2月10日に行った、私が所属している会派の一般質問です。
正式な議事録は後日区議会HPにアップされます。


■一般質問■

●母子健康手帳について。
母子健康手帳は、昭和17年導入時は妊産婦手帳と呼ばれていましたが、その最大の意義は医師・助産師らによる妊婦の定期健康診断が習慣づけられたことにあるといわれています。昭和25年当時、開発途上国並みの出生1000人当たり60.1人であった妊産婦と乳幼児の死亡率が平成18年には先進国でもトップクラスの2.6人にまで大幅に減少しました。もちろんこの間の出産環境の向上や医療の進歩が最大の要因ですが、妊娠から出産、子どもの成長発達、予防接種の等々の記録が一冊にまとめられた母子健康手帳が果たしてきた役割も非常に大きかったと思います。

母子健康手帳は、平成3年に交付事務が区市町村に移譲され、厚生労働省の省令を盛り込むほか、行政情報や保健・育児情報などについての具体的内容は区市町村にゆだねられおり、練馬区では平成16年度から独自作成をはじめ、18年度の改訂後は『記録編』と『出産育児情報』の2冊を配布しています。

近年、母子健康手帳は子どもの成長記録であると同時に育児に奮闘する親自身の貴重な記録にもなっています。平成24年は子育て環境や社会情勢の変化などを踏まえ、厚生労働省奨励様式の変更が検討されるなど、10年ぶりの母子手帳改正が行われることになっており、育児情報やデータを最新のものにすることに加え、父親が自由に記入できる欄を増やすことなどが提言されており、区においても、今後の母子健康手帳や母子保健施策の在り方について検討を行うべき時期に来ていると考えます。

現在区が作成している手帳は、記録と情報が別冊となっていますが、例えば島根県海士町で導入されている手帳は、妊娠期の記録と情報が見やすくまとまっており、時期別の知識提供や健康カルテ機能・癒し励まし機能・(ともに育児を行うという意味での)男女共育機能なども盛り込まれています。
この手帳の作成にあたってはワークショップ方式を採用し、母親だけでなく父親からの意見や要望も踏まえ、さらも医療従事者にも使用しやすいように、広告代理店のデザイナーが加わり、既存の手帳に書いてありながら読みにくく記憶に残らなかった部分に見出しを付けたり色別に整理するなど、随所に様々な工夫が凝らされています。

こうした取り組みには、育児環境などによる親の間の情報格差を埋めることが期待されており、マスコミが「新母子健康手帳」として紹介することによって全国に広がり、現在、34の自治体で使用されているとのことです。

そこでお聞きしますが、母子健康手帳の改訂時期にあわせて、いわゆる「新母子健康手帳」の導入を練馬区でも検討すべきと考えますがいかがでしょうか。また、母子健康手帳の改訂にあたっては、子育て世代や子育てに関係する様々な施設や団体からの意見を聞くために、ワークショップ方式などを検討すべきと考えますが、併せてご所見を伺います。

母子健康手帳に最低限盛り込まなければならない内容については、厚労省の省令で定められていますが、最近では母子の健康だけでなく、子育てを支える重要なツールとして活用できるように、独自の情報を盛り込む自治体が増えています。

例えば、従来の母子健康手帳は小学校入学前までしか記入できませんが、愛知県小牧市で中学校まで使える母子健康手帳を全国で初めて作成したほか、茨城県常陸大宮市では20歳までの成長を記録できるようになっており、小学校入学以降の身長や体重の記入欄を設けたほか小児期、思春期における子育てのポイントも盛り込み、小中学校での変化も記すことで、子供の成長を幅広く把握できるものとなっています。

練馬区においても、妊娠・出産期から新生児・乳幼児期を通じて一貫した体系のもとに総合的な母子保健対策が進められているものと考えますが、母子健康手帳の対象年齢は就学前までの6年間となっています。このたび練馬区では組織改正が行われ、子ども関連施策について「乳幼児期から青年期に至るまでの子どもに対する総合的かつ切れ目のない成長支援の施策を効率的、効果的に展開できる体制の構築」を掲げています。そうした観点からも、妊娠期から青年期まで長期間にわたって使用できる母子健康手帳の導入を検討すべきと考えますがいかがでしょうか。

さらに新しい取り組みとして、岩手県遠野市では母子手帳の機能を電子化した『すこやか電子親子手帳』の本格運用を始めています。
インターネットの専用サイトでIDとパスワードを用いて妊娠中や出産後の詳しい健診データを管理でき、利用者はパソコンや携帯電話から、いつでもどこでもアクセスが可能です。こうした取り組みは、IT機器の取り扱いに慣れている最近の子育て世代にとって手軽な情報媒体となるだけでなく、適切な情報を瞬時に得ることができれば、産科や小児科など医療現場の負担軽減にもつながるとして期待されています。

そこで、紙媒体である母子健康手帳と併せて運用するなど、区として母子健康手帳の電子化についても前向きに検討すべきと考えますがいかがでしょうか。


==答弁==


●母子健康手帳について。
母子健康手帳は、妊娠、出産、育児の一貫した記録するとともに、この記録を参考として保健指導や健康診査を行うことを目的に交付しているものであります。
手帳の内容のうち、記録をするための様式部分については、厚生労働省の省令で規定されておりますが、健康管理に関することや教育情報については、自治体が地域の実情に合わせて作成することが可能になっております。

初めに、いわゆる「新母子健康手帳」についてであります。この手帳は、省令で規定されている内容に加えて、お祝いの寄せ書きや記念日の記録、母子だけでなく父親も参加できる機能など、多岐にわたる内容を一冊にまとめたものであります。
一方、当区の母子健康手帳は、省令による記録を中心とした本体に加え、出産育児に関連した情報や、地域の情報を含めた総合的な内容を掲載した別冊の二分冊になっております。さらに、父親を対象とした父子手帳も作成しております。このように、当区の母子健康手帳と「新母子健康手帳」は、情報の取り扱い方が大きく異なっております。したがいまして、「新母子健康手帳」の導入につきましては、情報量や構成を含めて、今後、研究してまいります。

次に、母子健康手帳の改定にあたりワークショップを導入することについてであります。母子健康手帳は、平成24年度に10年ぶりの改正が予定されており、昨年12月には、新しい様式などを含む省令が公布されております。当区におきましても、省令の内容を踏まえて、現在、印刷の準備に取り掛かっているところであります。したがいまして、ワークショップの導入につきましては、次回の改定の際に検討してまいりたいと考えております。

 次に、妊娠期から、青年期まで長期間にわたって使用できる母子健康手帳についてであります。青年期まで長期間にわたって使用できる内容になりますと、掲載内容が、今まで以上に多岐にわたることから、内容の精査が必要になります。そこで、今後、区民の皆様の要望も踏まえて、検討してまいります。

 次に、母子健康手帳の電子化についてであります。新しい情報端末の普及に伴い、従来の紙媒体による母子健康手帳に加えて、電子化された手帳の作成が求められるようになっていると認識しております。

しかし、記録部分につきましては、本人だけでなく、医師などが、記録や証明を書き込む必要があり、直ちに電子化することは困難な状況です。母子健康手帳の電子化につきましては、セキュリティの問題など技術革新の状況やモデル事業の結果も踏まえて、研究してまいります。