6/5(水)

 

 

@日本橋

TOHOシネマズ

午前十時の映画祭14 にて

 

 

 

 

パリ、テキサス

 

 

1984年|西ドイツ、フランス|146分|

 

監督:ヴィム・ヴェンダース

脚本:サム・シェパード、L・M・キット・カーソン

撮影:ロビー・ミュラー

出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー、ハンター・カーソン、ディーン・ストックウェル、オーロール・クレマン 他

 

 

PERFECT DAYS』効果なのか

午前十時の映画祭14のラインナップに

ヴィム・ヴェンダース監督作が二作品もあり

 

ベルリン・天使の詩』とともに

劇場で観られるうれしい機会!で

楽しみにしていた作品

 

 

タイトルに入っている「パリ」は

フランスの「パリ」ではなくて

テキサス州にある地名で

 

主人公である トラヴィス

(ハリー・ディーン・スタントン)

によると、その地で両親が愛しあい

自身がこの世に生を受けた場所であるとして

そこに土地を買っていて、かつ

向かおうとしていた場所

 

4年前に妻子を残して失踪している

トラヴィス にとっては

見失った自分を取り戻すための

よすがのような場所、なんだろうか

 

そんな「パリ」を目指して

ひとり行軍するなか

砂漠で行き倒れ

連絡を受けた弟が迎えにやってくる

 

弟とその妻は

トラヴィス の息子

ハンター(ハンター・カーソン)を

ひきとり、4年間育てていて

 

その弟夫婦が暮らしている

カリフォルニア州ロサンゼルスへと

連れられていったトラヴィス 

息子 ハンター と再開し

離れていた距離を

少しずつ縮めていく前半

 

トラヴィス と ハンター 

テキサス州ヒューストンへと

トラヴィス の妻であり

ハンター の母である

ジェーン(ナスターシャ・キンスキー)を

探しに行き、再会し、また別れて

という後半

 

 

序盤はまったく言葉を発さない

トラヴィス 

PERFECT DAYS』で

役所広司が演じていた

やっぱり序盤はとても無口な

主人公が重なりつつ

 

まずは画面いっぱいに広がる

広大なアメリカの風景が印象的で

撮影の妙なのか、と

撮影担当を調べてみたところ

 

ヴィム・ヴェンダース監督のデビュー当時から

その右腕として活躍してきた

オランダ出身の ロビー・ミュラー という方で

 

この作品をきっかけに

ウィリアム・フリードキン監督の

『L.A.大捜査線/狼たちの街』に起用され

 

以降、ジム・ジャームッシュ監督や

ラース・フォン・トリアー監督らの作品を

手がけたのだそう

 

 

もうひとつ印象的だったのが色

 

冒頭の トラヴィス 

かぶっているキャップの色が赤

 

その後、妻である ジェーン 

探しに行くときの

トラヴィス と ハンター が着ている

シャツの色も赤

 

その彼らが目指している

妻(母)である ジェーン が乗っている

車の色も赤

 

なんだか心の色、感情のありよう

その矢印が見えるかのような

リンク具合

 

 

それから

妻 ジェーン と トラヴィス 

4年ぶりに対峙することとなる

ジェーン が働いている

のぞき部屋のシーンで

 

ジェーン 

真っ直ぐにこちらを向いていれば

トラヴィス がこう

身体を背けて話し出すし

 

トラヴィス が真っ直ぐに見据えれば

ジェーン は背を向けて語り出す

 

お互いに想いはあるのに

向き合う=いっしょにいる

ことのできないふたりの関係性を

物語っているかのようで

 

お互いに想いあって

いっしょにいられて

ハッピー!な関係性もあれば

 

想いあっていても

その感情がうまく

かけあわせられなかったり

強過ぎるがゆえに

愛憎、慈しみと執着は紙一重のごとく

変容してしまったり、で

どうにも、ともにあれない

という関係性もまたありますよね

 

そういった

人間のままならなさ

 

けれど、だからこそ

愛おしい、というような

そんな視線を感じる作品でした

 

 

なんだろう

まだヴィム・ヴェンダース監督作は

PERFECT DAYS

ベルリン・天使の詩

に続いて今作と3作品しか

観ていないけれども

 

どうにもままならない人間への

やさしいまなざしを感じるような

そんな気がしています

 

 

それから、このタイミングで

観ることができた、というのも

大きかったのかな、とも

 

これがもっと若い頃であったなら

このそれぞれの身勝手さの方が

目についた気がして

 

なにせ

トラヴィス も ジェーン 

それぞれに事情はあれど

息子である ハンター 

置き去りにしているわけで

 

その置き去りにされた ハンター 

4年育てて、情もわき、慈しんでいる

弟夫婦の感情もまた、この映画の中では

置き去りにされている気がするし

 

その辺りにものすごく

もやもやした気がするのである

 

 

でも、なんだろう

そういった理屈とか倫理とか?

そういったところに

おさまりきらないのがまた

人間であり

 

未来にものすごく不安はあれど

あの ジェーン と ハンター 

抱きあったあのシーン

あの瞬間には双方の幸福が

あったのではないか、と

 

そんなことを思いつつ