そこにこそビジネスチャンスがある
経営者同士、気の置けない会話になってくると必ず飛び出す「三つのばか」があります。
世間のばか、政治のばか、経済のばかがそれです。
「うちの社員ばかばっかり」
「政治家ってほんとばかだよね」
「お客さんがばかで困るよ」
こんな調子です。
「ばかだというお前がばかだ」
って、手塚治虫の漫画に出てくるヒゲオヤジの台詞にありますが、
僕も正直そういってやりたい気持ちになります。
そういうだけでなく、お前のいっている「ばか」とは何を基準にしてるんだい、と聞きたいです。
自分の知っていることを知らないのはばかだ。
自分にはできて当たり前のことができないからばかだ。
自分には習慣になっていることに不慣れだからばかだ。
ちょっと待ってください。
弁護士さんや、会計士さん、税理士さん、司法書士さんといった「
士業」の人たちのことを考えてみましょう。
法律や会計や税務など、僕たちが不慣れなことを代行してくれるのが「士業」の人たちですよね。
僕たちは彼らを「先生」と呼んだりします。
それくらい、専門的で高度な知識が必要な仕事をしているのです。
士業の先生方がクライアントを「ばか」だというでしょうか。
彼らは日々、不慣れで専門知識がないクライアントに代わって業務をこなしています。
その分野に疎い人がいればいるほど彼らのビジネスチャンスが広がるということです。
僕たち士業以外の人間が業務代行をするときも仕組みは同じです。
お客さんは、その業務についてわかったりできたりする必要はありません。
代行する僕たちが、専門知識と処理能力を十分に備えているからです。
お客さんにはセレクトしやすい情報を用意してあげればよいのです。
この発想を持っていると、お客さんが急にかわいらしく見えてきます。
そうか、慣れてないってこういうことか、専門外だから無理もないな、というふうに。
自分たちにとって当たり前のことを知らないなんてばかだ、なんて言葉は出てきません。
お客さんが知らなければ知らないほど、僕たちのビジネスチャンスが生まれるのですから。
もちろん、お客さんはなにもわからないのだから代行していくらでも儲けてやろう、
という魂胆ではいけません。
お客様との信頼関係が先、業務代行はその次です。
お客様が安心して任せることができるからこその代行業者なのです。
自分たちはお客様の代わりを務める業務代行業なんだ、と自覚したときに、
なにをどう説明すればいいか、どんな資料を作ればいいかがおのずとわかります。
お客様の目で業務を見れば、ここを安心させて欲しいというポイントが見えてくるからです。
この仕様でいいのか、この金額で大丈夫なのか。
自分たちの儲けを考える前に、お客様に安心していただくことを考える。
それが業務代行にとって肝要な姿勢です。
お客様の安心を徹底して求めれば、自分たちの利益は必然的に上がるのですから、
その二つを別にするのは逆におかしなことになります。
僕たちが物を買うとき、品質とサービスと価格のそれぞれをどのくらいの割合で検討しているでしょうか。
信頼できる調査結果によれば、品質40%、サービス40%、価格20%なのだそうです。
価格をいちばんに考えているように思っている僕たちも、
じつは品質とサービスのほうを価格の倍も考慮しているということです。
長年お世話になっている経営コンサルタントの長山宏さんが、
「サステナブルサインのレガーロのサービスを定義したら粗利率が15%上がる」
とおっしゃったとき、内心「ほんとかな」と思いました。
しかし、実践して1年経ってみたら、ほんとうだったことがわかったのです。
業務代行にもこの法則はあてはまります。
サービスを定義して、質を上げ、お客様に納得いただける価格で提供したとき、
利益が上がっていくということです。
「ばかというお前がばかだ」の台詞の意味がわかってもらえたでしょうか。
僕だって「お前がばかだ」といいっぱなしではばかの一人になってしまいます。
「ばかだ」といいたくなったら気づいてください。
ビジネスチャンスを見落とすばかなお前にならないように。