パトリック・ネス原作のダークファンタジーYA小説。

 

 

難病を抱えた母と暮らす少年、コナーは

愛する母を失う未来を恐れ、学校ではいじめられ孤独な毎日を送る。

ある晩、裏の墓地の巨木が怪物となって動き出し、物語を語りだす。

三つの物語を終えた後、コナーの真実を語れと迫る。

 

怪物の物語が導くコナーの真実とは。

 

原作が素晴らしかったので、この映画とても楽しみに待ってたのですが…。

怪物のビジュアルはイメージそのまま。

原作の持つ鬱蒼とした、しかし幻想的な空気が見事に映像化されていました。

 

王冠を義母から取り戻すために恋人を犠牲にした王子、

娘のためにかつて自分が陥れた男を頼り信念を捨てた神父、

誰にも見えない男の孤独。

美しいアニメーションや、少年の幻想により語られるお話がまた印象深く、

そこからどうしようもない現実が見いだされる。

 

そしてコナー少年の鬱屈がまた辛い。

最愛の母は徐々に死に近づき、

離婚して別に家庭を持つ父は気を遣いつつもコナーを持て余し、

母の代わりに世話をしてくれる祖母は好きになれず

学校では陰湿ないじめを受ける。

 

その鬱屈を晴らすために

いじめっ子にキレて叩きのめして問題になったり、

気の合わないおばあちゃんの家のリビングを破壊したりしてしまうのですが、

そのあとで途方に暮れてしまう姿がまた悲しくて、

いっぱいいっぱいになってしまう少年の心が刺さってきます。

 

そんな中、心を解放しろと強引に導く怪物の幻。

クライマックスで母を見捨てる悪夢を見せられ、

コナーがついに苦しみを吐き出した時、もう涙が止まりませんでした。

 

苦しみを受け入れたとき、世界が広がっていく。

それでいいと言ってくれる存在がいてくれる。

苦しみを分かち合ってくれる人がそばにいる。

それに気づけたとき、喪失を受け入れ、前に進むことができるようになる。

 

素晴らしい苦しみと受容と前進の物語でした。

最後に「怪物」や「物語」がどこから来たのかがはっきりしますが、

それがさらに感動を呼びました。

 

また見た時、小さな子供たちを置いて亡くなった小林麻央さんに重なって

余計涙があふれて…。

 

 

午前中の映画だったのですが、目を腫らして街を歩くことに;;

本当に素晴らしかったです…映画化ありがとうございました…!

 

お母さん役はローグ・ワンインフェルノで最近よく見てたフェリシティ・ジョーンズ。

やつれた姿が痛々しくも、強い母でよかった。

そしておばあちゃんはシガニー・ウィーバー、怪物の声はリーアム・ニーソンと

かなりの豪華キャストでした。最高!

 

 

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