大好きな斎藤隆介の児童書

天の爺様と婆様は、わが子も同然の美しい雪ん子に

ある夜語る。

天の降らす雪が下界の汚れにより

黒く染まってしまう。

その汚れを落とすため、下界へと旅立ち

1年以内に下界を美しくすることを…。

雪ん子はその夜旅立ち…。

 

「モチモチの木」「花さき山」などで有名な斎藤先生。

この滝平先生の美麗な切り絵がすごく好きで

特にこの「ゆき」が馬を駆る姿は一度

自分で切らせてもらったほど大好きでした。

 

ですが全くストーリーは知らなかったので

今回電子で発見し、拝読しました。

 

下界のことを何も知らない世間知らずの

美少女ゆきが

みなしごで乞食を統括する親方に

養われるハナやその親方、

またハナたちが商売させてもらう村の爺様たちと

出会い、人の苦しみや悲しみを知り

その苦しみを生む者たちと戦っていく。

 

まさにジャンヌダルクのようです。

ゆき自身は心の根の優しい

気弱なくらいな女の子なのですが

徐々に人のため、皆のために

野侍の群れや国の侍たち、

ついには百姓の心に巣食う魔ともいうべき

存在に立ち向かっていきます。

 

人の世の道理も不条理も

東北の言葉で時に強く時に優しく

時に無情に語られる様は

まっすぐと心に響いてきます。

 

特に村のリーダー的存在の爺様の言葉は

含蓄がありますね…。

ゆきが爺様の言葉に

最も影響を受けていったのは当然。

この爺様がゆきの下界での先生となりました。

 

爺様の影響を受けて親方も

まっとうに怒れるちゃんとした「親」に

なっていくのもよかったですね。

 

1年で村々を平定しろという(できなければほぼ死)

無理難題、ゆきはどのように果たしていくのか。

 

心に残る名作です。