母からおすすめいただきました。

本屋大賞受賞作品。

高校生の時、ピアノ調律師の板鳥に出会い

調律に見せられた僕、外村。

高校を卒業後引き寄せられるように

調律師の専門学校へ、そして板鳥のいる工房へ。

人と出会い人に教わり音を感じ森に迷いながら

外村はゆっくりと成長していく。

 

森林浴のような静かでさわやかで、

木漏れ日と静かな葉擦れの音を聞いた時のような

心地よさのある読み口でした。

 

一人の青年が迷いながらも進んだ場所を道として

時に導かれ、時に自ら選択して一歩一歩歩いていく。

一人だけど一人ではなくて、

一人ではないけど一人で。

人生そのものだなと思いました。

 

外村君の人の意見を取り入れつつ、

自分の感じたことも素直に受け入れる性格が

この静かな物語を作り上げてます。

素晴らしい人間、ではなくてどこにでも普通にいそうな、

でも滅多にいない人格。

彼の目線だからこそ、

この物語には誰一人嫌な人間がいないのではないでしょうか。

本当に皆がいい人…なのに決して平坦な物語ではありません。

私もピアノは習いましたが、

楽譜の通り指を動かすしかしたことがないので

ピアノの音に向き合うなど考えたこともありませんでした。

ですがこの小説を読んで耳に蘇るピアノの音は

予想外に鮮明で。

実家の調律したこともないピアノに

久しぶりに触れたくなりました。

ちなみに実家のピアノは学校などより

ハンマーが少し重くて、音に少し曇りがありましたが。

その少し曇った音が好きだったなあ、なんて。

思い出したりして。

 

心地よい時間をいただける小説です。

映画も俄然興味が出ましたけど…間に合わないかな…