2024年2月の区議会第一定例会において会派の一般質問が行われました。

質問に入る前に、1月1日に発生した、能登半島地震において犠牲になられた方哀悼の意を表しますと共に被災された方々に心からお見舞い申し上げ、一般質問を開始しました。

一般質問で取り上げた内容について答弁とあわせて掲載します。

正式な議事録は区議会HPよりご覧になれます。

 

 

~区長の基本姿勢(震災をはじめとする自然災害に対する自治体の備えについて)~

 

 

  質問

 

能登半島地震では現在までに死者240名を含む人的被害は1,528名、住家被害は27,785棟に及び、また輪島市では地震を起因とする火災で5万800㎡が焼失する大規模火災が発生し、甚大な被害を受けました。今もなお厳しい寒さの中、避難所での生活を余儀なくされている方々が多数おられる中、区として保健師の派遣など要請に基づき取り組みされていることは評価する一方で、大規模災害時の応援受援体制については課題も浮き彫りになりました。

大規模災害時には、被災住民の生活再建などの支援や、避難所運営、罹災証明書の発行などに迅速に対応するため、被災地の職員だけでは対応が困難な場合、多くの応援職員を速やかに確保することが必要不可欠であります。

そのために、全国の地方自治体を一元管理し応援職員の派遣を行う仕組みとして平成30年に応急対策職員派遣制度が制度化されました。

東日本大震災では、支援職員の派遣について行政機構のノウハウを持った職員が来てくれるのはありがたいものの、短期なのでどこまでの仕事を任せられる範囲が限られる、また、そもそも被災した受援自治体では指揮系統を確立する事が出来ずに、業務を任せる事が出来なかった等、受援側、支援側双方に大きな課題が残りました。

応急対策職員派遣制度はそのような様々な声を受けて制定されたものでありますが、今回、そのルールに基づかない独断での派遣が特別区の中で複数あったと伺っております。

支援自治体としては何かできる事はないか、考慮した上での派遣であったと推測しますが、受援自治体としては人手がほしいものの受援体制の確立ができない以上、前段申し上げた様に効率的な運用は不可能であります。

支援自治体が責任をもって、人員確保、後続支援職員への引継ぎ、復興までの一貫支援ができる取り組みを進めることが必要で、また仮に区が被災し、受援を要請する自治体となった場合、支援側の自治体への依頼、指示機能をどの様に確立するのか、応援受援体制の構築は元より、応急対策職員派遣制度、対口支援の在り方含めて、改めて区として、また特別区長会としても検討すべきであると考えるが区長のお考えをお伺い致します。

首都直下地震が明日来てもおかしくない今日、迅速な避難所の設置をはじめ被災区民のニーズに応じた支援、早期生活再建を的確に行えるよう、区として全庁を挙げて、区民の命を守る体制を整えることを要望いたします。

 

●震災対策について

初日の区長の所信表明を伺いましたが、今回の震災を契機に、これまで進めてきた攻めの防災をさらに加速させ、木密地域及び消防活動が困難な狭あい道路の解消を、住民の皆様と都からを合わせて具体的に目で見える形で進めていく事を決意されました。

能登地震による輪島朝市での大規模火災では、倒壊した家屋の中に助けを求めている両親がいるのにもかかわらず、火の手が迫り、両親を助け出すためにその場に残るか、逃げるか、葛藤の末母親に逃げる旨を告げ、母親も理解した上でその場から避難されました。その親子の会派それが最後となり、両親はその後行方不明、焼失した家屋からは人骨が見つかり現在DNA鑑定を進めているという大変痛ましいニュースに触れました。

本延焼火災を防ぐ事が出来なかった要因は複数上げられますが、200m間隔で設置された消火栓は断水により使用できず、防火水槽の活用についても倒壊した家屋が行く手を阻み、消防車が部署できない。そして消火、救助活動が同時多発する中での消防力の限界など、様々な要因が重なり、このような大規模火災につながったと推測されます。

この災害現場を上空からの映像を見ると、大きな道路を挟んだ住宅は延焼を免れています。延焼が止まった箇所をつないでできる線を焼け止まり線とも言いますが、燃えにくい建物や道路河川および空地などの延焼遮断帯としての役割を果たしていることがわかります。今回の地震による輪島市での出火件数は1万世帯当たり3件で、東日本大震災の0.44件、熊本地震の0.24件を大きく上回り、阪神大震災と同程度となります。

令和5年に修正された地域防災計画の被害想定では、練馬区の出火件数は28件、これを先ほどの1万世帯当たりで換算すると0.71件となり、大きなリスクがあることが数字からも見て取れます。

以上の事から、わが会派としても、責任ある判断として区民の生命財産を災害から守るために木密地域および消防活動困難区域の早期解消を強く求めます。改めて区の見解を伺います。また、先ほど述べたように、輪島朝市の火災では、断水により消火栓が使用できませんでしたが、上水道の耐震化率は、石川県の耐震化率36.8%に対し、区は23区の中で一番の63%と高く、震災時でもある程度は消火栓の利用が有効である事が想定されております。

今回、地域の初期消火力の強化で打ち出した、街頭スタンドパイプ設置事業は、建物倒壊や延焼の危険性の高い地区から優先的に設置していく事としておりますが1地区当たり数台の整備では到底不足します。

震災対応はもとより平時の火災にも対応していくには、消火栓の数やホースの長さから考え、設置間隔についても基準を定める必要があると考えております。

被害想定では先ほど示した28件の火災が延焼し、約11,000棟が焼失するとされています。また314名がお亡くなりになり、そのうち241名が避難行動要支援者だと想定されております。

私たちが今、区と議会、そして地域と一丸となり、積極的に減災に向けた取り組みを進めていかなければ、災害に強い町づくりは実現しません。

現在示されている街頭スタンドパイプについても、公共施設やコンビニだけでは設置先がごくわずかであります。街頭消火器を長らく指導に設置し続けた結果、賠償金を払うことに至った経緯があることからも区が私有地への設置を敬遠している一つの要因かもしれません。しかしながら、それでは木密地域や消防活動困難区域だけでなく、例えば私が住んでいる向山のような狭あい道路の多い街の安全を火災から守ることはできないと考えております。

例えば、地元企業や土地所有者から中長期的に同意が得られる場合には、私有地に設置する取り組みを広く展開していただく事を要望いたしますが、区の考えを伺います。

是非とも、いざというときに自分たちの町を自分たちで守ることのできる街頭スタンドパイプを積極的に導入していただき、地域防災力の向上に努めていただく事を願います。災害対策は点と点でハードを整備する事だけではなく、それを線でつなぐことが必要です。

街頭スタンドパイプの設置だけでなく、断水時に必要不可欠な防火水槽の整備、それを活用するための道路整備、耐震化の促進中高層マンションの防災対策も急務です。中でも、大規模災害時の避難空間や一時滞在施設を確保するなど、防災機能を備えた防災公園である練馬城址公園の整備が進んでいます。

能登地震を受けて改めて早期の整備はもちろんですが、大切なことは、災害時に真に必要な防災の機能を整備する事です。能登地震では先ほど触れたように、狭あい道路に建物が倒壊するなどで道路閉塞がいたるところで発生し、避難はおろか物資の輸送にも、大きな障害となりました。

災害発生時、迅速に避難及び滞在場所として運用するため、また設置が予定される耐震型防火水槽を、建物などの倒壊に影響されることなく活用できる環境の整備として外周道路の拡幅を、改めて強く求めます。

 

また、各区の24年度予算案を見ると、板橋区や足立区では民間倉庫などを活用し、災害備蓄品を整備する方針を掲げております。現在の都区間の役割分担では区は1日分の備蓄、2日目3日目の備蓄および調達は都が担い、備蓄倉庫の整備については都区分担に基づき都区双方が設置するとされています。

各区の置かれている状況は様々でありますが、現状区として各避難拠点の備蓄倉庫および22か所の集中備蓄倉庫をもってしても、1日分を備蓄するスペースが手狭となっており、さらに2日3日分を備蓄するスペースを区で確保することは容易ではありません。都区の棲み分けは承知の上で、自区内に2、3日分の備蓄を整備する為には、公園内に備蓄倉庫を作ることが防災公園の機能としてはこの上ない理想形であることから、都に対して防災備蓄倉庫の整備を求めます。

また、公園内への練馬消防団の拠点整備について、輪島朝市の大規模火災の消火活動でも住民の家族構成など、地域事情を熟知している消防団が力を発揮し、改めて共助の要としての重要性を証明されたと考えております。

また避難誘導なども消防団の役割であると考えると、防災公園内に消防団の活動拠点があることが効果的かつ効率的です。備蓄倉庫と併設する形で消防団の拠点を整備することと共に、先ほど来から提案している外周道路拡幅は、すべて地域からの声であります。

練馬城址公園に真に必要な防災の機能を設置することに対し、区として防災公園の将来像をどの様に捉え、強い決意を持って都に働きかけを行う考えか、お伺いいたします。

 

●水害に強いまちづくりについて

区内を流れる石神井川および白子川では、河川からの溢水はないものの、昨年も氾濫危険水位を超えるなど、豪雨災害が懸念されており、水害対策の更なる推進が求められています。

これまで都が平成26年に改定した豪雨対策基本方針に基づき、目標降雨である時間75ミリ対応を進めており、その中でも河川などのハード対策が重要と考えるが、区内の取り組みについて伺います。

また都では前段に申し上げた豪雨対策基本方針をさらなる改定をすることで、目標降雨を+10ミリの85ミリに引き上げ、重点的な対策強化していく事としております。区としてはこれを受けて、今後都と連携してどのような取り組みで対策強化していくお考えか伺います。

水害ハザードマップで自宅周辺の災害リスクの確認をしたことがあるか、区民意識意向調査では、全体の8割以上の方が知っていると非常に広く周知されている中で、水害に備えて自らの行動計画を「作成している」はわずか3.2%と低い結果となっています。この行動計画は防災手引きにマイタイムラインと称して配布されています。

年間の豪雨被害また、台風の発生数は年々増加傾向にあり、台風に関しましては、平成30年8月の豪雨や令和元年に発生した台風19号など、全国的に風水被害が発生しています。

被害を未然に防ぐためにも事前準備が必要だと考え、避難場所の確認だけでなく、避難準備の開始から避難開始そして避難完了までの行動を家族等と共有することが風水被害の軽減に繋がると考えますが、行動計画マイタイムラインの作成をさらに促進するための区としての取組を伺います。

 

 

 

  答弁(答弁者順)

 

・区長

被災地支援について

 能登半島地震に際し、区は、国及び都の要請を受けて、金沢市の大規模避難所への保健師等の派遣、七尾市へ損壊家屋の公費解体の調整に従事する職員の派遣などを行いました。また、近く輪島市に罹災証明書発行等の業務にあたる職員を派遣します。引き続き、被災地の支援に取り組んでまいります。
過去の災害では、各自治体から個別に寄せられる支援の申出に被災自治体が対応しきれない、単独支援のため後続する自治体が無く支援が継続しないといった事例が多数発生しました。現在は、被災自治体と支援自治体とを国が継続してマッチングする対口支援のほか、保健師や建築職などの専門職を国があっせんする仕組み、自治体間の災害協定などに基づいて支援が行われています。区はこれらの仕組みに則って職員を派遣しています。
今回こうした仕組みとは別に、独自に支援した自治体もありましたが、私は特別区長会の総会で、ルールに従って対応すべきと申し上げました。何よりも大切なのは、刻一刻変化する被災者と被災自治体のニーズに応える息の長い支援であると考えています。
区は、長野県上田市、群馬県前橋市など都外自治体と災害協定を締結しています。職員派遣、食料等生活必需品の提供などを相互に行うこととしており、日頃から互いの訓練に参加するなど実効性を高めています。練馬区が被災自治体となった時に備え、こうした個別自治体連携と、都との連携による対口支援の受入れを見据えた受援態勢を構築しておくことが重要です。 先月、特別区長会の副会長として出席した、都知事との意見交換会において、今回の震災を受け、都と課題を整理し、対応を協議する場の設置を提案したところです。
引き続き、都や協定自治体との連携を深め、災害対応力の更なる強化に取り組んでまいります。

 

・危機管理室長

災害対策について。

練馬城址公園について。
都は、みどりと水、広域防災拠点、にぎわいの3つの機能を備えた公園として整備を進めています。区では防災拠点として必要な施設の整備について都へ要請し、協議してきました。

 令和3年5月に、都は公園整備計画を策定、公表しました。防災機能のイメージ図が示され、防災用照明や震災対応トイレの整備、既存の防災井戸の活用など、区が求めた機能が盛り込まれています。防災備蓄倉庫や防災行政無線放送塔などについては、東京都地域防災計画に示された役割分担に基づき、区が申請し、都が設置許可する旨の方針を示しています。引き続き、協議を進めてまいります。

練馬城址公園の周辺道路は、幅員が狭いことから、車両のすれ違いや歩行者の安全な通行に課題があり、拡幅が必要と考えています。 現在、都は、道路拡幅部を含め、公園として事業認可を取得し、整備を進めているところです。区は、周辺の生活環境の向上や災害時における避難路を確保するため、道路の拡幅を都に強く要請しています。
分団本部施設の整備は、東京消防庁の役割であることから、区は、東京消防庁に対し、全分団への本部施設整備を早期に実現するよう働きかけてきました。区では、石神井松の風文化公園をはじめ、10か所の区有地を使用しての整備に協力しています。練馬消防団第四分団本部施設については、城址公園での早期整備に向け、東京消防庁と連携して取り組んでいます。

スタンドパイプの設置について。

 スタンドパイプは、幅員の狭い道路に設置することは難しいと考えています。まずは区立施設やコンビニなどの街頭に設置します。 私有地においても設置可能な場所があれば、 土地所有者の協力を得て、設置していく考えです。

風水害マイ・タイムラインについて。

台風は事前に予測できるため、風水害が発生する前に避難することができます。避難に備えた行動を区民一人ひとりがあらかじめ確認することで、身を守ることにつながります。

これまで区は防災訓練や全戸配布している 「防災の手引」、水害ハザードマップへマイ・タイムラインについて掲載し、周知・啓発に努めてきました。来年度、風水害への備えについての動画コンテンツを作成し、区ホームページで配信します。引き続き、マイ・タイムラインの作成について周知・啓発に取り組んでまいります。

 

・都市整備部長

密集事業について。

 先日発生した能登半島地震では、建物倒壊、木造住宅密集地域での延焼拡大、道路の寸断、避難所の環境確保など、対策の必要性が改めて浮き彫りとなりました。
区内の木造住宅が密集する地域は、道路が狭隘であり、建物の倒壊や延焼の危険性が高く、この現状を放置しておくことは出来ません。建物の不燃化や耐震化を促進するとともに、消防車などの緊急車両が円滑に通行し消火・救援活動ができる道路の拡幅は必要不可欠です。

桜台東部地区では、防災道路三路線、貫井・富士見台地区では、四商通りと主要生活道路一号線などの整備を進めます。
道路の拡幅については、地域の方々から様々なご意見を頂いておりますが、整備の必要性や効果を丁寧にご説明し、ご理解とご協力を頂きながら、早急に進めてまいります。

 

・土木部長

水害に強いまちづくりについて。

河川などの取組について。
水害に備えるために、何よりも重要な対策は、河川および下水道の整備です。

区では事業者である東京都に対し整備促進を要望しています。現在、区内においては、石神井川は、扇橋下流から本立寺橋、白子川は、御園橋から一新橋の区間において、都が護岸改修工事を行っています。令和4年度末時点での改修率は、都整備区間において、石神井川では76%、白子川では51%となっています。
調節池については、都が、環状七号線地下広域調節池や城北中央公園調節池I期の整備を進めています。
今後、石神井川では、新たに本立寺橋上流から弁天橋下流の区間に着手します。令和6年度以降の事業化に向け、用地測量を行っています。


都の基本方針改定を受けた取組について。
都は、気候変動による豪雨の頻発化、激甚化などに対応するため、令和5年12月に豪雨対策基本方針を改定し、区部の目標降雨を、時間75ミリから85ミリに引き上げました。本方針では、都が行う河川の護岸整備等で、これまでどおり50ミリ、50ミリを超える分については調節池や流域対策等で対応することとしています。

流域対策については、 今後、都および流域自治体で構成されている東京都総合治水対策協議会により、河川流域ごとに策定される豪雨対策計画を踏まえ、練馬区総合治水計画の見直しを行います。引き続き、浸透桝など雨水流出抑制施設の設置を進め、都と連携して治水対策を行っていきます。