詩歌をもとにした幻想世界。

戦場から帰還した男は、愛人と暮らしていた妻を射殺した。

叔父の家に住む少年は、叔父の縁有る

哀しい女性に思いを寄せる。

夏の海辺で少年に出会い別れた少女は

年を経て楽器となった少年に再会する。

 

画像はhttp://www.gozasouichi.com/gozasouichi31より

 

戦前戦後が舞台になった

幻視したような情景が浮かびます。

さびれた漁村に残酷な水の力が感じられたり

祖母の家の二階に暗い異世界が感じられたり。

子供のころどこかで見た

「はいってはいけない」場所を垣間見る。

そんな空間でした。

 

表題作は虚無感に満ちてます。

ラストに彼は引き金を引いたのか。

死んだように生きるという

一つの形が見られました。

 

ラストの「遺し文」は哀しすぎます。

大陸で夫を殺され自らは辱められて

その傷を抱え続けた女性との

ほんのひと時の会話。

ガラスのようにもろくて透明で残酷…。

 

この文章はやはり素晴らしい…。

もっと読みたい皆川先生。

そう思った曰くつきの宝石のような

短編集です。