アンナ・カヴァン名義初の短編集

見知らぬ城の地下牢で幽閉される女、
いつ終わるとも知らぬ裁判、
名前も知らぬ絶対的な敵、
精神病棟で日々を過ごす人々。
閉塞された心理を描く短編集。
「氷」で有名なフランスの作家。
生涯を不安定な精神とヘロインの常用を抱えた著者の
不安や恐怖がひしひしと伝わってきます。

正直言ってこの短編集、刺さりました。
自分の状況もわからず安全だからと
閉じ込められる人々。
高齢者施設での利用者さん達の不安は
これに近いと想像してしまい…
自分の日常にこの恐怖が潜んでいるのではと…
辛く恐ろしさを感じ、苦しくなりました。

特に表題作のアサイラム・ピース。
クリニックで暮らす人々の閉塞感や
未来の見えない恐怖。
解放への叫び。
辛い(T . T)

背景ははっきりと表現されてるとこもあるのですが
なんとなくぼやけたイメージで、
霧の中での物語を見ているような印象です。
それがとても美しいので決して読みづらさはないですが。

個人的に苦しい読書となりました。
それだけ筆力のある作品です。