ピンヒールは割り箸より細い。
まるで針のように尖って、地面を刺しながら、全体重を支えてくれている。
「この靴は、繊細で、華奢で、40キロ以上は支えられない。雨にも濡れられない。正しい姿勢でしか耐えられない。この靴を履ける女性は、特別美しいだろう。」
某有名靴ブランドのデザイナーが雑誌のインタビューでそう語った。
もちろん、このデザイナーはもの凄いバッシングを受けた。
この靴に憧れる女性が、不健康なダイエットに走る。
自分を過大評価しすぎている。
ブランドの名前に酔った独裁者。とまで言われた。
私は、彼の言葉に深く共感した。
そして、何が何でも履いてみせる。そう誓った。
数年後、私はその靴を手に入れた。でも、結局履くことはなかった。
今も実家の押し入れに美しい姿のまま残ってる。
体重overなのももちろんだが、私は、履いて美しい靴を汚したくなかった。
壊してしまいそうで…怖かった。その靴が醜い姿になるなんて想像もしたくなかった。
美しいものには、絶対服従してしまう。
バッシングを受けた彼は確かに心に闇を抱えていた。
でも、彼は正しい。
美しいものは、繊細で壊れやすい。
私は今、ペタンコ靴を履いている。
この靴は、美しくはない。
けれど、安心して任せられる。
私を安全で安定した場所へ運んでくれる。
私はこのペタンコ靴をいとおしく思う。
雨で濡れても変わらないその姿をカッコいいと思う。
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