「科学的に証明できないから、神など存在しない。」と言う人々がいます。スティーヴン・W・ホーキング博士は、「宇宙は神により創造されたのではない。宇宙の存在は極めて自己完結的である」と述べています。これに対し、ローマ法王ベネディクト16世は、「宇宙は神の創造物である」と反論していますが、後に、「宇宙物理学の理論と神の創造に対する信仰は矛盾しない」とコメントしています。これは、科学と宗教を同次元で論じることには無理があるとの趣旨からコメントされたものであると理解されます。実際、多数の神の存在を信じる信者にとって彼らの神の創造に対する信仰は科学的証明の可否に依存していません。
ところで、SF(Science Fiction)も、人類の科学技術の現水準の視点からすれば、神の創造に対する信仰と同じほど非現実的にも思えます。宇宙大作戦シーズン2の「宇宙300年の旅 “By Any Other Name”」では、カーク船長が「コンフェデレーション級の戦艦でアンドロメダ銀河まで数千年かかる」と述べています。ところで、STAR TREK科学技術解説によれば、 宇宙大作戦シーズン2でのエンタープライズ号の最大船速は、ワープ6であり、光速の216倍の速さです。このデータから計算すると、エンタープライズ号のアンドロメダ銀河までの到達時間は、250万光年÷216=1万1574年です(23世紀の地球連邦の技術水準)。その後のシリーズで24世紀の地球連邦の科学技術で最大ワープ速度によりアンドロメダ銀河まで300年かかるとされています。一方、アンドロメダ文明ケルバンの科学技術水準でもアンドロメダ銀河から天の川銀河に到達するのに、300年を要したとされています。ところで、アンドロメダ銀河から天の川銀河に300年で到達するには、250万÷300=(光速の)8333倍の速度を要します。
なお、ワープ6では、最近恒星ケンタウルス座アルファ星プロキシマ星まで約7日を要し、エンタープライズ号は、宇宙大作戦で行ったほどの自由な宇宙調査旅行をできません。Star Trekの5年間の調査旅行を想定すれば、5年×216光年=1080光年しか移動できません。たかだか1080光年(常時最大ワープで移動し飛行時間以外は考慮しなかった場合)の調査旅行では、単純計算で銀河系の直径10万光年の約93分の1しか移動できないことになります。惑星上陸や調査活動や戦闘による時間ロスを考慮すれば、せいぜい半分の500光年の調査が限度でしょうか?
ところで、ワープ航法は、化学反応を利用した推進力の宇宙船のように慣性航法に依存していませんから、宇宙空間を飛行し続けるには常に新たなエネルギーによる推進力を必要としています。慣性航法であれば、一度、亜光速(光速の99%)まで加速すれば、真空の宇宙空間をほぼ永遠に亜光速で飛行し続けられます。STAR TREKのストリー設定によれば、エンタープライズ号の推進力は反物質反応に依存しており、常に膨大なエネルギーを必要としています。ですから、宇宙空間を長期間ワープ航法で飛行し続けるのは不自然であり、無理があります。ましてや5年間の調査旅行のために要する膨大なエネルギーの貯蔵や宇宙空間での調達は不可能だと言えるでしょう。
ところで、キリスト教徒の中には「宇宙が存在するのは誰かが造ったからだ。だから、宇宙には創造者が存在する」という論法を採る人々がいます。彼らは、「精巧で正確な法則性に従って存在する宇宙は偉大なる理知ある創造者により創造されたに違いない」と主張します。とはいえ、「宇宙が存在するのは誰かが造ったからだ。だから、宇宙には創造者が存在する。精巧で正確な法則性に従って存在する宇宙は偉大なる理知ある創造者により創造されたに違いない。」という論法には無理があるように思えます。なぜならば、彼らも、宇宙で最も偉大な神自身が誰にも創造されずに自存する自己完結的な存在であることを認めているからです。すなわち、神ご自身が「最も偉大でも誰にも創造されなかった最たる例外」ということになります。
論理的に考えれば、神は誰かに創造されたか又は誰にも創造されなかったか、すなわち、神にも創造者が存在するか又は神は自存する自己完結的な存在であるかの二者択一的な結論になります。しかし、神にも創造者が存在すると結論付けると限りなく上位の創造者を想定する無限の連鎖に陥り、いずれは自存する自己完結的な存在に到達せざるをえません。一方、仮に聖書の神が他の何者の関与も受けずに自存する自己完結的な存在であるとすれば、聖書の神の関与しないところで自存する自己完結的な他の存在が存在する可能性を否定することは論理的にできないということになります。すなわち、聖書の神のみを唯一の論理的例外にすることに合理的根拠はありません。