隣家の初老の女性を損害賠償請求で東京地方裁判所に1月6日付で提訴しました。請求原因は添付訴状に記載された通りです。ただし、同女性の名字は知っているものの名前は知らなかったので、住所と名字のみを記載した訴状を提出いたしました。なかなか第一回公判期日の指定がないので、令和2年1月30日午前中に東京地方裁判所に問い合わせたところ、民亊第7部に係属、担当裁判官は小川理津子氏、事件番号は令和2年(ワ)第681号、担当書記官は岡田淑子氏であることが判明しました。その時、岡田書記官から訴状の補正が必要であるので、近日中にその通知が自宅に届くとの回答を得ました。
2月9日に東京地方裁判所からの通知を受け取ってみると、「被告の正確な氏名を記載した書面を提出すること」との内容の補正命令でした。そこで、2月10日午前中に世田谷区役所烏山総合支所の窓口に行き、事情を説明して訴状と補正命令を見せて住民票の発行を申請すると、窓口の担当者は「理由はともかく名字だけではなく名前も記載しないと住民票は発行できない」とのことでした。そこで、「そもそも名字がわかっても名前がわからないから住民票が必要なのです」と説明すると、担当者は「氏名の記載を要するというのが規定ですから」と回答して住民票の発行はできないとの立場を固持した。また、同担当者は「表札を見るか、ご本人から名前を聴けませんか」と尋ねてきたので、「表札に名前は書いていないし、被告に訴訟を提起したから名前を教えてくれと頼んでも教えてくれるはずはありませんよね」と答えた。
仕方がないので、同日午前11時頃、東京地方裁判所民事第7部に電話をし、岡田書記官と話をした。「名前を知ることができない」と事情を説明すると、岡田書記官は「期日までに被告の正確な氏名を記載した訴状を提出しないと、訴状は却下される」との回答でした。そこで、私が「その世帯には夫婦2名しか住んでおらず、妻と指定すれば、被告は特定されるのではありませんか」と尋ねると、岡田書記官は「裁判所はそのお宅に2名だけ住んでいるかどうかは確認できません」と回答しました。
次に、「調査嘱託の方法で被告の名前を確認できませんか」(民事訴訟法第186条)と尋ねると、岡田書記官は「裁判所は調査できません」との回答でした。(平成16年(ラ)第99号 訴状却下命令に対する即時抗告事件(基本事件:富山地方裁判所平成16年(ワ)第315号))では調査嘱託を認めています。
また、「判例上は通称や芸名でも可能だとしていると思いますが」と尋ねると、岡田書記官は「訴状に記載されているのは名字だけで通称や芸名ではありません」と回答しました(名字だけと通称や芸名が実質的にどれだけ違うか疑問です)。「民事訴訟の当事者は,判決の名宛人として判決の効力を受ける者であるから,他の者と識別することができる程度に特定する必要がある。自然人である当事者は,氏名及び住所によって特定するのが通常であるが,氏名は,通称や芸名などでもよく,現住所が判明しないときは,居所又は最後の住所等によって特定することも許されるものと解される」(平成16年(ラ)第99号 訴状却下命令に対する即時抗告事件(基本事件:富山地方裁判所平成16年(ワ)第315号))。
さらに、「必ずしも訴訟提起の時点で訴訟当事者を特定する必要があるわけではなく、調査嘱託等をすることなく,直ちに訴状を却下することは許されないという判例はありませんでしたか」と尋ねると、岡田書記官は「判例がどうあろうと個々の事件に関しては裁判官が判断します」との回答を受けました。「なるほど,訴状の被告名は上記預金口座の名義人である片仮名の名前にすぎず,しかも,住所表示(訴状送達の便宜等のために有益であり,また,被告を特定する上で有用であることから実務上記載されるのが一般である。)は「不詳」とされている。しかし,抗告人は,本件訴訟提起前に,弁護士照会等により,所轄の滑川警察署長及び上記預金口座のある三井住友銀行永山支店宛に「コウヤマイチロウ」の住所及び氏名(漢字)を問い合わせるなどの手段を尽くしたものの,協力が得られず,やむなく上記の記載の訴状による訴えを提起したことが認められる。そして,抗告人は,本件訴訟提起と同時に上記銀行に対する調査嘱託を申し立てているところ,これらの方法により,「コウヤマイチロウ」の住所,氏名(漢字)が明らかとなり,本件被告の住所,氏名の表示に関する訴状の補正がなされることも予想できる。したがって,本件のように,被告の特定について困難な事情があり,原告である抗告人において,被告の特定につき可及的努力を行っていると認められる例外的な場合には,訴状の被告の住所及び氏名の表示が上記のとおりであるからといって,上記の調査嘱託等をすることなく,直ちに訴状を却下することは許されないというべきである」(平成16年(ラ)第99号 訴状却下命令に対する即時抗告事件(基本事件:富山地方裁判所平成16年(ワ)第315号))。
隣家の住人の一人が加害者であり住所と名字と携帯番号が判明しているのに訴状における被告の特定が不正確として訴状を却下されるのには納得ができません。仮に訴状が送達されて被告が応訴すれば、その過程で名前も明らかになる可能性があるのに、調査嘱託も認めずに、門前払いの訴状却下では実体審理は一切行われず、決着が付くのが正当とは思えません。