2月10日に行われた、私が所属している会派の一般質問です。
正式な議事録は後日区議会HPにアップされます


■一般質問■


生活保護制度と受給者の自立支援等について。

生活保護制度は、昭和25年に生活困窮者のセーフティーネットとして制度化されて以来、長きにわたり抜本的な制度の見直しがされていないため、近年の社会・経済情勢の変化に対応できなくなっているといわれ、高齢者の経済的自立や稼働能力がある若年層の受給者に対する就労支援策、不正受給に対する取り締まり等々の課題について、国に対し、多くの自治体から制度の改善を求める要望が提出されています。
こうしたことから、厚生労働省は、昨年5月から『生活保護世帯に関する国と地方の協議』を、実務者会合を含め10回にわたって開催し、昨年12月に中間取りまとめが発表されたところです。
中間取りまとめでは、制度の基本的な考え方は変えないとした上で、生活保護に至らないための仕組みや脱却につながる仕組みの拡充、高齢者の経済的自立の促進につながる施策を講じていきながら、各自治体の体制整備や負担軽減を図る方策について検討を進めていくことなどが示されていますが、まず、区の生活保護制度に対する課題認識と中間取りまとめについての評価をお聞かせください。

次に、自立就労支援プログラムについて伺います。
リーマンショック以降、生活保護受給世帯数は急速に増加しており、厚生労働省によれば、昨年9月現在で150万2,302世帯(207万1,924人)と過去最高になっており、支給額については、2009度以降3兆円を超える状況が続いています。
受給世帯の中でも、特に急増しているのは高齢者世帯および稼働能力があるとみられている「その他世帯」となっていますが、練馬区においてもその傾向は同じで、昨年11月現在で11,630世帯の生活保護受給世帯のうち、高齢者世帯が4,596(約40%)、その他世帯が2,204(約19%)を占めています。
その他世帯とは「高齢者」「母子」「障がい者」「傷病者」のいずれにも該当しない世帯を指し、現下の厳しい経済・雇用情勢のなかで失業した人や収入を減らした人などが多く、その意味では景気の回復やそれに伴う雇用の安定こそが求められるところですが、先行きの見えない経済状況にあって、自治体としても就労による自立支援策を今まで以上に促進する必要があると考えます。
練馬区でも平成18年度から自立支援プログラムを導入し、ハローワーク等の関係機関と連携を図りながら就労支援を行ってきましたが、最近の生活困窮状況の複雑化・多様化もあって、自立就労に至るケースは非常に少ないのが実情です。

また、来年度予算案には各福祉事務所に「就労サポーター」を配置して、稼働年齢にある生活保護受給者の就労意欲を喚起して就労による自立を促す「就労サポート事業」を計上していますが、こうした「就労意欲に課題がある人に対する就労自立に向けた段階的な働きかけ」だけではなく、より踏み込んだ対策が必要ではないでしょうか。

例えば、板橋区では、区内3か所の福祉事務所に専門相談員を9名配置し、区内企業を戸別訪問し、求人を開拓する事業を行い、履歴書の書き方や面接対応などのセミナーを開催するとしており、また、墨田区では、庁舎内に就職支援コーナーを置き、ハローワークと連携して区やハローワークの職員4名を常駐させ、生活保護の申請などで区役所を訪れた人を同コーナーまで案内して求人紹介する事業を開始するとしています。さらに、八王子市や埼玉県では、平成22年からNPO団体と連携して、就労支援対象者に、安定した地域生活支援、就労のための日常生活習慣支援に加え、就労のための技能訓練や教育支援等をサポートすることによって前年の就労実績を大幅に向上させたと聞いています。以上のように、とりわけ「その他世帯」については、直接就労につながるような自立支援の取り組みを積極的に採用していくべきと考えますがいかがでしょうか。


次に、生活保護費の適正な支給の徹底について伺います。
生活保護受給者の増加に伴い、貧困ビジネスや生活保護の不正受給が増えているといわれています。練馬区でも昨年の第3回定例会において「生活保護費返還請求に関する訴え」が提出されました。本件は対象者が支払いに応じたため提出が撤回されましたが、仮にこうしたケースが氷山の一角だとするならば、「生活困窮者に対して自立を助長する」ことを目的としている生活保護制度の根幹を揺るがしかねない事態であり、区としても再発防止の徹底を図るとともに、改めて受給の適正性を精査すべきと考えます。

前述の中間報告では、「不正受給に対する取組の徹底 」として、「悪質な不正事案に対しては、刑事告訴・告発をする等福祉事務所において厳正な対応が必要である」とし、この円滑な実施のために、国が告発の目安となる基準の策定について検討する必要があるとしていますが、こうした国の動きも含め、区における生活保護費受給の適正化についてご所見を伺います。
この項の最後に指摘しておきたいのは、現行の生活保護制度の実態は本来の目的であるべき「自立支援」ではなく、困窮してから事後的に救済する「救貧対策」になってしまっているということです。そして現実には、貧窮によって気力を失ってしまった人を救い、立ち直らせ、経済的に自立させることは容易なことではありません。もちろん、現に経済的に困窮している人の自立を促す不断の努力は大切ですが、これからの生活保護制度の在り方として、従来の「困窮対策」だけではなく、貧困を未然に防ぐいわば「防貧対策」の考え方を取り入れていくべきとの指摘がなされています。

生活保護制度の見直しを含め、今後のセーフティーネットのあり方については、一義的には国家レベルの課題でありますが、私ども区政に携わる者にとっても非常に重要な指摘であり、自治体もこうした観点からの福祉施策の拡充が求められていると考えますが、ご所見を伺います。



==答弁==


●生活保護制度について。
・生活保護制度に対する課題認識について。
生活保護制度は、最後のセーフティネットとして社会的に必要な制度であると考えております。一方、制度の創設以来、大きな見直しがされることなく、60年余が経過しており、その間、高齢化の進展や、家族形態の変化、就業構造の変容などによって制度上様々な課題が指摘されているところであります。区といたしましても抜本的な見直しが必要になっていると認識しており、稼動能力のある若年層への有期保護制度の創設や高齢者世帯対象制度の分離、ボーダーライン層への就労支援制度の創設等の対策を検討するべきであると考えております。

なお、「生活保護世帯に関する国と地方の協議」の中間とりまとめにつきましては、これらの課題に触れられており、制度の改善に向けて国と地方の共通認識が得られたものと評価しています。今後、早急に、改善策の具体化を期待しているところであります。

 次に、自立支援の取り組みについてであります。区では、就労意欲と就労能力のある受給者に対し、就労支援専門員による情報提供や助言などの支援を行っており、パートや短時間勤務の就労形態を中心として年間延べ、400件以上の実績をあげております。一方、複雑な生育歴や家庭環境などの要因により生活力や就労意欲が著しく低いなど、一般的な就労支援では対応が難しい受給者への支援策が大きな課題であると認識しており、平成24年4月から就労サポーターを配置し、一層の就労支援の強化に取り組むこととしております。
この事業では、自立の阻害要因となっている課題の解消を図るため、居宅への訪問を頻繁に行うことにより生活実態を的確に把握し、生活再建に向けた具体的な展望を共に考えるなど、きめ細かな支援を行うことにより、就労意欲を喚起してまいります。なお、総合福祉事務所の、窓口での生活相談においても、相談者の個別の事業に応じ、ハローワークと連携し、就職情報の提供や就労に必要な助言などを行っており、今後、さらに丁寧な対応えを行い、就労の支援に努めてまいります。

 次に、生活保護費受給の適正化についてであります。まず、受給の決定時には資産調査や扶養調査を徹底して行い保護の適正な要否判断に努めております。
受給中には、就労収入や年金収入についての申告指導も徹底するとともに、医療費につきましても、電子化されたレセプト点検による効率的なチェック体制を整え、過剰な受診や薬剤の支給の防止などに取り組んでおります。

 また、交通事故の賠償による保険金の受け取りなど、一時的に多額の収入が見込まれる場合には、受給者の生活状況の把握に努め、保険会社や代理人などとの連絡体制を十分に確保し、保護費の過払いが生じることないように取り組んでまいります。
なお、不正な手段による受給については、警察当局と連携を強化し、厳正に対応してまいります。

 次に、セーフティネットの観点からの福祉施設の拡充についてであります。区では、現在、ボーダーライン層に対する支援として、求職者への住宅費を支援する住宅手当緊急特別装置事業やひとり親家庭に対する職業訓練費の助成事業を実施しており、緊急雇用対策として、介護人材雇用促進事業やトライアル雇用の利用促進事業など、さまざまな取り組みを進めております。
 今後も国や東京都の施策と連携し効果的な支援策の展開に努めてまいります。
また、自立を支援するためには、経済的な側面だけではなく、介護や子育て、障害などに関する生活上の複合的な課題の解決が求められる場合もあり、これらの生活相談につきましては、窓口における支援力の向上や関係機関の連携の強化により、対応していく必要があると考えております。