詩歌をもとにした幻想世界。
蝶 (文春文庫) [ 皆川博子 ]
575円
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戦場から帰還した男は、愛人と暮らしていた妻を射殺した。
叔父の家に住む少年は、叔父の縁有る
哀しい女性に思いを寄せる。
夏の海辺で少年に出会い別れた少女は
年を経て楽器となった少年に再会する。
画像はhttp://www.gozasouichi.com/gozasouichi31より
戦前戦後が舞台になった
幻視したような情景が浮かびます。
さびれた漁村に残酷な水の力が感じられたり
祖母の家の二階に暗い異世界が感じられたり。
子供のころどこかで見た
「はいってはいけない」場所を垣間見る。
そんな空間でした。
表題作は虚無感に満ちてます。
ラストに彼は引き金を引いたのか。
死んだように生きるという
一つの形が見られました。
ラストの「遺し文」は哀しすぎます。
大陸で夫を殺され自らは辱められて
その傷を抱え続けた女性との
ほんのひと時の会話。
ガラスのようにもろくて透明で残酷…。
この文章はやはり素晴らしい…。
もっと読みたい皆川先生。
そう思った曰くつきの宝石のような
短編集です。