先日の一般質問の続き
その③土地・建物の適正管理についてです。
(正式な議事録は区議会HPにアップされます)


近年、いわゆる「ゴミ屋敷」といわるような、土地や建物が適正に管理されず、周辺環境に悪影響を及ぼす問題が増えており、中には、環境や景観の問題だけでなく、放置された建物に倒壊の危険や防犯・防火上も好ましくない例が見られ、そうした場所の多くはゴミの不法投棄が絶えず、違法に捨てられたゴミが新たなゴミを呼ぶという悪循環に陥っているケースもあります。

 練馬区では空き地を適正に管理するため、地権者の求めに応じて区が代行して草刈りなどを行う「あき地の管理適正化」という事業が行われています。
これらの中には近隣の苦情等によって、区が地権者に改善を要請し、地権者の自力による改善が困難な場合には、代金を支払ってもらった上で区が処理するケースもあるようですが、問題は行政の再三の要請や指導にも関わらず、地権者が全く改善に応じてくれない、あるいは地権者と接触ができない場合です。
まず伺いますが、区内には適正に管理されていない土地や建物が何件あり、そのうち区の要請や指導によっても改善されない事例は何件くらいあるのか。

 「練馬区民の安全と安心を推進する条例」の第9条には「区長は、空き家または空き地の管理状態が防犯または防火上支障があると認められるときは、その所在地を管轄する警察署長または消防署長と協議のうえ、当該空き地または所有者または管理者に対し、必要な改善を行うよう指導することができる」と規定していますが、地権者に対する「指導」が限界で、強制力はありません。
したがって、土地や建物が放置された結果、周辺環境が著しく悪化した状態でも、私有財産に行政が勝手に手をつけるわけにはいかず、地権者の了解や協力がなければ、不適切な状態が半永久的に続くことになってしまいます。

 他区の事例をみると、
杉並区では「杉並区生活安全及び環境美化に関する条例」で「区内の土地又は建築物を所有し、又は管理するものは、当該土地等を不良な状態(みだりに草木を繁茂させ、又は廃棄物を放置すること等により、当該土地等の周辺に居住する者の健康の保持若しくは生活環境の保全又は防犯上支障を生ずるおそれのある状態をいう。)にしないように、適正に管理しなければならない。」と規定し、この規定に違反し、必要な改善その他必要な措置を命ぜられた者がこれを履行しない場合において、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、行政代執行法の規定により、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。」と規定しています。

同様の規定は荒川区や大田区の条例にもみられ、さらに最近では、足立区や所沢市などのように、空き家の適切な管理を所有者に義務付け、撤去規定も盛り込んだ「空き家条例」を制定する自治体も増えています。

 行政代執行は個人の財産権に係る問題で、適用には極めて慎重になるべきで、これらの自治体でも実際に適用した事例はないようです。
そういう意味で「行政代執行」は「抜かずの宝刀」という面がありますが、だからといって、執行しないことを前提にわざわざ条例化したわけではなく、例えば、大田区の「ゴミ屋敷」問題で代執行寸前まで行った事例では、マスコミが大きく取り上げたため、地権者が改善に応じ、代執行に至らなかったというケースもあるようです。さらに、こうした条例には「抑止力」や問題を抱える事例に対する「交渉材料」にもなるとされており、これらの自治体でも条例化による一定の効果は認めています。

そこでお聞きします。他の自治体における、いわゆる「空き家条例」や行政代執行法の適用を盛り込んだ条例について区としてどのようにお考えか。
 
行政代執行は個人の財産権に関わるという意味で極めて慎重であるべきだと思います。
しかしながら、倒壊の危険や防犯・防火上著しく危険な事例をいつまでも放置することは決して好ましいこととはいえません。
いわゆる「空き家問題」は、高齢化や地域コミュニティーの崩壊などにも起因する今日的な行政課題であり、今後高齢化がさらに進めば、こうした事例は増えることが予想されます。

さらに空き家問題は、地権者の不作為だけが原因ではなく、経済的あるいは身体的な理由で改善が困難な場合も考えられますが、いずれにしても問題物件を放置すれば、地域での孤立をますます深めることにもなりかねず、不作為のケースに適切に対処すると同時に弱者を救済する何らかの仕組みが必要であり、条例の新設や改正を含め、対応策が検討されるべきと考えます。区のご所見は。


==答弁==


問題家屋として把握している件数について。
区では、近隣の住環境に影響がある空き家や土地などについて、安全・安心、環境、建築、保健衛生など、関係する部署により構成する問題家屋連絡会を設置しています。その連絡会で把握し、対応を行っている件数は、空き家や老朽家屋など、135件であります。

次に、他の自治体における、いわゆる空き家条例、行政代執行法の規定を盛り込んだ条例、ならびに不作為への対応などについてであります。

区としましては、これまでも、空き家や老朽家屋以外にも、民間所有地の害虫や生い茂った樹木など、さまざまな生活環境の事案にも取り組み、所有者とも話し合い、信頼関係を築きながら解決してまいりました。

例えば、住んでいる方がいない物件は、所有者の確定をする必要があり、また、相続にかかる物件の場合、相続人の間での意見の調整が必要となるなど、解決までに多くの時間がかかるものもあります。

また、建物を除去し、更地として管理すると、固定資産税が大幅に上がってしまい、所有者の経済的負担となることも建物の除去が遅くなる原因の一つと考えられます。

しかし、その間も、関係部署と密に連携して、問題家屋の解決に向ける努力を行っております。
いわゆる空き家条例に、行政代執行について規定した自治体があることは承知しております。
また、空き家や老朽家屋にかかる条例を制定し、解体費用の助成と組合せ成果を上げている自治体もあります。
これらの取組の効果や運用方法について、検討してまいりたいと考えております。