ゴッホ兄弟の生き様と、日本との絆。
1886年のパリ。芸術の都として名を馳せる都市では日本画の流行が始まっていた。
そんな中、兄フィンセントの行く末を心配する画商、テオはある男に出会う。
職場の上司におすすめいただき
手にとってみました。
ゴッホについて語る作品と聞いた時から
あ、これは辛い話になるなあと思いましたけど…
やっぱり辛くて切ない…!
生前全く認められなかったゴッホ、
そして弟テオが
印象派が台頭してくるパリで
出会う日本画、そして日本人画商との友情。
フィクションですが
きっとこんな交流もあったのではないかと
信じたくなりました。
芸術の変化、新たな芸術の誕生、
そしてその黎明期の芸術家たちの苦しみや
画商たちの思惑、
購入する富裕層たちの芸術への目線。
タイトルの通り沈まずとも
たゆたう時間の心の流れ。
そしてたどり着いた場所。
淡々と物語は紡がれていきますが
その中で揺れ動く心理描写に一喜一憂。
狂言回し役でもある加納重吉の視点が
読者の代理としてこの強すぎる個性と向き合い
兄弟を支え、
キーパーソンとなる上司、林忠正の抱く
理想を鮮やかに浮かび上がらせます。
視点は違いますけど
ウィレム・デフォーさん主演の
「永遠の門」と重ねてみると
…辛くも、激しい心が見えてきます。
いい本でした…泣けます。