子が欲しかった。それも男の子が。
そんな王子には、当時、女優の恋人がいました。グレースではありません。
恋人は、妊娠できるかどうか医師の診断を受けていました。ふたりの医師が、妊娠できないと診断。このこともありふたりの関係はなかなか進まず。
やがて恋人は、王子の煮え切らない態度にフランスの男優と浮気。王子との関係は流れてしまいます。
後に、彼女はふたりの女の子を出産。ふたりの医師の診断は間違っていた・・・。
▼ 女性にとって不利な気風
１９５０年代当時。結婚時、女性は処女であるべきとされていました。
父親からかまってもらえないどころか、異端児扱いされてきたグレースは、ハリウッドの有名男性たち、それも、父親年齢の男性と次々にお付き合いをしていました。
ウィリアム・フォーデン、マーロン・ブランド、クラーク・ゲーブル、レイ・ミランド、ジーン・ピエール・・・
◎ アカデミー賞主演女優賞を獲得した カントリーガールで共演したウィリアム・ホーデン
グレースは、本気だったけれど、相手は遊びだった。妻ある場合は、浮気ではなく借りたということになっていた・・・。
さらに、王子に出会う前には、フランスのファッション デザイナーとつきあっていました。娘にその男性を紹介された父親は、最初の数分でとんでもない食わせ物と見抜き、食事を挟んでの初対面でしたが、一言も口を利かなかったというエピソードあり。
グレース、なんでそんな人と付き合っちゃったの？
処女ではないことを証明するには不可能な状況でした。
どうする？ グレース？