就業規則のネタ -44ページ目

第○○条  休職の種類

休職制度について定める場合、大きな会社であれば 

 私傷病による場合

 メンタルヘルス上問題がある場合

 公職につく場合

 刑事事件で起訴された場合(無罪になる可能性もある)

 労働組合に専従する場合

 出向(在籍出向)する場合

 留学など個人的に長期に会社を休む場合

などの理由で休職するということが考えられます。しかし、大きな会社でなければ、従業員の業務外の傷病、及び、メンタルヘルスに対する対策というように焦点を絞り、それ以外の休職については、その都度判断していってもよいのではないかと考えています。


私傷病の場合は、いきなり休職に入るということはなく、欠勤がある程度の期間続いたことにより、休職に入ることになります。

欠勤がどの程度続いた時点で休職とするかは各会社の自由です。

この期間を決めるのに考慮することは、

 全従業員に休職制度を適用するのか、休職が適用されない従業員もいるのか?

 休職を適用しない従業員がいる場合に、その従業員がどの程度の期間欠勤するのを会社として許容できるのか?

という点となります。

休職を、従業員の区分によって適用したりしなかったり(正社員のみ適用するなど)、

     勤続期間によって適用したりしなかったり(勤続1年以上の従業員のみ適用するなど)

ということも割とよくあります。


全従業員に休職制度を適用するのであれば、欠勤期間と休職期間は一体のものとして考えて大きな問題はありません。しかし、休職制度を適用しない従業員がいる場合、その従業員は、ここで決める欠勤期間を超えても会社に復帰できない場合は、解雇又は退職ということになってしまうので、欠勤期間の長さは大きな意味を持つことになります。


私傷病により休職する場合、休職するかどうかで従業員ともめることはまず無いでしょう。しかし、メンタルヘルス上の問題での休職の場合は、従業員が納得して休む場合ばかりでなく、従業員自身が休職したがらない状態で、会社が休職を命じなければならない場面も想定されるので、その点に注意を払わなければなりません。


うつ病等のメンタルヘルスの問題の場合は、従業員が無理をして、会社の休職の勧めを拒否するということが珍しくありません。

しかし、もし症状が重くなり、自殺など最悪の事態が発生した場合には、従業員やその家族も不幸ですし、会社も、従業員の安全配慮義務や健康管理義務を怠ったとして責任を問われることになってしまいます。

そのような事態を避けるためにも、会社としてある程度強制的に休職させるということも想定し、就業規則に定めておく必要があります。当然、会社が勝手に休職を命じるのは問題があるため、医師の診察を受けさせ、休職する必要があることを確認したうえで命じる必要があります。

この点は、最近大きな問題として認識されるようになってきた部分であり、最近就業規則の見直しをしていない会社は注意しなければなりません。


以下、一般的な条文を例示します。



(休職の種類)

第○○条

従業員が次のいずれかに該当し、会社が必要と認めたときは休職とする。

①業務外の傷病により、欠勤が1ヶ月を経過したとき。ただし、この場合の欠勤については、当該傷病の初診日から1年間に限り、同一傷病またはこれに関連して発症した傷病(以下、「同一傷病」という)による欠勤期間を通算する。

②業務外の疾病による欠勤が生じていない場合であっても、次のいずれかに該当するとき

 (1)精神または身体上の疾患により業務に耐えられない、または病勢が増悪する恐れがあると会社が認めたとき。

 (2)勤務状況、健康診断結果等から本人の健康状態に問題が生じていると推察される場合であって、それにより業務に耐えないまたは業務により増悪する恐れがあると会社が認めたとき。この場合、会社は健康状態の正確な把握のため、会社が指定する医師または産業医への受診を求めることがある。その際、従業員は正当な理由なく受信を拒否することはできない。

 (3)前各号の他、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき



休職については、普段は会社も従業員もあまり気にしていないため、実際にどのような制度なのかよく分かっていないことがけっこうあります。実際に休職する必要が出てきてから、会社と従業員の休職に対する認識の違いが表面化してきて問題となることもあるため、あらかじめ制度についてよく理解させておくことも意外と重要なことであると考えています。

休職について(概要)

休職というのは、就業規則がある会社ではまず間違いなく定めている制度です。しかし、休職という制度の認知度は、意外なほど低いものです。

その理由としては、従業員が、自分が怪我をして会社を休むということをあまり想定していないこと、また、もし怪我をして休んでも治れば当然職場に復帰できるものと考えていること、の2つを個人的には考えています。

休職について、二つ目の理由のように実際に定めていれば、休職というものを理解していることになるのかもしれませんが、休職という制度があってはじめて、怪我をして休んでも治れば職場に復帰できるのであって、当然にそうなるわけではないということを理解している人は、驚くほど少ないと思います。

その原因としては、労災による怪我とプライベートによる怪我(私傷病)を混同していることもあるのではないかと思います。


労災による怪我の場合は、会社としては基本的に解雇することができないので、会社に在籍したまま、怪我の治療にあたることになります。

しかし、私傷病の場合は、休職という制度を設けなさいという決まりはどの法律にも無いので、怪我をして働けなくなれば会社から解雇されてもしょうがないのですが、一定の期間のうちに怪我が治り、職場に復帰できるのであれば、解雇せずに復帰を待つことが会社にとっても従業員にとってもお互いに良いことだという事になるので、会社が任意で休職という制度を設けているのです。

逆に言うと、一定の期間のうちに怪我が治らない場合には、解雇となったり、退職という扱いになったり、ということになります。


休職は、

 私傷病など一定の理由の場合に、

 一定期間、従業員として会社に籍を置きながら

 労働義務を免除する

 (ただし、一定期間を過ぎても会社に復帰できないときは、会社が定めるところにより解雇なり退職なりということになる)

というものと捉えると分かりやすいと思います。


私傷病以外の一定の理由として、

 公職につく場合

 刑事事件で起訴された場合(無罪になる可能性もある)

 労働組合に専従する場合

 出向(在籍出向)する場合

 留学など個人的に長期に会社を休む場合

などを挙げている会社もあります。


ただ、休職を定めるにあたり、

 私傷病で休んでいる従業員の取り扱いをどうするか

 うつ病等のメンタルヘルス対策としての休職制度の活用

がやはり重要となります。


私傷病の従業員に対しては、

 いつまで休職を認めるのか、

 その間有給とするのか無給とするのか、

 社会保険等の負担をどのように負担するのか、

 復職の可否をどのように決定するのか、

 復職できない場合どのように取り扱うか、

 復職後すぐにまた会社を休み始めた場合どのように対処するのか

など、たくさんの問題が想定されます。

メンタルヘルスの対策の場合、私傷病の場合の問題のほかに、

 自覚症状のない従業員を休職させる基準を定めたり、

 職場復帰の方法に細心の注意を払ったり、

といったことにも配慮しなければなりません。

このようなことを、会社として従業員にどこまで約束できるのか、ということを頭に入れつつ決定していかなくてはならないでしょう。


今回は、休職の概要を書きましたが、次回から何回か、休職の詳細について書いていきたいと思います。

第○○条  特別休暇

特別休暇は、本人又は親族の結婚、親族が死亡したときにとることができるよう定められているのが一般的です。このような場合、「慶弔休暇」と呼んでいる場合もあります。

また、会社によっては、勤続年数などに応じて、リフレッシュ休暇などの、長期休暇を定めていることもあります。

いずれにしても、特別休暇のような休暇を定めることは、法律には全く定められていないため、各会社の自由となっています。自由であるから、経営者の考え、会社の特徴というものを前面に出していくことができます。その点も考慮すると、良い制度ができるのではないかと考えています。


会社が独自に定める休暇については、独自に定められるからこそ注意すべき部分があります。

注意すべき部分としては、

 ①会社として、問題なく休暇を与えることができるのか?

 ②休暇を与える要件が、誤解の無いように明快に示されているか?

 ③休暇中の賃金は有給とするのか無給とするのか?有給であれば、どの程度支払うのか?

 ④休日との兼ね合いをどうするか?

などが挙げられます。


①の、会社として、問題なく休暇を与えることができるのか?

については、特別休暇の内容を決定する上で最も重要な部分であり、どの程度の休暇なら従業員に与えられるのかということにより、②~④の内容も決まってくることになります。

一度就業規則に定めたことを、従業員にとって不利な方向へ変更するのはけっこう難しく、また、就業規則に定めた休暇を実際には与えないということになると、従業員との深刻なトラブルともなりかねません。そのため、会社の身の丈にあった、無理なく与えられる休暇を与えるよう定めることが非常に重要となります。


②の、休暇を与える要件が、誤解の無いように明快に示されているか?

については、休暇を取得できる条件があいまいであることにより、休暇を取得できるできないで従業員ともめるということは、会社にとっても従業員にとっても大変ばかばかしいことです。しかも、結婚や葬儀で実際に休むときになっては、もめることすらはばかれるものであるため、あらかじめ条件を明確にし、お互い嫌な思いをしないようにしましょう、ということになるでしょう。

 休暇の対象者は従業員全員なのか、それとも正社員だけなのか?勤続年数は関係あるのか?

 親族の範囲はどこまでとするのか?

 休暇を与える期限はあるのかないのか?

 半日単位、時間単位でも与えるのか?暦日単位に限定するのか?

など、あいまいな部分というのは意外と少なくないものです。


③の、休暇中の賃金は有給とするのか無給とするのか?有給であれば、どの程度支払うのか?

については、会社が独自に与える休暇であるので、有給か無給かについては会社の自由です。

ただし、特別休暇を定める場合に、無給では特別休暇というものを定める意味が問われることにもなるのではないかと個人的には考えています。無給にする場合でも、賞与や昇給などの決定に際しては出勤したものとすることは最低でも必要です。そうでないと、特別休暇と欠勤の違いが全くといっていいほどなくなってしまい、特別休暇の意味がなくなってしまいます。

有給とする場合は、年次有給休暇に準じて所定労働時間労働したものとして計算するのか、その半額にするのかなど、自由に決定することができます。これも、各会社で身の丈に合うように決定することだけは忘れないようにしなければなりません。


④の、休日との兼ね合いをどうするか?

については、ちょっと細かいことではあるのですが、意外ともめることがあります。

例えば、5日の特別休暇を取得する場合で、土日をはさむ場合、

 土日は5日に含まず、実質7日休めるのか?

 法定休日の日曜日だけ5日に含まず、実質6日の休みとなるのか?

 土日も5日に含み、土日あわせて5日の休みとなるのか?

というパターンが考えられます。

この点について何も定めていない場合、労働者は実質7日休めるものと解釈するものです。会社としてそれでよいのであれば何も定めなくてもよいのでしょうが(明快に定めておけば尚良し)、そうでないなら、休日との兼ね合いについても定めておくべきです。


以下、一般的な条文を例示します。



(特別休暇)

第○○条

会社は、従業員が次のいずれかの事由により休暇を申し出たときは、次のとおり特別休暇を与える。ただし、日数には第**条に定める休日は含まないものとする。

(1)本人が結婚するとき   ※日
(2)子が結婚するとき     ※日

(3)配偶者が出産するとき  ※日

(4)配偶者・父母・子が死亡したとき  ※日 
(5)実兄弟姉妹・祖父母・孫・配偶者の父母が死亡したとき  ※日

(6)天災その他の災害にあったとき  会社が必要と認めた期間

2. 特別休暇を申し出ようとする従業員は、事前に所定の文書により申し出なければならない。ただし、会社がやむをえない自由であると認めた場合に限り、事後の申し出を認めるものとする。

3.特別休暇の期間については通常の賃金を支払う。ただし、第1項(6)の場合については無給とする。



しつこく書きますがが、特別休暇は、

 会社として休暇を与えられる範囲内で定めること、

 会社側の恣意的な運用又は従業員が誤った解釈をする余地が無いよう、明快に定めること、

この2点に十分注意する必要があります。そのうえで、会社としての特徴を出していくようなものとしていけばよいのではないかと考えています。

第○○条 育児休業・介護休業等

育児休業・介護休業等については、定めるべき事項が多いため、別規定を設け、その中で詳細を定めるかたちをとるのが一般的です。

そのため、就業規則本則中では、育児休業・介護休業等については「育児・介護休業等規程」に定める旨を明記しています。

ここでもそれを踏襲し、今回は育児休業・介護休業等についての主な注意点を書いていこうと思います。


育児休業・介護休業の主な共通点として、

 男女ともに適用される

 要件を満たせば、休業する従業員は雇用保険より給付を受けることができる(要件は異なる)

 休業を取得した者、又は取得しようとした者に対して、解雇その他不利益な取り扱いの禁止

といったことが挙げられます。


まず、当然といえば当然なのですが、育児休業・介護休業等については、男性女性を問わず利用できます。

そして、休業期間中は、雇用保険より給付金を受けることができます。これは、育児や介護のために退職せざるを得ない状況を少しでも改善しようとするための給付です。

また、休業を取得した者、又は取得しようとした者に対する不利益な取り扱いの禁止については、現実にはあまり守られていない部分もあるようです。そういう意味で、この部分で、会社が従業員をどのように捉えているかということをうかがい知る事ができるのではないかと考えています。


次に、育児休業と介護休業との相違点について、最も注意を要するのは、

 休業期間中の社会保険の取り扱い

です。

育児休業では、

 申請した場合に、育児休業期間中の社会保険料は、会社負担分、労働者負担分ともに免除されます。申請しないと免除されないので、忘れずに行うことが実務上重要です。

介護休業では、

 休業期間中も社会保険料の納付が必要なので、会社負担はもとより、労働者負担分をどのように徴収するかについて、あらかじめ定めておくことにより、スムーズに徴収作業が行えるのではないかと考えています。



育児休業・介護休業においては、(要件を満たした)従業員から休業の請求があった場合に、会社側は拒否することができません。(育児・介護休業法第6条及び第12条)

そのため、「わが社に育児休業や介護休業はない!」というのは全く通用しません。

このようなことで従業員とトラブルになってしまうのは、会社にとっとも従業員にとっても全く無駄なことなので、育児休業・介護休業について、就業規則に定めるとともに、休業の取得に備えたシュミレーションも行っておいたほうがよいでしょう。


シュミレーションの内容としては、ざっと以下のようなことが考えられます。

 どのような手続を踏むことが必要かの洗い出し

  →申請書類の整備、行政への届出等の確認など

 その従業員の仕事を休業中にどのように割り振るか?

  →同僚が負担するのか、臨時社員を雇用するか?派遣社員を受け入れるか?など

 休業中の従業員とのコミュニケーションについて

  →休業後復帰しやすい環境作り、介護休業の場合の保険料の徴収など

 社内制度との関連

  →給与・賞与・退職金等の算定をどうするか?

 職場復帰後の支援

  →残業・深夜業などの制限、短時間勤務等、会社としての支援策の確認など

 

中小企業では、育児休業・介護休業の取得者が出た場合、会社が助成金を受給できる可能性もあるので、従業員に対する雇用保険の給付の申請とともに考慮しておくとよいと思います。


就業規則上は、育児休業・介護休業等については「育児・介護休業等規程」に定める旨を明記するにとどめます。一応、例文は以下の通りです。



(育児休業等)

第○○条

育児休業及び育児短時間勤務等に関する取扱いについては、別に定める「育児休業規程」によるものとする。


(介護休業等)

第○○条

介護休業及び介護短時間勤務等に関する取扱いについては、別に定める「介護休業規程」によるものとする。



第○○条  生理休暇

前回の産前産後休業については、知らないという方は少ないのですが、生理休暇については知らない方もいます。

この生理休暇の根拠については、労働基準法第68条において、


使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。


と定められていることによります。


ここで最大の問題は、

 生理日で就業が著しく困難

かどうかをどのように判定するべきなのか?ということになってきます。

このあたりは非常にデリケートな問題であり、あまり厳格にとらえると生理休暇が有効に利用されないおそれもあるため、

 原則として、女性労働者から請求があったら生理休暇を与えることとするように

と通達されています。


というわけで、生理休暇の付与については、会社と従業員の信頼関係だけが頼りとなるといってもいいくらいなことになります。

そこで、念のため、その信頼関係が損なわれるような事態も想定し、そのような場合に懲戒処分を行うこともできるように、就業規則を整備しておくことも必要になってくるでしょう。


以下、一般的な条文を例示します。



(生理休暇)

第○○条

会社は、生理日で就業が著しく困難な女性従業員が請求した場合は、必要な休暇を与える。

2. 生理休暇を取得しようとする従業員は、事前または事後速やかに届け出なければならない。

3. 生理休暇を取得した期間に対する賃金は支給しない。



生理休暇は、一日単位で与えなければならないものではなく、半日又は時間単位で請求があった場合は、その範囲で与えてもかまいません。


また、生理休暇の期間の賃金は、有給でなければならないという決まりはないので、無給でもかまいません。ただし、皆精勤手当がある場合で、生理休暇を欠勤扱いにするかどうかについては注意を要します。