読了記録

 

 

 

皆川博子 長編推理コレクション 2

巫女の棲む家

妖かし蔵殺人事件

 

著:皆川博子 編:日下三蔵

 

柏書房

 

 

 

記憶が薄まってしまわないうちに

記録を

 

収録されている二編のうちの一編

『巫女の棲む家』を読了

 

こちらは就寝前読書にて

 

 

1940年代後半〜 を舞台とした

 

戦争に付随するあれこれの

傷ましさ、生々しさを

色濃く纏いつつ、進んでいく

 

霊媒を生業とする男と

 

その男を介し

真理に到達しようとする

神霊を信奉する男(父親)

 

その父親によって

巫女とされる娘

 

その降霊会を中心とした活動は

やがては、組織となり

新興宗教へ

 

その変遷に

関わりあった人々の物語

 

 

皆川博子先生のあとがきによると

(以下、抜粋引用)

 

『巫女の棲む家』は、

中公文庫版の解説をお願いした司修さんに

事実が七割ですと申し上げましたが

この度ゲラを読み返し

事実をそのままの部分は

四割ぐらい、と訂正します。

きょうだいの構成も違いますし、

いろいろな事件もフィクションです。

しかし、芯になる部分

神霊を信奉する父親が

霊媒を招き定期的に降霊会を開き

参加者が増えて

新興宗教の組織が形成されて行くこと

娘 ーつまり私なのですがー が

父親に強制されて自動書記をやらされ

〈神伝え〉にされていくこと

その苦痛だの葛藤だのは、事実です。

 

とのことで、それを読んで

しごく納得した部分があり

 

この神霊を信奉する父親は

最後まで

打ち砕かれることがないのだ

 

 

霊媒を生業とする男も

 

巫女とされた娘を介して

関わりを持つこととなる

佝僂の古書店主も

 

彼(神霊を信奉する父親)を

その信奉を、その信念を

打ち砕こうと画策するのだ

 

けれどそれは叶わず

 

彼(神霊を信奉する父親)は

 

ある意味、別次元

(自身の信念の視界)

で生きていて

 

いっこう無傷のままで

 

 

そうした存在に対したときの

この無力感というか

歯痒さというか

なんというか

 

私にも覚えがあったり

なかったりして

(いや、痛烈に、ある、のだ)

 

 

先生が感じた感覚と同じだなんて

そんなおこがましいことは

決して言うつもりはないのだけれど

 

 

そうした

先生自身に基づいた物語を

読むことができたのは

とてもうれしかった

 

いや、うれしい、という

言い方をしてしまうと

なんだか語弊がありそうだけれども

 

最愛の著者の来歴が

色濃くにじむ作品を

読むことができたのは

 

ファンとしてはやはり

なんとも感慨深く

うれしいのである