日産の会長カルロス・ゴーン氏が逮捕されましたが、企業人としての偉大な業績のゆえに神格化されつつあり、強大な権力を保持したがために失脚の轍を踏んだという点では、旧約聖書のモーセに似ていると思います。

ところで、モーセは、ナイル川から拾われ、エジプトのファラオの王子として育てられました。一方、カルロス・ゴーン氏は、ブラジル出身ですが、フランスの大学を出、フランスの工学博士号を有していました。その後、ミシュラン社での業績を評価されて、ルノー社の上席副社長としてスカウトされました。モーセは、イスラエル民族を率いて紅海を渡り、シナイの荒野でイスラエルの指導者として活躍しましたが、ただ1度の失言のために約束の地カナンには入れませんでした。旧約聖書を読むと、モーセが約束の地で神格化されることを嫌った神がモーセの失言を口実として約束の地に入れなかったとも思えます(出エジプト17章1-7節、申命記6章6節、ユダ書9節)。
すなわち、イスラエル民族を約束の地カナンに導くことが最大の使命であったモーセが約束の地に入り神格化されて崇拝の対象にされる危険性を神は感じたと考えられます。神のみが崇拝の対象であることが神の目的でしたから。19世紀の有名なイギリスの政治学者ジョン・アクトンは、”Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.(「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」)と言っていますが、日本社会の「絶対的な権力」が発現しそうになると抑止する力が働くようです。田中角栄にしろ、堀江貴文にしろ、こうした例だと思います。ただし、日本の刑事裁判における第一審有罪率が99.9%であることや捜査当局による長期の勾留が認められる日本の刑事司法に対してフランス人は疑問符を付していますから、カルロス・ゴーン氏が刑事裁判で有罪とされてもフランス人一般は素直に結果を受け入れないと考えます(ベルナール弁護士:You Tube傑作動画選その2:「フランスTVも注目する日本の特捜問題 (MAD) 」)。確かに日本人には日本人の文化や刑事手続制度の運用があると思いますが、日本人の文化、宗教観及び刑事手続制度の運用は世界の中でも極めて異質です。
フランスの刑事司法制度で「逮捕した被疑者を起訴せずに警察署などに留置することのできる時間は、原則として 24 時間で、例外的に治安判事の許可を得て96時間まで留置期間を延長することができます。(https://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/pdfs/dai5gijiroku-1.pdf)。日本の刑事司法制度では、警察は逮捕後48時間以内に被疑者の身柄を送検しなければならず、検察官は警察が逮捕してから72時間以内に裁判官に勾留請求しなければなりません。最初、勾留は10日間まで認められ、必要に応じて、検察官は、更に10日間の勾留延長を裁判官に請求できます(刑事訴訟法205-208条:内乱罪等特殊な場合には更に5日間、25日間まで勾留が認められ得ます)。この制度上の違いもフランス人の判断に影響を与える可能性があります。